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外交部会長を振り返って

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◆ISIL等によるテロの多発

 昨年11月13日にパリにおいて同時多発テロ事件があり、死者130名、負傷者300名以上の被害が出ました。その前日には、ベイルート(レバノン)にて43人が死亡、負傷者200人以上のテロが起こっています。今年3月にはフリュッセル(ベルギー)にて空港と駅でやはり爆発テロがあり、死者35名、負傷者約200名がでました。そして7月1日にはダッカ(バングラディシュ)にて武装グループが飲食店を襲撃し、28人が死亡、58名が負傷したとされています。7月14日はニース(フランス)において84人が死亡し202人が負傷する事件がありました。他にも複数の事件があります。これまでにも日本人の犠牲者は累次にわたり出ていますが、ダッカの事件では国際協力機構関係者7名が犠牲となってしまいました。こうして数え挙げているだけでも、辛い思いのする項目です。

 実は今年、ラマダン月のテロを勧奨する声明をISILが発していたことを踏まえ、外務省は全世界向けにテロに関する情報提供を行い警告していました。しかし残念ながら日本人犠牲者の発生を阻止するに至りませんでした。ここは改善の余地があると考えるべきでしょう。外務大臣の下で経済協力関係者の安全確保のための検討会が行われていますが、その結果を待つところです。

 ISILそのものはイラクやシラクといった地域では徐々に劣勢となっていますし、だからこそ中東・欧州・アジア・アメリカ等でのテロに走っている面もあります。難民の発生などさまざまな問題を引き起こしており、日本は世界各国と協力してテロ組織の根絶に然るべき役割を果たすべきです。であるからこそ在外邦人の安全確保にも、さらに力を入れる必要がある局面であろうと考えます。

 なおダッカ事件の際、外務省は政府専用機をいち早く飛ばし、ご遺体を羽田空港で迎えるにあたり萩生田官房副長官、岸田外相が献花を行うなど極めて丁重な出迎えを行いました。このことは、日の丸を背負って海外の発展協力のために活動していた方々の非業の死にあたり、故人の霊を弔い、ご家族を慰め、そして後進を勇気づける適切な対応でした。生放送を見ましたが、正直涙が零れました。このような事件があっても、世界の平和発展のための日本人の海外外協力への情熱は、より一層深まることを願ってやみません。

◆国際連帯税について

 毎年晩秋になると、税制改正の議論が自民党本部で行われます。外交部会では唯一の税制改正要望が「国際連帯税の創設」でした。ただ残念ながら、これまで外務省として本気で検討や調整を行ってきていないままに要望だけ行っていた経緯があり、主張はしましたが力及ばず(というか当然の帰結として)、昨年も実現は見送られました。

 その反省に立ち、今年度の税制改正要望での実現を目指し、外務省が主体的に検討や調整に動くよう指示をしています。議論が前に進んでいることを願っています。

◆外交力強化・外交勉強会

 自民党には高村副総裁を議長とする外交再生戦略会議という組織があり、外交部会長はその会議の事務局長を兼務することとなります。秋の予算編成前の時期、および春の概算要求前の時期にそれぞれ決議をまとめ、政府への申し入れを行いました。これまで縷々述べてきたように外交案件はそれこそ世界中にたくさんありますが、外務省の人員は限られています。また在外公館も建物が古くなったりしているものもあります。人員体制はイギリス並みを目指そう!という目標を掲げて徐々に強化されていますが、まだ達成には至っていません。引き続き粘り強く取り組む必要があります。

 また、外交部会には3人の部会長代理と13人の副部会長がおり、非力な部会長を支えていただいていますが、小田原潔筆頭部会長代理にお願いして地域ごとに戦後史を振り返る勉強会を開催してもらいました。日々に発生する出来事に振り回されるのみならず、きちんと歴史を学び長期的な視点を持つことは大事なことです。改めて勉強になりました。

◆できなかったこと

 部会長としてさまざまな案件を取り扱ってきましたが、残念ながら手が回らなかったこともあります。一つは、衆議院外務委員会理事を務めましたが、質疑に立つ機会がなかったことです。ただ、関係各位のご努力とご協力により、衆議院外務委員会では提出法案・条約をすべて通過させ、充実した議論を持つことができたことは与党理事の一人としてはよかったと思っています。なお衆院TPP特別委員会でも、マニアックな質問を行うべく準備をしていましたが、これも審議が中断したことにより日の目を見ませんでした。いささか残念です。

