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"3分の2狂騒"に動揺する民進党 - 關田伸雄

7月10日投開票の参院選は大方の予想通り、自民党が6議席増、公明党が5議席増となる与党の大勝に終わった。

野党第1党の民進党は2013年の前回改選時に旧民主党が得た17議席を上回る32議席を獲得したものの、改選議席(43議席)を維持することはできなかった。

投開票日翌日の新聞各紙は「改憲勢力」が憲法改正の発議に必要な「3分の2」を勝ち取ったことを大々的に報じた。憲法改正に積極的な産経新聞は改憲を促す立場から、否定的な朝日新聞、毎日新聞などは警鐘を鳴らす意味での「3分の2」報道だった。

それぞれの立ち位置からの大騒ぎ。「狂騒」といってもいい。

◆公明党を「改憲勢力」と位置付けるごまかし

民進党をはじめ野党側が「3分の2阻止」を選挙スローガンに掲げたことが影響しているのは事実だが、その分を差し引いても、あまりに単純かつ不正確であり、読者には不親切な表現といえる。

現行憲法の基本を踏まえたうえでの「加憲」を提唱している公明党を参院選中の野党側の批判に合わせる形で「改憲勢力」と位置付けているためだ。

確かに、与党である公明党は憲法改正それ自体を否定しているわけではない。とはいえ、「平和の党」を自任してきた歴史的な経緯もあって、戦争放棄と戦力の不保持、交戦権の否認をうたった第9条の改正については否定的な意見が根強い。

機関紙「公明新聞」に7月13日付で掲載されたインタビューで、山口那津男代表は「国民が一番心配しているのは9条ですが、自民党執行部の発言や示された考え方を踏まえても、与党がすぐに改正を進めるということはあり得ません」と重ねて消極姿勢を示している。

こうした狂騒を受けて、ニュースキャスターの辛坊治郎氏は7月15日発行(16日付)夕刊フジのコラムで、憲法改正の必要性を認めつつも、参院選結果についての新聞報道については「結局、一部メディアが大見出しで伝えた『衆参改憲発議可能に』という報道は限りなく誤報に近かったのです」と一刀両断した。辛坊氏のような受け止めが、恣意を含まない、一般的な見方だろう。

在任中の憲法改正に意欲を示してきた安倍晋三首相も、9条改正に消極的な公明党の実情は十分に理解している。

7月11日の記者会見で「未来のために、どの条文をどう変えるべきか。(衆参の)憲法審査会でまずは真剣に議論していくべきではないか。議論が進み、成熟し、収斂していくことが期待される」と述べるにとどめたのも、公明党への配慮といえる。自民党内も、一部議員を除いて、憲法改正に突き進む雰囲気にはなっていない。

◆阻止失敗によって民進党内で不満が噴出

安倍自民党とは逆に、「3分の2狂騒」に動揺しているのが、岡田民進党だ。

参院選で、民進党は、日米安保を党綱領で否定する共産党などとともに、安全保障関連法を「憲法違反」と決めつけて廃止を訴えた。

岡田克也代表は一貫して「立憲主義を理解しない安倍首相の下では憲法改正の論議はできない」と繰り返してきた。山尾志桜里政調会長も7月11日、記者団に「選挙結果をもって国民が自民党による憲法改正に賛成したことにはならない」と述べ、強気の姿勢を崩さなかった。

共産、社民、生活の各党と統一候補を擁立した32の改選1人区のうち11選挙区で勝利したことを「反転攻勢の1歩目は踏み出せた」(枝野幸男幹事長)と受け止めているためだ。

しかし、正面に掲げた「3分の2阻止」が失敗に終わったことによって、政策だけでなく政治理念にも大きな隔たりのある共産党との「野合」に批判的だった党内の「良識派」からは不満が続出している。

その1人と目される長島昭久元防衛副大臣は7月11日、記者団に「これから参院選の総括が行われる。私たちも意見を言いながら、民進党が単なる万年野党ではなく、『政権準備政党』として独立独歩できる政党になるよう力を尽くしたい」と述べた。

民共共闘への厳しい批判・反省であり、9月に予定される岡田氏の任期満了に伴う党代表選についても「党再生の議論をしっかり深めた中で、自ずと(対応は)決まってくる」と対立候補擁立の可能性を否定しなかった。

参院選の結果とこうした党内情勢を受けて、岡田氏は7月14日の記者会見で、「憲法改正、あるいは(改正の)議論そのものを一切しないと言っているわけではない」と前言を撤回した。

◆どう総括? 党綱領、基本政策無視の「野合」

岡田氏の前言撤回の裏側には、代表選に向けた「良識派」への配慮が潜んでいそうだ。

民進党は、憲法改正について、党綱領で「象徴天皇制のもと、新しい人権、統治機構改革など時代の変化に対応した未来志向の憲法を国民とともに構想する」と規定し、基本政策でも「幅広い国民参加により、真の立憲主義を確立する」としたうえで、「日本国憲法の掲げる『国民主権、基本的人権の尊重、平和主義』の基本精神を具現化するため、地方自治など時代の変化に対応した必要な条文の改正を目指す」と明記している。

安全保障をめぐっても、党綱領では「専守防衛を前提に外交安全保障における現実主義を貫く。我が国周辺の安全保障環境を直視し、自衛力を着実に整備して国民の生命・財産、領土・領海・領空を守る。日米同盟を深化させ、アジアや太平洋地域との共生を実現する」とうたい、基本政策でも「日米同盟を深化させるとともに、アジア太平洋地域との共生を実現し、国際社会の平和と繁栄に貢献する。安全保障については、立憲主義と専守防衛を前提に、現実主義を貫く」としている。

これだけを見ても、参院選後まで岡田氏が憲法改正に関する前言を撤回しないでいられた方がおかしいと理解できよう。

日米安保の即時廃棄と自衛隊の解消、「君主制廃止」を目標に掲げつつ、当面は「現行憲法の完全な順守」を唱える共産党との「野合」も、党綱領、基本政策に反するものだと断言できる。

岡田民進党は参院選の結果をどう総括するのか。そのうえで、どういう政治を目指していくのかを明確にすべきだ。

反省と責任を曖昧にしたままでは、未来永劫、民進党に政権への展望は開けない。

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