- 2016年08月06日 11:26
韓国ミサイル防衛、中国はKポップに報復
中国の強い不満にもかかわらず、韓国が地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の配備を決めた結果、韓国にとって最大級の「主力輸出品」が危険にさらされることになった。Kポップの若手スターたちだ。
ここ数日、中国政府は国内で人気が高まりつつある韓国人の若手俳優や歌手がプロモーションイベントで訪中するのを密かに阻止している。
その結果、韓国のタレント事務所の株価は急落。中国の哀れなファンたちの目からは涙があふれ出ている――。
韓国と米国はサードについて、北朝鮮による軍事的脅威の拡大に備えるものだと説明。一方、中国とロシアは国家の安全を危険にさらすとしてサード配備に反対している。
韓国がサード配備を決定したと発表してから数時間のうちに、中国は韓国に対して何らかの影響があると警告していた。韓国は貿易面で大きく中国に依存している。
事情に詳しい関係者によると、中国のメディア規制当局はサード配備の報復として、韓国人スターを標的にしている。今のところ、当局からの命令は政府関連機関とその下部組織にのみ出されているという。
Kポップとして知られる韓国のポップカルチャーは同国の「主力輸出品」であり、アジア全域で幅広くファンを獲得している。とりわけ中国での人気は高い。
韓国の大手芸能プロダクション、YGエンターテインメント所属の「BIGBANG(ビッグバン)」や、SMエンターテインメントの「EXO(エクソ)」といった男性グループのコンサートのチケットは中国では瞬く間に完売する。また、韓国テレビ番組のフォーマットを真似たテレビのバラエティー番組は中国で高視聴率をあげている。
韓国の昼ドラで今最も人気のある2人の俳優、キム・ウビンさんとペ・スジさんは6日に北京でファンとの交流イベントを開催する予定だったが、無期延期になった。翌7日には人気俳優のイ・ジュンギさんが新作恋愛映画の中国プレミアに姿を見せることになっているが、欠席となる可能性が高い。
エンタメ業界関係者によると、その原因はいずれも中国側にある。中国の規制当局がイベントの主催者に中止の圧力をかけていたり、ビザ(査証)発給の承認を遅らせていたりするためだ。
中国の外務省と国家新聞出版広電総局からはコメントが得られなかった。
韓国人スターの中国での活動が制限されるとの懸念を受け、韓国芸能プロダクションの株価は急落している。仏高級ブランド「ルイ・ヴィトン」の親会社が出資するYGエンターテインメントの株価は今週、約11%下落。SMエンターテインメントとJYPエンターテインメントはいずれも6%余り下げた。
韓国最大級のコングロマリット、CJグループの芸能部門であるCJ E&Mの株価も7.2%安となり、韓国総合株価指数(KOSPI)は1%近くの下落となった。
韓国の大手芸能事務所はアイドルグループに中国語や日本語を話せるメンバーを加え、ファン層の拡大を図っている。ただ、こうした多様性により、Kポップは地域のもめ事の影響を受けやすくなってもいる。今年は台湾の総統選挙の数日前に、韓国の女性アイドルグループに所属する台湾生まれのメンバーが韓国のバラエティー番組で小さな台湾の旗を振り、一大騒動が起こった。台湾の立場を巡り、中国本土と台湾の両側で激しい議論が勃発したのだ。
最近では韓国観光公社(KTO)のウェブサイトから、スポークマンを務めていた韓国スターが姿を消した。この女性スターは韓国が日本の統治下にあった時代に伊藤博文を暗殺した安重根の名前を言うことができず、騒動が巻き起こったためだ。韓国では、安重根は国家的なヒーローとして称賛されている。
By LILIAN LIN, JONATHAN CHENG and MIN SUN LEE
- ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)
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