総務省の発表によると、7月10日に実施された参議院選挙の投票率は、54.70%だった。なかでも、今回注目を集めた18、19歳については、18歳が51.17%、19歳が39.66%となっており、いずれも全年齢の平均を下回る結果となった。
公職選挙法の改正以来、18歳、19歳に対して政治への関心を高める啓発イベントが行われてきた。この1年間に中高あわせて、延べ約40校 6000人に対して、政治への関心を高める模擬授業を実施するなど、こうした活動に多く関わってきたNPO法人YouthCreateの原田謙介氏は、この結果をどのように受け止めているのだろうか。(取材・文:永田正行【BLOGOS編集部】)

18、19歳世代の投票率が「低かった」という報道に違和感
正直なところ、私自身も18歳世代を甘く見ていて、「投票率は40%ぐらいかな」と思っていました。「本当にすいません」という感じですし、選挙前に多くの高校生と交流をもって話をしていたのに、全然理解出来ていなかったんだと反省しています。
ただ、選挙結果が出た次の日の新聞各紙の見出しを見ると、「18歳投票率のびず」「全体に比べて低い」といったものが目立ちました。今回が、初めてなので、全体より低いのはむしろ当たり前です。そのため、「低かった」という報道の仕方には違和感を覚えました。
逆に全世代より18歳世代の投票率が高かったら、それはそれで他の世代に問題があるという話になるのではないでしょうか。世の中がどう感じているかはわからないですが、私あるいは私の周囲は、投票率については「よかった」「高かった」と評価しています。
今後、より詳細な分析が進んでいくと思いますが、投票率がそれなりに高かった要因の一つとして、この1年間、18歳選挙権にあわせてメディアや学校、行政、政治家のすべてが啓発、PR活動をやってきたことが挙げられると思います。「この歴史的タイミングならいくか」と考えた人も多かったのではないでしょうか。
そう考えると、次の選挙においては、この年代の投票率は多少下がる可能性があると思います。だからこそ、今回こういう数字が出た要因を、しっかりと分析して、効果の高いものを引き続きやっていく必要はあるでしょう。「18歳選挙権」という話題がもうない中で、どうやって興味関心をもってもらえるかというのは考えなければいけません。ユースクリエイトとしても、投票行った人に対して、「自分の投票した政治家をTwitterでフォローしましょう」といったように、その後も政治に対する関心を継続してもらえる流れを作りたいですよね。
ただ、今回「18歳選挙権」がフォーカスされることによって、学校の選挙に対する対応が変わったことは大きいと思います。学校側で啓発活動をする流れが大きく変化することはないと思うので、そういう意味では高校生にとって劇的に政治との接点や啓発が減ることはないと考えています。この1年間にも、様々な事例が出てきていますし、それを先生同士で共有する場も出来つつあります。
「共通投票所」「移動期日前投票所」などで投票の利便性向上を

18歳と19歳で投票率に大きな差が出たことについて、私は住民票と教育の差だと考えています。都市部で18歳、19歳の投票率が高いのは、おそらく大学生になっても親元はなれてない人たちが多く、住民票があり選挙権を行使できる場所に実際に住んでいるという事情が背景にあるのではないでしょうか。
また、教育については、19歳の中でも二年前に高校を卒業した人は、高校で何も新たな主権者教育を受けていない世代なのです。昨年度高校3年生だった人は、それなりに選挙や政治についての授業を受けているので、そうした差も出ていると思います。なので、この二つの要素を改善していけば、これほどまでに差が出ることはなくなるのではないでしょうか。
さらに、これは18歳、19歳世代に限りませんが、投票について全体的に利便性の改善を続けて行く必要はあるでしょう。今回は、それほど普及しませんでしたが、自分の住んでいる地域に関係なく投票できる共通投票所を準備できる自治体が増えれば、投票率の向上につながる部分もあると思います。
日々世の中が便利になっているのに、投票だけが利便性の改善されず、「投票所が少々遠くてもいくべき。それだけの熱意が必要」みたいな議論はナンセンスですよね。
例えば、島根県浜田市では、今回初めてワゴン車に投票箱を積んで市内各地区を巡回する「移動期日前投票所」が導入されました。こういう取り組みが広がれば、下校時間にあわせて高校の前に行くとか、スポーツイベントにあわせて、投票所の方から有権者のいる場所に行くといったこともできます。これは今の公選法でもできるということなので、こうした取り組みが広がると面白いと思います。