記事

知事選は小池百合子氏の圧勝、「自民党に刃向かった」形づくりの勝利? - 柴田鉄治

 参院選に続く都知事選は、小池百合子氏の圧勝に終わった。これまでの都知事選では「後出しじゃんけん」の最後に名乗りを上げたものが勝つといわれていたが、今回は真っ先に手を挙げた小池氏が勝った。

 勝因は、私の見るところ、自民党都連に何の挨拶もなかったとへそを曲げた自民党が「小池氏を推したら除名だぞ」と脅したりしたことが逆に、「自民党に刃向かった人」として支持者を増やしたのではないか、という気がする。

 というのは、東京都民の票は、気まぐれというか、あまのじゃくというか、とにかくこれまでの都知事選でも、全国で初めて革新知事を生んだり、テレビタレントを知事に押しあげたり、意表を突く結果をもたらしたケースが少なくなかったからだ。

 今回は、自民・公明両党が先に手を挙げた小池氏を推さずに、増田寛也氏を推したことが裏目に出たことは間違いない。しかし、自民党内には「小池氏でもいいのだ」と思っている人も少なくないのではないか。

 小池氏を推したら除名だぞ、と言いながら、当の小池氏を除名にはしてないようだから、案外、「わざとやったわけではないが、結果的にはうまくいった」と思っているのかもしれない。

 一方、野党4党が推した鳥越俊太郎氏は、保守分裂の2候補に及ばなかったのだから、予想外の敗北だといえよう。「後出しも、後出し」最後のぎりぎりに名乗り出た候補が、今回は準備不足もあって裏目に出た。

 敗因は、高齢だったことなどいろいろ考えられるが、選挙期間中に「週刊文春」と「週刊新潮」が、鳥越氏の10余年前の行状を非難する記事を載せたことは、選挙結果にどのくらい影響したかはともかく、問題は残した。

 というのは、記事の内容はともかく、その見出しだけが広告の形でほとんどの新聞にでかでかと載り、また、電車内の中吊り広告にも見出しだけが大きく出た。鳥越氏は「事実無根、選挙妨害だ」と検察庁に告訴し、そのことも新聞に小さく載ったが、広告の大きさとは比べるべくもなかった。

 メディアの報道の自由は、規制してはならないが、広告のあり方については、一考すべきかもしれない。テレビキャスターを名指しで非難する意見広告が新聞にでかでかと載ったりする時代だから、なおさらだ。

 小池氏は女性初の都知事ではあるが、その思想信条は自民党でも最も右寄りと言われており、過去には核武装まで容認するような発言まであったと報じられている。かつて、石原慎太郎知事が尖閣諸島の都有地化を図って中国との間を険悪にしたようなことが起こらねばいいが、と心配である。

 小池氏に1票を投じた人たちが、あとで「こんなはずではなかったが」と悔やむことのないことを願っている。

「障害者なんていなくなればいい」という思想の恐ろしさ

 神奈川県相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で、元職員が刃物を持って深夜に侵入し、寝ていた障害者19人を殺害した事件は、何とも言えない恐ろしさを感じさせた、残酷な事件だった。

 とくに「障害者なんていなくなればいい」というナチスのような思想が、いつの間にか日本にも広がっていたことに衝撃を受けた。「ヒットラーが降りてきた」と本人も語っていたそうだから、やはりナチスの思想なのだろう。

 本人の参院議長あての手紙など、犯行を予告するような兆候がいくつもあったのだから、なんとか「犯行を防げなかったのか」との思いが強いが、だからといって、このような犯行が現実に起こると予測することも難しかったとはいえよう。

 ただ、日本の政界には、「ナチスに学べ」といった政治家がいたり、ワイマール憲法の下で「全権委任法」を作ってやりたい放題をやったナチスのように、憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使を容認する安保法制を作ったりする政治家もいるので、そんな風潮と無縁ではないのかもしれない。

 とにかく今回の事件を契機に、「障害者なんていなくなればいい」というような思想は絶対に間違っているということを社会全体で共有しなおすことが大事だろう。

 それと同時に、犯人が精神障害者として措置入院させられていたことなどから、「精神障害者は何をするかわからない」といった人権侵害の思想が社会に広がらないよう、社会全体でしっかりと見ていくことが大切だ。

あわせて読みたい

「都知事選2016」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    BCG接種 コロナ予防の仮説に注目

    大隅典子

  2. 2

    パチンコはいいの? 関口宏が質問

    水島宏明

  3. 3

    昭恵氏だって…外出する人の心情

    田中龍作

  4. 4

    現金給付の所得制限が生むリスク

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  5. 5

    武漢のコロナ対応「高度だった」

    渡辺千賀

  6. 6

    中高年こそ…叩かれる若者の感覚

    六辻彰二/MUTSUJI Shoji

  7. 7

    「日本の雰囲気軽い」仏紙が指摘

    NEXT MEDIA "Japan In-depth"

  8. 8

    知られざる「個人撮影AV」の実態

    文春オンライン

  9. 9

    NT誌東京支局長の日本非難に苦言

    木走正水(きばしりまさみず)

  10. 10

    自粛要請も休業判断は店任せの謎

    内藤忍

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。