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「選挙フェス」「プラカード」…参院選の選挙運動を振り返る

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BLOGOS編集部
今月10日に投開票が行われた参院選は、ネット選挙運動が解禁された2013年7月の参院選から数えて3度目の国政選挙でもあった。 解禁時には大きな話題を呼んだものの、結果的には「大勢には影響を与えない」とも言われてきたネット選挙。あれから3年、参院選や目下の都知事選ではどのように活用されているのだろうか。

編集部では、ネットや街頭における新しい選挙手法に着目している、東京工業大学准教授の西田亮介氏に話を聞いた。【大谷広太(編集部)】

■進化した「選挙フェス」とその課題

ー東京選挙区では、ユニークな選挙活動として三宅洋平氏の動向が話題になっていました。

西田:三宅氏は、前回(2013年)の参院選で「緑の党」(当時)から比例代表で立候補し、17万票あまりを集めて話題になりました。今回の参院選でも落選はしましたが、有権者数で見れば東京選挙区に限定されたことで、前回より分母が小さくなっているにもかかわらず、25万票も集めています。三宅さんはもともといわゆるメジャーではない、インディーズシーンのミュージシャンで、彼の政治活動が実質的にここ5年くらいのものだということを考慮すれば、やはりこれは無視できない数字で、それなりに注目すべき急伸の度合いではないかと思います。2013年の参院選で話題になった山本太郎議員がお茶の間タレントで、映画俳優として圧倒的な認知度を踏まえた選挙運動を展開できたことと比較しても、尚更その手法には興味深いものがあります。

何度か選挙フェスの現場も見に行きましたが、彼の街頭演説会である「選挙フェス」のスタッフや、足を止めて話を聞いている人たちの様子を見ると、いわゆる音楽関係者・市民運動家風の方だけでなく、とても多様でした。

よく選挙フェスは、音楽の野外イベントのアナロジーとして報じられていますが、「選挙フェス」は、音楽イベントを単に模倣したものにとどまらず、選挙運動としても洗練されてきたという印象を持っています。たとえば、会場の整理や巡回、ビラ、寄付のお願い、「公選ハガキ」の配布の徹底など、スタッフの動き方が組織化、効率化されていました。また、拡声器の使用ができなくなる20時を過ぎると、山本太郎氏も交えて3ショットを撮るよう促し、ソーシャルメディアでの拡散を狙う、などといった一般の音楽イベントとは異なった選挙に特化した工夫が随所に実装されています。これはやはり前回参院選、それから松戸市の市議会選挙でDELI(三木幸仁)氏が当選した選挙での応援の経験を継承しながら、改善を続けてきた影響といえるでしょう。

服装も、以前はタンクトップを着ていることもありましたが、今回はシャツを着ている場面も多かった印象です。小さな違いかもしれませんが、年長世代の印象を意識したからではないでしょうか。そのような細部に至るまで、試行錯誤の跡が見て取れます。

ー「生活の党と山本太郎となかまたち」の陣営の組織が支援もあったのではないでしょうか。

西田:そうだと思います。もちろんそのノウハウも活かされていると思いますし、動員も行われているのではないでしょうか。というのも、山本太郎議員が登場した時が、一番歓声が大きかった、という場面もありましたから。渋谷の選挙フェスは、ある種盛り上がりのピークで、音楽も盛り上がっています。しかしその他の場所では音楽のライブは最前列などを除くと、音楽では聴衆の反応を引き出せていない場面もありました。その一方、山本太郎議員が登場するというアナウンスが流れただけで、拍手喝采が起きていました。

ー演説の際にはBGMを使用していましたね。DJによるプレイ、本人も含めた歌の生演奏も印象的でした。

選挙フェスDAY 1 JR吉祥寺駅北口

西田: BGMのボリュームの調整もやっていたと思います。実際の音楽ライブなどでも用いられるそうですが、聴衆の反応などにあわせて、とくに後半に向けて音量を上げていき、盛り上がりを演出する手法と類似性を感じます。プロのミュージシャンならではともいえるのかもしれません。

