- 2016年07月24日 10:14
マイルドヤンキーとワンピースにはついていけない
■マイルドヤンキー的な価値観についていけない
昨日ポケモンGOネタで当欄を更新したばかりなのであるが(ポケモンGO!で、ひきこもりはスマホ購入へGO!)、昨日今日と横浜出張で、新幹線マニアな僕はあえてこだまやひかりに乗って楽しむため車内でやることもなく、以前から考えていた『ワンピース』とマイルドヤンキーについて綴ってみることにした。
ちなみに今は横浜からの帰りの新幹線こだま内、ガラガラの1号車先頭の座席で、先頭座席のみ使用が許されるコンセントにMacBookを突っ込んで当記事を書いている(大阪まで4時間以上かかるがこれがまた楽しい)。
それはさておき、人気マンガ『ワンピース』とマイルドヤンキーは親和性があると、ホリエモンが指摘している(記事 キャリコネニュース2016年07月19日 17:47「ワンピース」の話は飲み屋ではタブー? 面白くないと口にすると「テメェは人間の心が無ぇ!」とファン激怒)。
上の記事内に、以下のようなホリエモンのツィートが引用されている。
「仲間さえ無事なら大丈夫的なマイルドヤンキー的な価値観についていけない」
さすが世の動きに敏感なホリエモン、友情・努力・勝利の権化といってもいい『ワンピース』と、仲間内での信頼感を最重要価値にするマイルドヤンキーとの共通価値を指摘している。
これに加えて少し前の僕の記事でも触れたのだが(甲子園があるかぎりマイルドヤンキーは滅亡しない)、マイルドヤンキーは以下のような「貧困文化」の一部でもある。
EXILEが好き、
地元(家から半径5km)から出たくない、
「絆」「家族」「仲間」という言葉が好き、
生まれ育った地元指向が非常に強い、
内向的で、上昇指向が低い(非常に保守的)
低学歴で低収入、
できちゃった結婚比率も高く、子供にキラキラネームをつける傾向、
喫煙率や飲酒率が高い、
(以上はウィキペディアのマイルドヤンキー項より引用・抜粋)
エグザイルやイオンに加えて、重要な文化資本的な要素として『ワンピース』がどうやらあり、マイルドヤンキーが先かワンピースが先かはわからないが、それぞれが「仲間・友情」価値を補強し合い、彼ら彼女らの最重要価値になっている。
■人間は裏切る
ところで、人間は裏切る。
『ルパン三世』の峰不二子や『エヴァンゲリオン』のカジくんのようなアニメ世界のキャラだけではなく、実社会の人間たちは普通に嘘をつき、周囲を騙し、裏切っていく。
裏切りと嘘は、ドストエフスキーの登場人物たちやアメリカ映画『スティング』にだけに出てくる現象ではなく、世の中でゴロゴロ毎日生産されている。
それは当然ヤクザ社会だけの現象でもなく、普通の会社や普通の学校(クラス)や普通のバイト仲間や古くからの友情関係のになかでも日常的に繰り広げられる光景だ。
当然、僕もよく嘘をつく。また、人々を裏切ることも時々ある。
その裏切りは、別の面から見るとライフステージの新段階だったり、あえて裏切り摩擦を起こすことで停滞した局面を切り開く戦術だったりする。
峰不二子ちゃんもカジくんも、ピョートル・ヴェルホーベンスキー(『悪霊』)もポール・ニューマン(『スティング』)も、あえて嘘をつき騙し、一時的に周囲の信頼をあえてなくす行動をとり、仲間たちから見放される。
当然僕も(そしてあなたも)、このような裏切りと嘘によって他者を巻き込み、時には他者から嘘をつかれ裏切られ、ぐちゃぐちゃの人間関係へと巻き込まれていく。
イギリス映画の名作『秘密と嘘』にも描かれたように、秘密と嘘を前提とするから人間は深く暗く時には明るく陽気で、それらすべてがからまりあってこその「C'est la vie.(これが人生、ラビー)」なのだ。
■峰不二子ちゃんやルパン、カジくんとミサトさん
マイルドヤンキーや『ワンピース』は、いや、友情・努力・勝利の(貧困も含めた)若者文化は、このような「裏切りの豊穣さ」を悪いもの、倫理的に間違ったものとして否定する。
これは窮屈だ。
なぜなら、現実のマイルドヤンキーたち、あるいは貧困若者たち、いや若者たち全般の日々の人生には、普通に嘘と裏切りが存在するからだ。
実際に横行する嘘と裏切りを「悪いもの」として否定し、友情と仲間との信頼を絶対善として理想化する。
これは実は、現実の自分たちの生(la vie)を否定する行為でもある。
裏切りや嘘を含む日々の豊穣な生活を肯定せずありえない理想(友情の絶対善化)を善として根拠化するこうした心理操作は、ニーチェも指摘する「ルサンチマン」の一部である。
まあそんな哲学議論はさておき、以上のような理由でマイルドヤンキーと『ワンピース』は、僕にとってはかなり窮屈なんですね。
峰不二子ちゃんやルパン、カジくんとミサトさん、彼女ら彼らの関係性は、単純な「仲間」や「恋人」などでは決してない。裏切られながらも信頼し、時には騙しながらも時々頼る。これが人間関係というものであり、僕が若者たちに知ってほしい「人間のおもしろさ」だ。
マイルドヤンキーや『ワンピース』は、その人間の深さを伝えることを微妙に邪魔する。★
※Yahoo!ニュースからの転載