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内部調査にこだわる知事の姿勢に疑問 - 中原 岳

「ばってんがサイト」が始まったのは今年の4月13日。早くも半年が経とうとしている。筆者の記事は,この拙文を含めてこれまでに27本が掲載された。ご多忙の中,記事の編集やサイトへのアップをしていただいた佐賀新聞社メディア戦略局の皆さまには,厚くお礼申し上げたい。

また,国内外の第一線でご活躍され,興味深い記事を提供なさっているライターの皆さま,読者の皆さまには,今後も折に触れてご教示いただけたら幸いである。

さて,私事で恐縮だが,筆者は中学3年生のころから佐賀新聞の投書欄「ひろば」に投書をしてきた。佐賀新聞のホームページからアクセスできる記事データベースには,今までに掲載された投稿文が収録されており,今読むと懐かしくもあり,恥ずかしくもある。

読み返していたら,高校1年生のころに書いた投稿文が出てきた。2007年3月9日付のひろば欄「私の主張」に掲載された『原発推進,慎重に判断を』という記事だ。掲載日が,東日本大震災や福島第一原発の事故が発生するほぼ4年前というのは単なる偶然だが,事故が起きてしまった今となっては,何もかもが後の祭りだ。

この投稿文の要旨は次の通りだ。

“原発をめぐる問題が相次いでいる。原子力発電には安定的な電力供給が可能であるといった長所がある一方,核廃棄物が発生し,事故が発生するとその影響が地球規模で及んでしまう,などのマイナス面も指摘されている。

こうした指摘に対して,国は「原発の安全性は確認されている」と主張し,佐賀県も「高い安全性」の証拠として欧州各国の実績やプルサーマルの導入状況を挙げている。

例えば佐賀県の広報誌「県民だより平成19年3月号」では,プルサーマルに関して「ドイツなどでは,玄海原発3号機の計画を超える出力や最高燃焼度の実績が多数あります」と説明した。しかし,ドイツは2002年に脱原発法を施行し,2021年には原子力発電をやめると発表した一方,自然エネルギーへの転換を強力に進めている。

原発を人の手で動かす以上,事故の可能性がゼロとは言えない。日本の原発はすべて海沿いに立地しており,事故が起きた場合は海産物への影響も心配だ。原発推進は,将来への道を誤らないように慎重に判断すべき問題である。”(データなどは投稿当時のまま)

この投稿文に対し,同年3月30日付で『お答えします 欧州各国でも原発推進の動き』という反論記事が載った。筆者の投稿文では,原発を推進する佐賀県を批判していたので,県からの反論かと思ったが,最後の署名には「九州電力佐賀支店広報グループ」とあった。なぜ県ではなく,九州電力が反論するのか。高校生だった当時,大変不思議に思ったものだ。

しかし,県と九州電力との間に密接な関係があったとすれば,県に代わって九州電力が反論したのも「ああ,そういうことだったのか」と理解できる。

例えば,2005年に行われた県主催の公開討論会では,プルサーマルの導入をめぐって九州電力の社員らが「仕込み質問」をしたことが発覚。これに関し,九州電力の第三者委員会は,今年9月30日に発表した最終報告書で次のように指摘した。

“(九州電力が県と打ち合わせた会議の議事録などから)「仕込み質問」が佐賀県側に事前に報告された上で行われたことは疑いのないところである”

“(導入賛成派の意見が相次いだことから,古川康佐賀県知事が)「仕込み質問」であることに全く気づかなかったとは考えにくい”

しかし,古川知事は,上記のような「仕込み質問」に関する指摘や「やらせメール」への関与を否定し続けている。佐賀新聞10月1日付によれば,「(古川知事は)プルサーマル公開討論会に“シナリオ”が存在したことなど,新たに浮上した疑問点に対しては副知事を中心に県庁内で調べる方針」だという。だが,自らの部下と内線一本でつながるようなところで調査をして,信用に値する報告書ができるとは思えない。

一部の佐賀県議は外部有識者による調査を望み,九州電力第三者委員会の郷原信郎委員長も「知事部局で第三者委を選ぶのが原則だが,うまくいかないようであれば,議会がつくるのもいいのでは」(佐賀新聞10月2日付)と述べている。疑惑の解明が待たれる中で,県独自の第三者委員会を設けず,内部調査を続ける構えを見せている古川知事の姿勢は,県民の間に余計な憶測を呼ぶのではないか。

真実はひとつしかない。今後行われるであろう“公正な調査”で,多くの事実が解明され,事件の真相が一刻も早く明らかになることを願うばかりだ。

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