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「土用の丑の日」が引き起こすウナギ業界の「異常」 台湾のウナギ業界幹部インタビュー - WEDGE編集部 今野大一

 台湾は2007年にウナギの稚魚であるシラスの輸出を禁止した。しかし、日本の業者が香港を通じて台湾産のシラスを輸入して育て、「国産ウナギ」として販売されていることは業界公然の秘密である。「土用の丑の日」はこうした「違法シラス」によって支えられている面をもつが、こうした状況に台湾の業界団体である台湾区鰻魚発展基金会の郭瓊英元董事長は警鐘を鳴らす。

 私はシラスを扱っておらず、成魚になったウナギの販売をしているが、この商売は薄利多売だ。儲からない業者が多いのに比べて、シラスの輸出は巨額の利益を生む。「土用の丑の日」に間に合わせたい日本の問屋や輸入業者、養鰻業者が、時には1キロあたり300万円といった法外な高値でシラスを買っていくからだ。

 シラスが国外に輸出されることで、最も危惧するのは台湾国内の養鰻業者が消えていくことである。せっかく採れたシラスが国内に残らず、台湾の池に入らないので、養鰻業者たちは悲鳴を上げている。10年前は、1700社程度あった台湾の養鰻業者は、現在は1100社程度にまで減った。国外への輸出という違法行為がはびこることは、台湾の経済にとっても非常に大きな問題である。「地下経済」が肥大化するからだ。

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 台湾のウナギ業界だけに影響があるわけではない。ウナギの養殖だけでは生活が苦しい一部の養鰻業者は、台湾スズキやシラエビなどの、他の魚にも手を広げなければならず、兼業することになる。そうなると台湾スズキやシラエビ自体も生産が過剰になるため、もともと安定していた値段が下落することにな り、台湾スズキやシラエビ専業だった養殖業者の生活も逼迫することになる。シラスの国外流出の悪影響はウナギ業界にとどまらない。

 私は台湾政府にも養鰻業者の苦境を日頃から訴えている。政府も国内にシラスを残すことに全力を注がずに、異種ウナギの養殖など、新たな取り組みをしており、これには憤りを覚えている。法律違反を取り締まる気がないようにも思える。公権力を駆使して不正を正して欲しい。このままでは台湾の養鰻業者の仕事がなくなってしまう。

 日本が香港からシラスを輸入している現状にも非常に疑問を感じている。違法行為は大反対だ。もし台湾がシラスの輸出をしていくのなら、輸出を禁止している現在の法律自体を変えるべきだ。何より一番の犠牲者は、高い値段でウナギを買わざるを得ない日本の消費者なのだから。

台湾、香港への現地取材についても触れているこちらの記事(土用の丑の日はいらない、ウナギ密輸の実態を暴く)も合わせてご覧ください。

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