選挙フェスDay2 JR高円寺駅北口

もちろんプロの音楽の使用やライブ演奏については、ある種の利益提供にあたるのではないかという意見もあり、公職選挙法上グレーゾーンではありますが、実際に取り締まるのはなかなか難しいようです。

三宅さん自身が著書で明かしているのですが、彼は喜納昌吉さん(音楽家、元参院議員)の音楽を使った選挙運動に大変感銘を受けています。市民派の間で引き継がれてきた手法を三宅流にアレンジしているようです。松戸市議会議員選挙で当選したDELI氏は、ヒップホップミュージシャンが選挙運動に音楽を取り入れていましたし、三宅さんも応援で参加していました。



ー「選挙フェス」的な手法は、今後どうなっていくでしょうか。

西田:「選挙フェス」も、開催する場所によっては、音楽イベントと比較すると盛り上がっているとは決して言えない面もありました。しかし、一般的な政治家の街頭演説よりはよっぽど盛り上がています。また帰宅時間にたまたま通ったと思しき人たちが長い間足を止めて、ビラを見ながら三宅さんと山本太郎議員の演説に聴き入るというシーンもたびたび見かけました。また海外に目を向けてみれば、スペインのポデモスや、アメリカのバーニー・サンダースの運動のように、左派的な主張+ネット中心+若者中心の、グローバルな異議申し立ての運動と呼応する部分があると思います。ある種の世界的なトレンドでもありますし、三宅さんも意識しているところがあったと思います。ネットとその先の海外の視聴者やメディアを意識してだと思うのですが、英語で少し長い尺のメッセージを発する場面もありました。国内の選挙でありながら、海外や英語での発信を意識しているところも興味深い点です。

ところで、既存の政治勢力がステレオタイプ化していくなかで、こうした新しい勢力が立ち上がってくることは良いことだ、というポジティブな捉え方もあります。そもそも新しいプレイヤーが乏しさが、日本の政治の硬直化を生み出しているという見方もできなくはありませんから、こうして新しいプレイヤーが登場し一定の存在感を見せるだけでも、政治と選挙に新しい緊張感が生まれます。

ただ、三宅さんに関しては政策面でやや具体性に乏しかったのは残念な点ともいえます。また急進勢力にありがちなことですが、リスクも伴います。今回、エセ科学的な点が指摘されたり、過剰なエコのような主張が批判も受けていましたが、「よくわからないけれど、三宅さんが言っているので信じる」という人が出てきてしまう可能性があります。これはぼくの著書『マーケティング化する民主主義』などでは、「ハーメルンの笛吹き」の比喩で表現しましたが、エビデンスや合理的説明に欠くカリスマには、当然カルト化や先鋭化のリスクを有しています。政治家が有権者の代表であるという観点からすると、各候補者は自身への「信頼」を求めるだけではなく「説明」をしていく必要があるのではないでしょうか。

また、ネットワーク的・流動的なのが特徴ですから、逆に言えば組織としては不安定とも言えるでしょう。

最近、三宅さんが落選したのは不正選挙があったからではないかという噂をネットで見かけました。ただし、幾つかの観点が抜けているように感じます。たとえば選挙フェスに集まっている人は都民に限りません。不正選挙の根拠とされた小笠原村では三宅さんがダントツ一位だったという話題ですが、人口が少ないうえに、三宅さんのエコに関する主張とも親和性が高いという地理的要因を想起すべきです。

いずれにせよ、東京選挙区が1000万票を取り合うというゲームだということを思い出せば、まったく規模が違う話です。日本の選挙システムは他国と比較してもかなり厳しく運用されています。まことしやかに陰謀論のような主張を続けていると、ちょっとおかしな方向にいってしまうのではないかということを懸念します。

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