記事

外交部会長を振り返って

2/3

◆沖縄での女性殺人死体遺棄事件と日米地位協定

 5月に発生した沖縄における女性殺人死体遺棄事件では、在日米軍の軍属が容疑者として沖縄県警に逮捕されました。またその後も米軍人による飲酒運転事故による逮捕等が相次ぎました。沖縄県民の方々から怒りや憤りなどの声が噴出することは当然です。日本の外交の観点からするともちろん日米安保体制は重要なのですが、だからこそ米軍関係者の犯罪等に関する沖縄を始めとする立地地域の皆さまのお気持ちはとても重視しなければなりません。

 事件を受け、5月31日に自民党沖縄県連から、自民党三役に対して再発防止や地位協定の抜本改定等の内容を含む申し入れを受け、私も同席しました。谷垣幹事長より、政務調査会でこの件は取り組むようにというご指示をいただき、稲田政調会長のもと担当することとなりました。まず国会終了翌日の6月2~3日に沖縄に出張し、ご遺体の発見現場において献花・黙祷を行った上、名護市および那覇市で地元の方や国の出先機関の方にヒアリングを行い、現状の把握に努めました。その上で関係者の調整を行い、6月16日の外交・国防合同部会の開催後に、稲田政調会長から1)在日アメリカ大使館を訪問して自民党本部としても直接アメリカとの対話の機会をもち、今後も定期化を目指すこと、2)日米地位協定のあるべき姿を検討するために、外交部会国防部会合同で勉強会を行うこと、3)日米で協議が進められていた軍属の在り方の件については引き続き両部会でフォローアップを行うこと、の三点を発表し、翌6月17日には稲田朋美政調会長、大塚拓国防部会長、田中和徳自民党国際局長とともにアメリカ大使館を訪問、ケネディ大使と面談して直接沖縄の方々の怒りの声を伝えました。参院選期間中6月28日~29日にも沖縄を訪問し、選挙の応援や激励をしつつ、糸満市から名護市までの自民党各地域支部を訪問させていただき様々なお話を伺いました。

 そして参院選終了後、改めて7月24日~25日に稲田朋美政務調査会長、大塚拓国防部会長と同行して沖縄を訪問し、自民党沖縄県連の先生方と懇談会を行い、翌日には普天間飛行場の視察、佐喜眞淳宜野湾市長やエレンライク在沖縄アメリカ総領事との会談等を行いました。また再びご遺体発見現場を訪れ、稲田政調会長らとともに献花・黙祷をささげました。なお懇談会の際沖縄県連の皆さまから、党本部において沖縄問題に関する常設機関を設置してほしいというご要望を頂き、稲田政調会長が持ち帰っています。新しい体制の下で具合化の方向で検討されるべきでしょう。

 そもそも地位協定は、別段日本とアメリカのみに存在する協定ではなく、ある国の軍が他国に駐留する場合に一般的に結ばれるものです。したがってさまざまな地域や歴史的経緯等を勘案しなければ単純な比較はできません。もちろん現在自衛隊が海賊対処のためにジブチに駐留するためにも、地位協定は結ばれています。また日米地位協定は、締結以降改定が行われたことはありませんが、一方で運用改善等が積み重ねられていることも事実です。そうした中で「米軍関係者による犯罪をいかにして無くすか」という視点、あるいは在日米軍と基地立地地域の方々との共存関係をより改善するといった視点に立って、まさに何ができるのか不断に検討し実行し続ける必要があります。

 ある先輩代議士いわく「日米地位協定改定は憲法改正くらい難しい」とのこと。ただ自民党はその憲法改正を綱領に掲げ続けて今に至っているわけですし、アメリカも大統領選の結果次第では日米関係全体の見直しを迫られる可能性もないわけではないでしょう。そうしたことを念頭に置きながら、地道に沖縄やアメリカとの関係の維持構築や研究等の取り組みを継続しつつ、機を図ることが大事であろうと考えます。

