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ヘリマネ狂想曲と日銀の追加緩和期待

 黒田日銀総裁は24日、中国・成都で開かれた20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の終了後に会見し、28、29日に開く金融政策決定会合では物価2%目標の早期達成の観点から金融政策を適切に判断すると語った(ロイター)。

 29日には6月の全国消費者物価指数の発表も予定されており、生鮮食料品を除くコア指数の前年比は5月のマイナス0.4%からさらに悪化しマイナス0.5%あたりの予想となっている。いずれにしても物価目標(こちらは全国消費者物価指数の総合)の2%からは大きく乖離していることは確かである。

 日銀は29日に公表する展望レポートで物価見通しを下方修正するとみられており、物価目標達成時期もさらに先延ばししてくる可能性がある。このため市場では物価2%目標の早期達成の観点から、日銀は追加緩和を検討するのではないかとの見方が強い。ブルームバーグがエコノミスト41人を対象に15~22日に実施した調査では、日銀が28、29日の会合で追加緩和を行うとの予想が32人(78%)と圧倒的多数を占めたそうである。

 上記の中国・成都での黒田総裁の発言には続きがあり、「ヘリコプターマネー」について「G20の中では、ヘリコプターマネーという言葉もヘリコプターマネーらしきことも全く議論はなかった」と発言していた。これは記者が「ヘリコプターマネー」の質問を振っての答えかと思われるが、常識としてヘリマネが追加緩和の手段としてG20で議論されるようなことは考えられない。それにも関わらずなぜ、日本の市場ではヘリマネ期待論が出ていたのか。

 この背景にはいわゆるアベノミクスの推進者ともいえた現スイス大使で前内閣官房参与であった本田悦郎氏などが絡んでいたとみられる。学者時代はヘリコプターマネーの推進者でもあったバーナンキ前FRB議長を日銀総裁や安倍首相と引き合わせることにより、ヘリマネがいかにも現実性があるように演出していた。これはある意味、アベノミクスの大きな柱である大胆な金融政策の限界を示すものとなる。リフレ政策を打ち出しても物価は上がらないとなれば、究極のリフレ政策であるヘリマネ導入を持ちかけた。ところが政府も日銀も過去の歴史を振り返り、さすがにヘリマネ導入に向けて動くことはなかった。

 それならばヘリマネは無理としても何かしらの追加緩和を日銀は検討せざるを得ないというのが市場参加者のコンセンサスであるのあろうか。これについてもやや疑問を呈せざるを得ない。やっても無駄だと言いながら、しかもやってもやらなくても円高になるとの予想をしながら、追加緩和すべきという意味が良くわからない。しかもあれだけ大胆な緩和をしながら物価が上がらないという現実を直視すれば、追加緩和に何の意味があるというのであろうか。まずはその異次元緩和の効果について総括をするべき時期に来ているのではなかろうか。

 英国のEU離脱により金融市場がパニックに陥るなどの非常時であれば、市場を落ち着かせる意味でも何かしら手を打つことも必要であろう。しかし、そのような市場の混乱は一時的であり、当事国の英国のイングランド銀行もECBも金融政策は現状維持とした。それにも関わらず日銀がこのタイミングで追加緩和をする必要性はないはずである。

 期待先行方ともいえるような今回の日銀の追加緩和期待ではあるが、これはサプライズを重視していたことによる黒田総裁と市場の対話がうまくいっていないことの現れでもあるのかもしれない。日銀はある意味いろいろと追い詰められている。市場はさらにその日銀を追い詰めることにより、むしろ今回の日銀の異次元緩和の矛盾をさらけ出そうとの意図もはたらいているのではないかとも勘ぐりたくなる。

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