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熊本城の石垣の痛み、白河小峰城の10倍超


7割は国庫負担、新たな城作りより難作業
技術保存も視野に腰据えた修復工事を


 熊本のシンボル、県民の精神的支柱である熊本城の地震被害は、城の象徴である石垣に限っても表面積の3割に広がり、東日本大震災(2011年)で同様に石垣が崩落した白河小峰城(福島県白河市)の10倍を超す。ともに国の特別史跡に指定されており、修復作業は石を当時の手法で一つ一つ元の場所に積み直し、破損した石は新しい石材を調達して元の形に加工する必要があり、新たな石垣を作るより難しい。


いたるところで石垣が崩落した熊本城

小峰城の場合は修復作業終了までに6年の期間が必要とされ、熊本城はこのほか櫓など建造物の痛みも激しく、詳しい内部の調査はまだ手つかずの状態。工事が始まれば急ピッチで修復が進むと期待するが、全国的な城ブームの中で匠やその技をどう保存・伝承していくかといった別の課題もある。腰を据えた修復作業こそ必要と考える。

熊本城の石垣の総表面積は7万9000平方メートル。計53ヵ所で崩落が発生し、うち約1割は完全に崩落、約2割は部分的な崩落や石と石の間の空き、膨らみが生じ、積み直しが必要な表面積は全体で2万3600平方メートルに上る。文化庁の試算による石垣の修復費用は1平方メートル当たり150万円、全体で354億円。災害復旧事業の上乗せで7割は国庫負担となる。

4月時点の現地調査を基にしており、その後の余震や激しい雨でさらに被害が拡大している可能性があるほか、国指定の重要文化財となっている13の櫓や門のうち慶長12年(1607年)に完成した東十八間櫓など5つの重要文化財が全壊、天守など昭和以降に再建・復元された20の建造物を含め、すべての建物に大きな被害が出ており、崩落した瓦の確保も大きな課題となる。

7月中旬、城の再建を支援する日本財団のメンバーと共に、熊本城総合事務所の河田日出男所長らに城内を案内していただいた。宇土櫓(重要文化財)前の通路や天守の入り口は崩れた石垣の巨石で埋まり、かろうじて倒壊を免れた建造物も壁の剥落など痛みがひどい。石垣が大きく崩れ、わずかに「隅石」と呼ばれる角の石に支えられ倒壊を免れている「飯田丸五階櫓」の前では、倒壊を防ぐためのアーム状の鉄骨の組み立て作業が行われていた。

修復作業は「各建造物内部の破損状況を調べ、危険な石垣の上にある建造物を移動、石垣を積み直した後、元の位置に戻す。その上で残された部材を最大限に活用して建造物を元の状態に復元させる」(河田所長)というのが大筋の手順。肝心の石垣に関しては、小峰城の修復作業の進捗状況にも注目している。

当の小峰城は東日本大震災で全長約2キロの石垣の10ヵ所、表面積で1600平方メートルが崩落、膨らみなどが出た4ヵ所も含め修復工事が進められている。修復対象は全体で2000平方メートル前後、熊本城の10分の1以下と見られるが、それでも2013年に始まった修復工事が終わるのは2018年の見通しだ。

地元の建設会社と共同企業体を組み工事に当たる鹿島建設がWebに掲載している「小峰城跡石垣復旧工事」によると、工事ではまず崩落した石をクレーンで移動して一つ一つ番号を振って写真撮影、破損した石は新しい石材を確保して元の形に加工し、崩落前の写真などと照合しながら施工図を作成。これを基に石を仮積みした後、大きな石のすき間に「飼石」を入れて固定し、裏側に水はけをよくするための「裏込石」を敷き詰め、さらに裏込石と壁面の間を盛土で突き固めるのだという。

専門的なことは分からないが、大変な作業で、大型重機など近代機器を活用するとしても、最後は専門技術、知識を持った石工の技が欠かせない。このあたりについて河田所長は「破損した石の代わりは地元で調達できるが、石を加工し積み直す専門的な職人さんを確保するのは容易ではない。全体の修復が終わるのは10年、20年、あるいはそれ以上先になるかもしれない」と語っている。

熊本市は文化庁とも協議の上、この夏にも、修復に向けた大筋のロードマップをまとめる考えという。まずは、その内容に注目したい。(了)

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