- 2016年07月28日 17:20
都知事選を「見苦しい戦い」にしたその主因を、加熱する週刊誌報道に求めることは誤り
1/2さて今週号では週刊文春に加えて週刊新潮も鳥越都知事候補の過去の『淫行』疑惑に関して大きく報道しております。
鳥越氏側は早速先週の文春に対してと同様、新潮に対しても記事は「事実無根である」とし、告訴状を提出いたします。
平成28年7月28日
弁護団からのコメント
本日、発売された週刊新潮の鳥越俊太郎に関する記事につき、弁護士藤田謹也、弁護士五百蔵洋一は、本日、午前10時20分、東京地方検察庁に対し、刑法第230条名誉毀損及び、公職選挙法第148条第1項但書、同法第235条の2第1項違反で株式会社新潮社内酒井逸史に対する告訴状を提出しました。
これにより、週刊新潮の記事が事実無根であることを明確にしました。
今後につきましては、選挙運動に集中すべきであると考えます。
弁護士 藤田 謹也
弁護士 五百蔵洋一
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今回は本件に関して少しメディア論的考察を読者としてみたいと考えます。
●マスメディアのチキンジャーナリズムを補完するこの国のゴシップジャーナリズム
この国のマスメディアのチキン体質はどこから来るのか、今回も鳥越氏の問題で主要紙がなぜこの問題を積極的に取り上げないのか、理由のひとつには、この国のメジャーなメディアがすべて所属している閉鎖的な「記者クラブ」の問題があることは間違いないでしょう。
日本独特の仲良しクラブである「記者クラブ」では、役所や政党ごとに100を越える「記者クラブ」なる部屋を与えられ、選ばれし会員メディアだけが入室を許可されています。
そして、お役所や政党側も限られた「記者クラブ」だけに会見や発表をして、彼らを優遇します。
結果、会員メディアは本来客観報道対象である役所や政党に対しこびを売るように、へたに批判的な記事を書けなくなり、ただただ無批判にそれを垂れ流す「提灯持ち記事」を乱造していきます。
その過程の中で報道する側とされる側にある種の「癒着」のような関係が成立してしまい、ついには報道するマスメディア側に独自取材能力が喪失し、公式発表に頼りきるチキンジャーナリズムが生まれるというわけです。
主要全国紙5紙にしてもどの新聞を読んでも書いてある事が余り変わらないのは、公式発表に頼っているからです、そうすりゃ万一間違ってても自分達のせいじゃなくなるからという臆病(チキン)な保身論理がそこに働いているのです。
で、そのようなマスメディアのチキン振りを補完しているのが、功罪両面ありながらですが、ときに暴走しがちで裁判沙汰も日常茶飯事の週刊誌・月刊誌を中心とした、いわゆるゴシップジャーナリズムであります。
この国ではロッキード事件の昔より、数々の政財界の疑獄を暴くのが、メジャーなメディアより多くの場合週刊誌などのゴシップジャーナリズム(しかもしばしば立花隆のようなフリーランスのジャーナリストによる)の側であるわけです。
彼らは、記者クラブに入れないから自力で取材をしなければなりません、だから政側・官側に遠慮が要りません。政治家の発表やお役所発表に頼らず独自で取材できるからこそ、ときとしてマスメディアが見落としてきた大スクープをうてるわけです。
で、臆病なマスメディアはそのような週刊誌などがうったスクープを姑息にも系列スポーツ紙などを使って利用いたします。
で世論の動向を見極めた上で、初めて自身の報道としてしれっと社説や記事報道をしてのけるのです。
つまりマスメディアは、自分達は手を汚して政・官の怒りを買う取材をせず、ゴシップジャーナリズムにそれをさせ、そちらが手柄を立てるとわっと飛びついてくるだけなのです。
多くの政・官のスキャンダルや疑惑の報道は、この国では次のステップで、マスメディアに利用されていくことになります。
1:週刊誌などのゴシップジャーナリズムがスキャンダルスクープ記事掲載
2:マスメディアは系列スポーツ紙の社会面や系列TVのワイドショーなどを活用してそれをしれっと報道
3:社会的に十分に批判対象の問題になったと見なしたら、マスメディアでようやく批判論説を掲載する
おそらく今回もこの流れをなぞることになりましょう。
マスメディアのチキンジャーナリズムを補完しているのは、この国のゴシップジャーナリズムなのであります。
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- 木走正水(きばしりまさみず)
- 新聞・テレビの報道分析が高い評価を受けている。