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参院選と都知事選を振り返って...

参院選と都知事選が終わった。結論から言えば、「政権交代」を標榜するのが恥ずかしくなるような結果だった。リーダーの仕事は「決断を下す事」と「責任を取る事」である。その意味で、リーダーは出た結果に責任を取らないといけない。残酷だけれども、それが責務だ。一方で、民進党の結党を「決断」した岡田代表の功績には心から敬意を表したいと思う。

参院選では、「まず、2/3をとらせないこと」というスローガンに目を疑った。「改憲阻止」という後ろ向きのメッセージ、そして「1/3以上取れれば満足」と言っているかのような数値目標。目にした時点で「こんなのダメだ」と声を上げたが、修正はかなわなかった。いくら「勝敗ラインではない」と言ったって、あれだけ大きくポスターで掲げれば、誰だって「2/3阻止」が目標だと思うのは当り前だ。そして、その目標さえ達成できなかったのだ。どう説明してみても、この参院選が民進党にとって敗北であるのは明らかではないか。

民進党への「ダメ出し」は比例票に表れている。自民党は2011万票、19議席。民進党は1175万票、11議席。これで「二大政党」と胸を張れるだろうか。せっかく民進党という新しい政党になったのに、わざわざ自ら進んで旧民主党の負のイメージを背負おうとしているかのような言動も目立った。「実質成長率は民主党政権の方が良かった」と党幹部が演説していたが、国民の共感にはほど遠く、逆に「あの停滞の時代に戻したいのか」と安倍総理にテレビCMで利用されてしまった。口惜しいとしか言いようがない。「私達は民主党ではない。新しい政党になったのだ」と言うべきだったし、そのようなキャンペーンをやるべきだった。「民進党は民主党の名前が変わっただけ」と党幹部自体が思っているのであれば、国民はもっとそう思うだろう。「結局、変わる気はなくて、元の民主党じゃないか」。そう思われた結果が比例票の伸び悩みだと私は思う。いくら「1人区で善戦した」と言い張っても、この参院選は民進党にとって敗北でしかないと私が考える理由はここにある。

都知事選も自民分裂にかかわらず後塵を拝して3位に沈んだ、惨敗の結果となった。野党統一候補となった鳥越俊太郎氏は都知事候補としてはあまりに都政の課題を知らなさすぎた。当初から「今回は人気投票ではなく改革派の実務家を」という選考基準で候補者選びを進めていたはずなのに、それがどうして石田純一氏や鳥越俊太郎氏の擁立などという話になるのか。私はその点を指摘して岡田代表にも最後まで反対の意見を伝えた。やってみたらどうだ。言わんこっちゃない、という結果ではないか。都政に対する知識不足を露呈し、週刊誌によるネガティヴキャンペーンの餌食となり、地域社会を支える保守層からは「76歳を擁立してどうするの」と呆れられた。正直、選挙戦終盤は鳥越支持を公言するのも憚られるような状態に陥ってしまった。民進党はこの都知事選で非常にクレジットを落としたと思う。その意味で鳥越氏擁立を主導した党本部の責任は重い。

参院選と都知事選で明らかになったのは、今や民進党と推薦候補の多くが「若者に支持されない」という致命的な状況に陥っている実態だった。参院選で初めて投票した18歳、19歳の有権者の投票先は圧倒的に自民党だった。20代、30代も自民党が4割。逆に「民進党への投票割合が最も高かった年代は70歳以上で23.2%。60代の21.4%、50代の20.0%と続いた」(日経新聞出口調査)。都知事選の鳥越俊太郎氏は20代の支持がひとケタ台、何と20代支持率では極右の在特会の桜井誠氏をも下回るという驚愕の調査結果もあった。老人にしか支持されない政党に未来はない。スマホでニュースを読む若者世代の情報リテラシーを問うてみたって天に唾する話でしかない。「○○を変えるのに反対」という守りのメッセージばかりが強調される選挙スタイルでは、攻めの姿勢と強いリーダーシップに期待する若者世代には訴求できないという事なのではないかと感じる。

