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大臣退任など

 石破 茂 です。
 この度、国務大臣・地方創生・国家戦略特別区域担当を退任致しました。二年間の在任中に賜りましたご厚情やご支援、ご教導に心より感謝申し上げます。誠に有り難うございました。

 防衛庁長官、防衛大臣、農林水産大臣の退任時もそうだったのですが、「行き届かなかったところは多くあるが、自分としてこれ以上の仕事はできなかった」という思いを持って退任できたことはこの上ない幸せでした。
 防衛庁長官退任時には、市ヶ谷の本庁講堂での挨拶が全国の部隊や基地に同時放送されるのですが、数日経って「石破さんのもとで働けたことを誇りに思う」という現場の隊員からのメールや手紙が何通か届きました。それを読んで嬉しくて思わず泣けてしまった時のことを時折思い出しますが(もちろんそうは思わない隊員も多くいたのでしょうけれど)、今回も同じ気持ちを味わうことが出来ました。
 正式な退任行事は昨日の内閣府合同のものだったのですが、前日の3日に退庁する際に職員の皆さんが自発的に内閣府庁舎の玄関ロビーに集まられ、自費で買われた花束を多く頂き、大きな拍手で見送って下さった光景も、私は一生忘れることがないと思います。

 秘書官をはじめとする大臣室スタッフの皆さん、山崎史郎さん、唐沢剛さん(地方創生総括官)をはじめとする幹部職員・一般職員の皆さんに誠心誠意、そして献身的にお支え頂き、全くゼロからのスタートだったにも拘らず、着実な成果を上げることが出来ました。

 「目に見えた成果が上がっていない」とのご指摘もありますが、魔法使いではあるまいし、戦後70年余、連綿と続いてきた東京一極集中の流れが一朝一夕に変えられるはずはありません。
 経済成長下、人口増加の局面においてのみ有効に機能しえた国家システムを変えるという作業がいかに困難なことなのかを痛感した2年間でしたが、変革の芽は点から面へと拡がりつつあると認識しています。
 まだ点が密になりつつあるという段階なのかも知れませんが、2年間に廻った250余の市町村のあちらこちらで確実に意識が変わりつつあることを感じました。関係して下さった全国の知事、市町村長、そして住民の皆様にも厚く御礼申し上げます。

 しかし同時に、国家・社会の構造を根本から変えていかなければ、抜本的な解決にはならないであろうことも感じております。それは「革命」や「維新」などといわれるようなものなのかも知れませんが、そこまで急進的である必要はなく、政治のみがそれを為し得るものだと思います。一つや二つの内閣では到底為し得ないものである以上、いつかはこれに手を付けなくてはなりません。「道州制」は唯一の答えではありませんが、有力な手段の一つであることもまた確かです。江口克彦さんのように、この問題に造詣が深い議員から国会でこの点について問われた際に、曖昧模糊たる答えしかできなかったことは大きな心残りです。言葉と論理を操ってその場を何とか切り抜ける答弁がいくら得意でも、それでは政治家の仕事をしたことには決してなりません。深く己を反省する機会も多い2年間でした。

 2007年(平成19年)9月、福田康夫内閣の防衛大臣を拝命して以来、麻生内閣の農水大臣、谷垣総裁の下での自民党政調会長、予算委員会野党筆頭理事、安倍総裁の下での幹事長、安倍内閣の地方創生担当大臣、と9年間にわたり全力で走って参りました。
 欠点だらけの私がここまで務められたことは、政治家として出来すぎの感があり、個人的にはたいへんありがたいことだったと思っております。
 初当選以来30年、多くの総理を見、実際にお仕えもしましたが、総理大臣職はまさしく命を削る仕事であり、少しでも実態を知る人は出来れば逃げたいと思うようなものです。
 田中角栄元総理が「大臣は努力すればなれる。党三役ももっと努力すればなれる。しかし総理は努力だけでなれるものではない」とよく仰っておられたように、天命というものがあるのでしょう。

