記事

メディアが報じない政府の「言論封じ」問題

上出義樹[フリーランス記者/上智大学メディア・ジャーナリズム研究所研究スタッフ]

***

公的な記者会見とは、国民に対し説明責任を負う政府機関のトップらと、報道責任を担うメディアが対等の関係で質疑応答する場であると、私は承知している。

ところが、私も参加した7月20日の原子力規制委員会の定例会見で田中俊一委員長は通信社の記者に、質問内容に事実と違う表現があるとして発言の撤回を求める一幕があった。

<前委員長代理の島崎氏が大飯原発の耐震性の計算に異議>

同日の会見では、「審査が厳し過ぎる」と電力会社などから罷免要求も出る中で、2年前まで同規制委の委員長代理を務めていた地震学者の島崎邦彦氏が、原発再稼働の安全審査の重要項目である耐震性に関連し、関西電力が使った大飯原発の基準値(基準地震動)の計算方法に「過小評価の疑いがある」と、異議を唱えている問題について質問が集中した。

【参考】<棄てられた年金>国が「年金」を原資に株式投資で10兆円の損失

<会見室の使用拒否を批判した共同通信記者に発言撤回を要求>

その会見の後半で共同通信の記者が、前日の7月19日に島崎氏が同規制委の施設内で記者会見を開こうとした際、規制委が会見室の使用を拒否したことを問題視。
「一民間人(島崎氏のこと)の記者会見の開催を結果的に政府機関が妨害したということにもつながると思うが、いかがか」
と質問した。これに対し、田中委員長は、
「(島崎氏が外の施設を使い)自分でやる分にはいいですよ、と申し上げている。何が妨害なのか」

と気色ばんで反論し、「妨害」発言の撤回を求めた。しかし、記者が発言の撤回を拒否したため、規制委はわざわざ共同通信社に対し、記者への注意喚起の申し入れを行っている。

<繰り返されるメディアへの威圧的な対応>

2012年秋に発足した原子力規制委はこれまでも、「容認できない誤報」の掲載を理由に複数の全国紙に、記者会見参加禁止などの「処分」を科している。今回は記者会見での発言の撤回を求めるケースだが、メディアへの威圧的な対応という点では共通している。

税金で運用される公共スペースにも関わらず、庁舎管理権を根拠に特定の記者会見を開かせない問題を巡っては、他省庁を含め強い批判が聞かれる。

その核心を突く発言を撤回せよ、と委員長に強面の顔を見せられては、他の記者も今後、質問の内容を自己規制しかねない。その証拠にどのメディアもこの一件を報じていない。

私には、看過できない政府機関の「言論封じ」と映るが、こんな記事を書く私にもお咎めがあるかもしれない。

あわせて読みたい

「報道の自由」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    ついに訪れた「PayPay手数料有料化」の激震!コンビニのサバイバル戦略

    文春オンライン

    05月12日 08:27

  2. 2

    私がオリンピックを開催するためには、緊急事態宣言を7月上旬まで延長すべきと思う理由

    宇佐美典也

    05月12日 12:00

  3. 3

    【読書感想】禍いの科学 正義が愚行に変わるとき

    fujipon

    05月12日 10:15

  4. 4

    「先の大戦時の戦術と重なり合う」 宝島社が企業広告で投げかけた日本の政策への疑問

    BLOGOS しらべる部

    05月11日 20:24

  5. 5

    コロナおさまらない日本 風邪でも休まないビジネスマンとザルの水際対策

    中村ゆきつぐ

    05月12日 08:30

  6. 6

    東京オリンピック2021を開催するため最低限の案

    西村博之/ひろゆき

    05月11日 20:34

  7. 7

    「原稿が違う」質問と噛み合わない菅首相に野党抗議 #国会騒然 がSNSで話題に

    BLOGOS しらべる部

    05月11日 21:23

  8. 8

    「従軍慰安婦」というフェイク用語をばら撒いた朝日新聞の罪は重い

    PRESIDENT Online

    05月12日 11:30

  9. 9

    看護師や女子高生の盗撮を15年間続けた医師 撮りためた動画は驚愕の3.63テラバイト

    阿曽山大噴火

    05月11日 08:08

  10. 10

    現時点での民間企業テレワーク状況公表に反対。まず官公庁・大臣、そして国会議員の実情を公表すべき

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

    05月12日 08:13

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。