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妨害メール暴露でピンチのクリントン、笑うトランプ - 土方細秩子

「民主党の党大会まで戦う」と宣言しながら、7月に入りヒラリー・クリントン支持を表明し実質的に選挙戦を終えた、米民主党大統領候補、バーニー・サンダース氏。ところが「打倒トランプのために、クリントン氏のもとで一致団結を」と苦渋の決断をしたサンダース氏に、復活の可能性が見えてきた。

サンダース復活?

 きっかけとなったのは、7月22日にウィキリークスが公開した米民主党全国委員会の内部文書。1万9000通以上のメール、添付などが「爆弾投下」され、物議を醸したが、これがデビー・ワッサーマン・シュルツ委員長の辞任劇にまで発展した。しかもウィキリークスでは今回の投下を「ヒラリー・リーク・シリーズ」第一弾、としており、今後さらにスキャンダラスな内容が暴露される可能性がある。

 今回の暴露内容は、民主党全国委員会が一丸となって「サンダース下ろし」を画策していた、という事実だ。共和党もミット・ロムニー氏やジョン・マケイン上院議員が中心となったトランプ降ろしを画策していたが、これは公にされていた。しかし民主党の場合は表面的には「候補者を公平に扱う」姿勢を見せつつも、内部で陰湿な揚げ足取りをしていた分、質が悪い。

 例えばサンダース・クリントンの討論会を「なるべく視聴率が悪そうな時間帯、日時に設定する」など、クリントン氏のネガティブなイメージが広がらず、サンダース氏への好感度が増すことを阻害するのが目的だ。しかも委員会はクリントン氏のキャンペーンチームと頻繁に連絡を取り合い、選挙戦を有利に進めるための策を練り続けていた。

 ウィキリークスによる公開の後、ワッサーマン・シュルツ氏は党大会でのスピーチを辞退する、と発表、のちに委員長辞任となった。

しかし、ことはそれでは収まらない。もっとも怒り狂っているのはサンダース支持者らだ。元々サンダース支持者は「Bern or Burn」(バーニーでなければ投票しない)を合言葉にしていたほどで、およそ4割が「ヒラリーには投票したくない」人々だ。サンダース氏が「政治的革命は続く」として支持者にヒラリーの元での民主党の団結を呼びかけていたが、今回のメール公開で「民主党の元での団結は無理」と完全に決裂した形だ。

クリントンは嫌、緑の党に流れる?

 サンダース支持者の一部は「バーニーに出馬の意思がないのならば、第3党である『緑の党』の独立候補に投票しよう」と呼びかけていたが、緑の党を率いるジル・ステイン氏は「サンダース氏が彼を裏切った民主党に愛想をつかしたのなら、緑の党に喜んで迎え入れる。そこで政治革命を続けて欲しい」とツイッターを使ってエールを送った。

 別の支持者らは、民主党党大会の前に抗議デモを行い、「候補者指名のやり直しを」と訴えている。その急先鋒はサンダース氏のカリフォルニア代議員であるノーマン・ソロモン氏で、ウィキリークス公開の2日後には「バーニー代議員ネットワーク」の設立を発表。党大会で真実の追求を行い、場合によってはクリントン氏で決定した民主党候補の白紙撤回を求めることも辞さない、という。

 最大の流れはブレクジットならぬ「DemExit(デメクジット)」で、つくづく民主党には愛想が尽きた、サンダース氏を党首とする政党をつくり、独立候補として再度大統領選に挑もう、というものだ。

 サンダース氏本人は「今一番大事なのはドナルド・トランプを大統領にしないこと」と語り、今回の騒動についてはコメントを控えている。しかし元々は独立系上院議員で民主党に所属していたわけではなく、これほどまでに党本部から密かに選挙妨害を受けていた、となれば腹をくくる可能性はゼロではない。

漁夫の利を得るトランプ

 ところで今回の騒動をもっとも喜んでいるのは、共和党の大統領候補、ドナルド・トランプ氏だろう。ツイッターなどを駆使して「かわいそうなバーニー」「民主党はバーニー本人だけではなくその政治的業績、支持者らもまとめてコケにした」など次々に発信。ネガティブイメージの構築に躍起になっている。またウィキリークスも「SNSなどにどんどん貼り付けて民主党全国委員会の汚いやり口を広げよう」と騒動を煽っている。

 クリントン対トランプの支持率世論調査はウィキリークス前にはクリントン氏が10ポイント近いリードを保っていたが、その差は徐々に縮まりつつある。ウィキリークスが今後第二弾、三弾とクリントン氏に不利となる暴露を投下すれば、選挙戦の行方はますます分からなくなるだろう。いろいろな意味で前代未聞の今年の大統領選挙戦、その混沌は深まる一方だ。

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