 30年間にわたり、衆議院議員として議席をお預かりしてきました。これから先、「私には出来ません」「まだ勉強が足りません」と言わないようにするためには、相当な勉強と修養を積まなくてはならないと痛感しております。こんなにも自分が知らかったことがあるのだ、こんなにも知らなかった町や村があるのだ、こんなにも知らない人々がいたのだ、ということを思い知らされた2年間でもありました。

 民主主義の健全性のためには、どんな報道もあってしかるべきです。しかし権力(三権)とメディアはそれぞれがけん制し合うべきものであり、そして情報は故意に隠蔽・操作されることなく、国民に伝えられるべきものです。このバランスなくしては、国は崩壊していきかねません。そして国会議員は各々、国家ならびに自分を選んでくれた主権者に忠誠を誓うべきものであって、それ以外の要素に振り回されてはなりません。
 この2つだけは断じて忘れることがあってはならないとの思いのもと、正面から真摯に国民と向き合う政治を目指して研鑚を積んでまいります。

 内閣府で初めて仕事をしてみて、感ずるところが多くありました。
 私の担務ではありませんが、熊本の震災が発生した際に、日本には「防災庁」的な組織が必要ではないか、との問題提起をさせていただきました。
 「そのような組織を作る必要はない」との見解が既に昨年、関係副大臣会議で示されていること、内閣府内に防災担当の部局が設けられていること、などは承知をしていますが、私には現状で事足れりとは思えないのです。
 期限を区切って各省庁から職員が寄せ集められているが故に専門家が育成されにくいこと、防災の文化が継承されにくいこと、専任大臣が置かれていないこと、などを考えれば、世界屈指の災害大国であり、首都直下型地震も確実に起こることが想定される中にあって、もう一度広範な議論が必要に思えてなりません(この点については河田恵昭・京大名誉教授の「津波災害」「日本水没」などの一連の著書に詳しく書かれています)。
 国土のグランドデザインを描く部局も同様で、生え抜きの職員で構成される専門組織が日本にはどうしても必要なのではないでしょうか。
 地方創生というプロジェクトは、日本の在り方そのものを見直す壮大なものなのだなあと、強く感じたことでした。

 ついに日本の排他的経済水域に着弾した北朝鮮の弾道ミサイルは、ノドンとみられており、実験段階のものではありません。ある意味、訓練段階に入ったと見るべきなのかも知れません。移動式の発射装置であれば発射の端緒を見つけることは極めて困難です。
 自衛権の行使としての策源地攻撃を仮に検討し、将来的に自衛隊がその能力を具備したとしても、策源地の探知には相当な困難が予想されます。当面はまずミサイル防衛の精度をさらに向上させること、米国の拡大抑止力について不断の検証を行なうこと、国民保護の実効性を高めること、が抑止力の維持には不可欠だと考えます。

 ロシア、インド、北朝鮮、パキスタン、アフガニスタンなど14か国と国境を接している中国が日本との全面的な武力衝突を選択する合理性は存在しませんが、そうであるからこそ国内の不満を解消するために尖閣諸島に武装漁民が上陸するような事態が現実性を増すことも全く否定はできません。
 侵されているのが領土という国家主権であり、外国勢力がその主体である場合、治安出動などの警察権で対処する以外の方策も考えるべきではないでしょうか。防衛出動のハードルが高すぎることと併せ、平時の自衛権、グレーゾーン対応法制の制定などは急務と考えます。

 30年という来し方を思えば、自分の行く末にそれほど多くの時間が残っているわけではないことをよく承知しています。自由な立場と時間を与えていただいた今、さらに一日一日を悔いの無いよう生きていかねばなりません。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

 週末7日日曜日は沖縄青年会議所のフォーラムでパネルディスカッションに参加します(14時・沖縄県市町村自治会館・那覇市旭町)。
 皆様ご健勝にてお過ごしください。

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