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給与のベストな決め方とは? 模索する企業

By LAUREN WEBER

 従業員の給与制度を全面的に見直す企業が増えている。成果主義などのトレンドを取り込もうとしているほか、男女の賃金格差を巡る懸念を拭い去って他社より先へ進もうとしている。

 企業はまた、従業員が報酬に関する情報をかつてないほどに豊富に持っていることも認識している。彼らは詳細な情報を同僚と交換したり、企業の口コミ評価サイト「グラスドア」などのサイトにアクセスしたりしているためだ。

 このような環境では、多くの人事担当幹部にとって、場当たり的に報酬を決めるプロセスはあまり妥当でないように見える。求人に応募してきた候補者が他社からどのくらいの給与を提示されているかや、自社の財務部門から提示される予算といった要素に基づいて給与を決めるプロセスのことだ。

 グーグルの人事担当トップを近く退任するラズロ・ボック氏は最近、企業の雇用主たちに対し、差別を最小限にする報酬指針の作成を呼びかけた(訳注:ボック氏は人事採用の方法を詳述した「ワーク・ルールズ!」の著者)。一方で連邦政府の「雇用機会均等委員会(EEOC)」が平等な賃金に関する厳格な規則を設けた。マサチューセッツやカリフォルニアなどの州は、実質的に同一の仕事をしている男女の賃金に差をつけることを法律で禁じた。こうした動きが雇用主を後押しするかもしれない。

まず報酬哲学を作れ

 ボック氏によると、グーグルは人に対してではなく役割に対して報酬を支払っているという。同社のマネジャーたちは、有望な候補者の前職の給与を聞くよう求められているが、それはライバル会社が支払っている給与額の情報を集めるためだ。実際にグーグルに入社する人に支払う給与額を決める際は、前職の給与額を無視するよう指導を受けているという。

 グーグルの給与は、社内における各従業員の役割の価値と、地元の労働市場がそのスキルに支払う給与額に基づいて決められている。2015年に同社に新規採用された女性の給与の前職との差は、男性の新規採用者の差額と比較して30%多くなった。グーグルは「これは、前職で女性に支払われていた給与が平均して男性のそれより少ないため。給与目標の一貫した利用は、既存の不平等を是正する1つの方法だ」と述べている。

 非営利の人事関連団体ワールドアットワークの報酬専門家、ケリー・チョウ氏は、多くの企業にとって最初にやるべきことは、報酬哲学を作り上げることだと指摘する。「企業が何を考え、そこで何が評価されるか」について従業員の理解を助けるためだ。

 一般的に、企業は市場に基づく賃金を目指している。そこでは、企業コンサルタント会社のマーサー、ウィリス・タワーズ・ワトソン、ペイスケールなどのベンダー各社が多くの雇用主から集計し販売している給与データを使っている。ベンダーは役職や仕事別にデータを集め、勤務地・経験・業種といった変数で区分けする。例えばシカゴ都市圏の企業に勤務するジュニアアカウンタント(経理補佐)といったポジションの給与レンジを算出している。

 雇用主は通常、このデータから給与の「下から50番目のパーセンタイル(つまり中央値)」を目標にし、その周辺に受け入れ可能な賃金のスプレッド(幅)を設ける。

給与の決め方は「三角測量」

 こうしたプロセスは単純にみえるかもしれないが、多くの例外がある。役職は必ずしも比較可能ではないし、給与の標準算出データはすぐに古くなってしまう。さらに、重宝される従業員やライバル会社から報酬を提示されている採用候補者は、報酬基準全体を台無しにしかねない。

 連邦政府向けの研究を行っている非営利エンジニアリング会社のマイターでは、人事部門が2014年、賃金プロセスをより客観的で透明化する複雑な公式を開発した。同部門の責任者ジュリー・グラバリーズ氏によれば、監督者や仕事のリーダーが各従業員に対し、役割の複雑さや責任を表現する数字を割り当てる。その後、従業員の成果や態度に基づいてポイントを加えたり差し引いたりし、会社にとっての従業員の価値を反映したレンジを計算する。レンジは、従業員の仕事の市場曲線に重ね合わせられ、高得点をとった従業員が中央値を上回る賃金を得るようにするという。

 だが現場にいる多くの人々は、報酬の設定は科学であるのと同じように芸術でもあると述べている。クラウドベースのソフトウエアを開発しているワークウェーブ社(ニュージャージー州)のクリス・サレンズ最高経営責任者(CEO)は、市場調査を参考にして、従業員220人余りの賃金を中央値の15%前後に収めることを目指している。しかし、市場調査は必ずしもCEO自身が現場で見ていることと合致しないという。

 「われわれは誰がどんな賃金水準にあるべきか正確に知っていると言いたいが、実際には三角測量のようなものだ」と同CEOは語る。つまり、同じ役割にある他の従業員と比較してどの程度成績を上げているかや、同様の専門職の市場報酬といったデータを組み合わせているにすぎないという。「残念ながら特効薬はない」

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