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8月4日(木) 日本の行く末とメディアの役割―参院選の結果を左右した選挙報道のあり方

〔以下の論攷は、日本ジャーナリスト会議『ジャーナリスト』7月25日号、に掲載されたものです。〕

 参院選では自公の与党が勝利し、改憲勢力が発議可能な3分の2の議席を突破した。改憲に反対する4野党は1人区での選挙協力によって対抗し、11勝21敗という成果を上げた。各党の獲得議席は、自民56、民主32、公明14、大阪維新7、共産6、社民1、生活1、無所属4となっている。

 今回の参院選では、18歳選挙権の導入、1人区での野党共闘の実現、改憲発議可能な衆院議席、「2016年安保闘争」とも言われる安保法制(戦争法)反対運動の高揚など、「初めて」のことが多くあり、注目度の高い選挙であった。それにもかかわらず、実際の選挙運動はそれほどの盛り上がりを見せず、投票率は54.70%で過去4番目の低さだった。

 どうして、このような結果になったのか。その要因は色々と考えられる。有権者の多くが与党を支持したのは現状維持を望み、変化や転換の必要性を感じなかったからである。アベノミクスについて安倍首相は「道半ば」だと訴え、「この道を。力強く、前へ」というスローガンを掲げた。野党の側は消費増税の再送りがアベノミクスの失敗を示していると訴え、安倍首相は改憲の目論みを隠していると批判したが、それが十分に有権者には届かなかった。アベノミクスという経済政策を前面に出して改憲の意図を隠した安倍首相の作戦勝ちだったといえる。

 このようななかで選挙報道を担ったマスメディアはどのような役割を演じたのだろうか。一言で言えば、安倍首相の「選挙隠し選挙」「争点隠し選挙」を間接的に手助けしたと言わざるを得ない。選挙についての報道を控え、有権者の関心の高まりを抑え、選挙や政策に対する理解の深まりを抑制するような姿勢に終始したからだ。

 象徴的なのは党首討論が選挙の公示前に集中し、TBSを除いて選挙が始まった途端にパタッとなくなってしまったことである。NHKのニュースでも参院選についての報道は後回しにされ、選挙運動の期間中であることが信じられないような静けさだった。東京では、ワイドショーなどでの話題はもっぱら都知事選の方で参院選は影が薄かった。

 これらの結果、有権者の関心は高まらず、政策論争は深まらなかった。熟議の選挙になるどころか言いっぱなしの一方的な宣伝に終始した。街頭演説に立った安倍首相は改憲について口をつぐみ、アベノミクスの成果だという都合の良い数字を並べて「野党共闘」を口ぎたなく批判した。これでは政策についての理解も政策論争も深まるわけがない。

 選挙の結果、衆参両院での改憲発議が可能となり、憲法審査会での審議が再開されようとしている。憲法のどこが問題とされ、何が変えられようとしているのか、国民に正確な情報を伝えるべきマスメディアの責任は重大だ。安倍首相による改憲の野望を適時的確に分かりやすく国民に伝えてもらいたい。日本の行く末について過ちなき選択がなされるよう、マスメデイアが果たすべき役割は今後ますます大きなものとなるにちがいない。

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