一方、共産党を含めた野党統一候補への一本化は明らかに功を奏した。1人区での野党11勝はその成果であるのは間違いない。しかし2007年参院選では共産党が立っていても1人区で野党勢力(民・国・社)は23勝6敗という圧倒的な勝利を収めている。勢いがあれば1人区でも自力で勝てていたのに、今や自力では勝てない状況なので、共産党を含めた一本化が必要になったという、いわば「窮余の一策」という感は否めない。ましてや共産党は今も共産主義を標榜し、天皇制を否定し、自衛隊廃止を綱領に謳っている。このような綱領では私達が政権交代を目指していく上での戦略的協力がぎりぎりで、政権をともにする事はとてもではないが考えられない。今のままの共産党であるならば、私達はあくまで共産党抜きの政権交代を追求していかなければならない。そもそも共産党を含めた一本化が必要とされるまでに至った、野党第一党としての党勢の退潮こそが、手を打たなければならない本質的課題である。それを怠って他力本願に陥れば、自力の弱体化はますます進むに違いない。

玉木雄一郎衆院議員が良く言っている「9・6・3の法則」というのがある。小選挙区で当選するには、「民進支持層の9割、無党派層の6割、自民支持層の3割」を取る必要があるという「勝利の方程式」だ。四国の香川県という地方において、野党唯一の小選挙区当選者として、1人区の小選挙区を勝ち続けている玉木氏だからこその説得力がある。共産党を含めた野党統一候補の路線は、アベノミクスの恩恵がまるで実感できない庶民の生活状況もあり、無党派層の5割以上から支持される状況に持ち込めたのは確かだ。しかしこの間、安倍政権で40%近くにまで増えた自民党支持層には食い込めていない。これこそが今の民進党の抱える最大の課題だと私は考える。自民党の創始者である鳩山一郎の孫が代表で、幹事長は田中角栄の申し子で、田中角栄の娘まで在籍していた頃の旧民主党は、現状不満の保守層を取り込める要素を色濃く持っていた。左傾化した(と見られている)今の民進党では、「9・6・3」の「3」が取れない。野党協力のブリッジをかけつつ、自民党支持がデフォルトの保守層に訴求するような戦略が必要になる。ありていに言えば、「読売新聞を購読し、巨人が大好き」という人にも支持してもらえる民進党へと生まれ変わらなければならない。これこそが9月の党代表選の最大のテーマとなるだろう。

顔も、脳みそも、肉体も改造する。「民進党は変わった」「もはや旧民主党の延長線上にはない」「新しい国民政党が生まれた」と思ってもらえるようにしないといけない。9月の代表選で新しいリーダーとなる人には、「1年以内で支持率20%の政党にする」と公約してもらいたい。そして、それができなければ1年後に責任を取ってもらいたい。歴史をひもとくと政権交代前の旧民主党は「支持率20%」の政党だった。最初からそうだった訳ではなくて、低かった農村部や女性の支持を向上して、参院選に勝ち、ねじれ国会を起こし、国会論戦で国民に訴求したからこそ、「支持率20%」へと上昇したのだ。自民党支持がデフォルトの保守層を取り込まなければこの数字はない。その意味で言えば、課題ははっきりしている。

左の翼ばかりをパタパタ羽ばたかせても鳥は飛べない。左の翼と右の翼をバランス良く羽ばたかせるからこそ、鳥は高く飛べるようになるのだ。同時に、守りではなく攻めの姿勢で、果断に政策を打ち出し、若者世代をグイグイ引っ張っていく気概を持たなければならない。その意味でも「過去」に拘泥している場合ではない。未来志向で、トライアルアンドエラーを試みて、挑戦し続ける姿勢を持たなければならない。失敗を恐れるな。「万年野党」に陥るかどうかの分かれ目だ。失うものなどない、やろうじゃないか。

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