 またもう一つは、前職の厚生労働大臣政務官の時に、日本年金機構の情報流出事案に遭遇した苦い経験を活かし、サイバーセキュリティに関し外交面で何かできないかという志を持っていましたが、具体的に動かすことができませんでした。いまやサイバーセキュリティが、アメリカ大統領と中国主席の会談の議題になる時代です。外交面でもう少し主体的に動けないかと思っていたのですが…。まあ、隴を得て蜀を望んではいけないのかもしれませんね。

◆改めて外交部会長としての活動を振り返って

 今年はG7伊勢志摩サミットが開催され、また8月末には第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)がケニアで開催される予定です。また国連安保理の非常任理事国にもなりました。安倍総理はオバマ大統領の広島訪問を実現させ、ロシアとの長年の懸案をも解決すべく、努力を重ねておられます。こうした時期に外交部会長を務めさせていただいたことは、大変勉強になるものでした。

 一方世界に目を転じると、なんとなくこれまで「常識」と思いこんでいたことが覆される事態がたびたび発生しています。そもそも2014年のロシアにおけるクリミア併合と、国際社会が未だにそれを阻止できていないでいることは、第二次世界大戦後の世界の秩序維持の枠組みのほころびを露わにしました。見方によっては同様のことが静かに南シナ海で起こっているとも言えます。そして東シナ海で今後起こらないとは、残念ながら誰にも保証できないでしょう。同様にやはり第二次世界大戦後、秩序維持のための先駆的な知恵だと思われていたEUから、メインプレーヤーであったイギリスが脱退を決めるいわゆるBrexitも、「世界はいずれ統合に向かう」という理想主義的な見方が、いささか楽観的に過ぎたものであったことを再認識させられました。犯罪テロ集団であるISILは決して許されるべき存在ではありませんが、現に実力を有して一定地域を支配していることも、遠い世界のこととして片づけるわけにはいきません。アメリカ大統領選挙においても、かなり凄まじい主張の多いトランプ氏が共和党候補になると予想した人は、昨年時点でどれくらいいたでしょうか?しかしそれが現実です。日米安保体制も場合によっては議論のテーブルに乗り得るわけです。

 戦後70年が経過し、平和秩序維持のためのさまざまな理念やメカニズムを支えていた人々が世代交代し、当初の在り方から変わってきていること、そして変わらざるを得ないことを、私たちは必然のこととして正面から受け止めなければならないのでしょう。歴史から先人の意志を学び、未来に向けて新たな平和秩序維持の仕組みを構想し、現在を改革する取り組みが絶えず求められているのです。残念ながら国連改革一つとってみても遅々として進みませんが、投げ出すわけにもいきません。

 そうしたことを感じながら、自民党外交部会長という役目をいただいて、日々目の前の課題に対してもがき続けてきました。わずかなことしかできませんでしたが、学ばせていただいたことは、今後の政治生活の糧にしたいと考えています。

 自民党政調事務局の田村さん、橘さん、田中さんには、緊急の案件やらなかなか片付かない懸案やらが日々発生する中で、円滑に物事が進むように絶大なるサポートを頂きました。心から感謝申し上げます。また今回、外務省には多くの優秀な官僚の方が日々世界各地で日本を代表して頑張っておられることを認識することができました。深く敬意と感謝を申し上げます。中でも小野啓一・前官房総務課長にはカウンターパートナーとして日々あれこれ相談させていただき大変助かりました。ありがとうございました。先日北米局参事官に転出されましたが、日米地位協定の件を担当されることになりましたが、しっかり取り組んでいただけるものと期待しています(追記:そんなことを書いていたら、稲田朋美政調会長が防衛大臣に起用されるという報道に接しました。沖縄を巡る事柄はずっとご相談しながら取り組んでいましたので、まさに担当閣僚として経験を生かしていただきたいと切に願います)。またその他にも多くの方々、あるいは各国の大使館の方々ともお話しすることができました。こうした経験は僕にとって貴重な財産です。深く感謝を申し上げます。

地元の倉敷・早島の皆さまには、あんまり地元と関係のない役職だったのですが、快く部会長としての活動をお許しいただきました。おかげさまで心置きなくお役目に全力を尽くすことができました。心から御礼申し上げます。引き続きましてご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

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