 振り返ってみると、父・龍太郎が総理時代、当時のモンデール駐日米大使と普天間飛行場の返還で合意してから、20年が経過してしまいました。その他の沖縄負担軽減策等は順次実行されていますし、現在も北部訓練場の約4,000haにわたる地域の返還に向けたヘリパットの移設工事や、普天間飛行場移転先としての辺野古への移設をめぐる政府と沖縄県の和解合意に基づく直接協議と司法との両面での取り組みなどが現在進められています。

返還合意の翌朝の父の「ドヤ顔」は今でも脳裏に焼き付いています。その心は沖縄の方々にかかっている負担をできるだけ取り除きたいという一事に尽きていたと思います。残念ながら道半ばですが、今回党本部でスタートさせた取り組みは後進に引き継ぎを行いたいと考えますし、自分も今後どのような立場にあっても、沖縄のことには関心を持ち続けたいと思っています。

◆日中関係について

 尖閣諸島国有化等をきっかけに、日中関係はやや冷却した状態が続いていましたが、昨年11月のAPECや日中韓サミット等を契機とした首脳間の会談は持たれています。一方で北朝鮮核実験後、岸田外相の電話会談に王毅外交部長がなかなか応じなかったなど、ぎくしゃくした面もあることも事実です。

 中国はAIIBの設立や「一帯一路」構想の推進など、対外的に積極的に進出し支援を行う姿勢を強めています。地域の発展に寄与するものであれば文句をいう筋合いはありませんが、かねて南シナ海において独自の考えに基づく領海の主張を行っていたところ、その中にある岩礁を埋め立てて軍事基地とする工事を次々と完成させているなど、軍事面でも拡張的であることは看過しがたいものがあります。もちろん我が国との間でも尖閣諸島に対して独自の主張を行い、また航空自衛隊による対中機スクランブルが年々増加し、軍艦による尖閣諸島の接続海域への進入等行動を徐々にエスカレートさせていることも決して無視できるものではありません。

 そうした中で、フィリピンが提起した訴えに対し、国際海洋法条約に基づく仲裁裁判所が、中国の主張が相当覆される内容の判断を7月に行いました。中国は判断が出る前からこれを無視する構えでいましたが、実際にはそのことで、むしろ中国が国際法を軽んずる姿勢であるようにかえって印象づけられてしまった感があります。中国外交にも焦りが見受けられるように思いました。

 もちろん中国とは隣国として友好を深めることが望ましいことは言うまでもないことであり、引き続き微力を尽くしたいと考えています。同時に、国際社会の中でその存在感にふさわしい、周囲の尊敬を自然と勝ち取ることのできる振る舞いを、中国には期待したいものと考えます。

あわせて読みたい

「外交」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    時代遅れの感が否めないほど低画質なサブチャンネル放送 NHKの五輪中継に苦言

    諌山裕

    07月31日 15:52

  2. 2

    緊急事態宣言下で爆発している今の状況での延長なんて反感しか産まない ただ政府だけに責任押しつけるな 

    中村ゆきつぐ

    07月31日 08:58

  3. 3

    都の感染者が3865人のからくり 検査数が増えれば陽性者数も増える

    諌山裕

    07月30日 13:07

  4. 4

    どうして日本から敢えて海外移住するのか?

    内藤忍

    07月31日 11:03

  5. 5

    歌舞伎×ジャズピアノ、タップダンスにイマジン…五輪開会式はなぜ変化球で攻めたのか

    毒蝮三太夫

    07月31日 08:05

  6. 6

    感染者4000人超に マスコミは五輪報道からコロナによる医療崩壊報道に切り替えるべき

    早川忠孝

    07月31日 17:57

  7. 7

    無法地帯になってきた空港と選手村 感染爆発が止まらないのも道理

    田中龍作

    07月31日 08:43

  8. 8

    もう、オリンピック・ムードに浸り続けるのは無理なんじゃないかな

    早川忠孝

    07月30日 08:37

  9. 9

    なぜ無効な政策をいつまでも続けるのか?

    青山まさゆき

    07月30日 16:11

  10. 10

    「彼らを誇りに思う」アイリスオーヤマ会長が感激した"クビ覚悟"という社員の行動

    PRESIDENT Online

    07月31日 14:54

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。