- 2016年07月22日 16:06
ポケモンGO騒動拡大「原発はピカチュウを探す場所ではない」 クリントンを喜ばせ米国の電力会社をパニックにさせる - 山本隆三
最近のニュースでよく取り上げられている”Pokemon Go”(ポケモンゴー)は、アプリが世界で最初にリリースされた米国、豪州では社会現象になり、米国は無論のこと英国、日本でも関係する任天堂の株価を大きく上昇させた。スマートフォンで操作するポケットモンスター(ポケモン)を探し、育てるゲームだが、「現実と仮想世界を旅するゲーム」と製作者が称しているように、ポケモンが現れる場所は、実際にある地点になる。ピカチュウなどのポケモンのキャラクターが、現実の場所に行けばスマートフォン上に登場する点で、多くの人が熱狂したのだろう。
大統領選では、クリントン陣営が、多くの人がポケモンを探し特定の場所に集まる点に注目し、早速投票呼びかけに利用し始めた。トランプ陣営も負けていない。クリントンをキャラクターに据えやつけるポケモンGOに似せたゲーム「ひねくれものクリントンにノー」を作り7月14日にフェースブックで公開した。クリントンらしき人物に対しポケボールを投げ、消すゲームだ。
選挙のキャンペーンに利用される程度であれば良いのだが、ゲームをする人がスマートフォンを持ち家の外に出ていくことから、事故あるいは犯罪に巻き込まれるなどの問題も出てきた。問題は、米国の発電所、送変電設備などでも発生している。
社会現象になったポケモンGO
「現実と仮想世界とを旅するゲーム」として米国では7月6日にリリースされたが、3日後の7月8日の時点ではアンドロイドでの利用者数がツイッターに迫る勢いになり、平均利用時間は43分23秒と他のよく使われるアプリを超える利用になったと米国のシミラーウェブ社は伝えている。欧米ではラインよりも大きなシェアを持つメッセンジャーアプリ・ワッツアップの利用が30分27秒、写真共有アプリのインスタグラムが25分16秒だ。
米国でのダウンロード数は5日間で750万に達したと報道され、リリース後初の週末になった7月9日、10日はポケモンを探し街中を徘徊する人が多く現れ社会現象になった。投稿された写真と動画を見ると、ニューヨーク・セントラルパークの一角にはラッシュ時の駅の構内のように人が集まっている。米国に留まらず、米国、ニュージーランドと共に最初にリリースされた豪州ではリリース後最初の週末、観光名所オペラハウスの前がゲームする人で埋め尽くされる写真が投稿された。
7月6日の3カ国に続き、13日にドイツ、14日英国、15日イタリア、スペイン、ポルトガル、16日にオランダ、オーストリアなど欧州中心の26カ国、17日にカナダでリリースされている。
アダルトショップでも戦場でもポケモンGO
ワシントンDCにある米国ホロコースト記念博物館のなかにゲームのアイテムを入手できるポケストップが数箇所設定されたために、館内でゲームを行う入館者が現れ、館内でのゲーム禁止を博物館が要請することになった。プリマスでは数十人がポケモン・ジグリーパフを探し、アダルトショップに入ったと報道されている。
7月14日の公式リリース前に、英国ではスマートフォンを調整し、ダウンロードする人があとを絶たないと報道されていた。まだリリースされていないイラク北部の都市モスルでイスラム国と戦う米国の志願兵は戦場の自動小銃前に現れたポケモン・スクアートルの写真とともに「最初のポケモンを捕まえたぞ。イスラム国よ、ポケモンでの戦いに挑戦してきな」と投稿している。
人が特定の場所に集まることから、クリントン陣営が大統領選に利用することを考えた。米国では大統領選に投票するためには、選挙人名簿に自ら登録する必要がある。ゲームをしている人に選挙人名簿に登録させ、クリントンに投票させようと考えたのだ。
大統領選でもポケモンGO
7月16日付のウォールストリートジャーナル紙は、大統領選でクリントン陣営がポケモンGOを投票活動に利用していると報じている。ポケモンが登場する場所に運動員も行き、集まっている人にクリントンへの投票を呼びかけ、選挙人名簿に登録させる作戦だ。米国大統領選では激戦になると言われるオハイオ州とコロラド州でクリントン陣営の運動員が活動していると報道されている。クリントン陣営は、アプリで購入あるいは獲得できるモジュールも用意しポケモンを更に作り出し、ゲームをする人を集め、支持と登録を呼びかけている。
ちなみに、オハイオ州は民主党、共和党が拮抗しており、この州で勝利することが極めて重要とされている。1904年の大統領選以降28回の大統領選でオハイオ州の勝者が26回大統領になっている。アブラハム・リンカーン以降オハイオ州で負けて大統領になった共和党候補者はいない。共和党が党大会をオハイオ州クリーブランドで開催した今年も、現時点ではクリントンとトランプが拮抗する激戦州だ。
ポケモンは大統領選で利用されるだけでなく、犯罪者にも早速利用されている。
犯罪者もポケモンGO
オハイオ州ハイウエイー警察は7月11日に写真-1の通り「ポケモンGOで遊ばないで、運転して。ポケモンを捕まえたいのは知っているけど、安全に」とツイートしている。
画像を見るまた、ポケモンGOにはGPS機能が必要だが、警察は次の警告を出している「GPS経由位置情報を共有するので、犯罪の次の被害者に簡単になる可能性をわかって欲しい。ゲームは無邪気だが、今日の犯罪者は次の被害者を見つけるために、そういう情報を利用する。犯罪者は情報を利用し、不審と思われない場所にあなたをおびき出す。何を情報として出すのか気をつけるべき。あなたがポケモンGOで遊んでいると家にはいないと犯罪者は知ることになる。食事の写真を公開すると家にはいないことになる。休暇を楽しんでいると皆に教えると家にはいないことが分かる」。
7月10日には、ミズーリ州の警察が、ポケストップに7、8名がおびき出され、武器を持った複数の強盗に襲われたと発表した。事故、犯罪を誘発する可能性もあるポケモンGOだが、ポケモンGOの151のポケモンは水、電気などのタイプがあり、その属性に関係したところに現れやすいとされている。水のタイプのポケモンであれば、水辺に現れやすいとされ、探していたプレイヤーが水死体を発見することも起こった。電気のタイプのピカチュウなどは電気に関連する場所の近くに現れることになる。電力会社はパニックになっている。
原発でポケモンGO
電気の属性を持つピカチュウなどのポケモンを探すプレイヤーが、発電所、変電所、送電線の近くに現れる可能性が高いことから、米国とカナダの電力会社はパニックのように警告を発している。
ツイートで警告を出したアメリカン・エレクトリック・パワーによると、発電所の近くにプレイヤーが現れ、ピカチュウを捕まえられないかとのやり取りがあったという。一夜にして巨大な規模のゲームに育ってしまったので、電力設備がいかに危険で近寄ってはいけないものか早急に広めたいと同社は望んでいる。
米国最大の電力会社デュークエナジーは「ポケモンGOで遊ぶ時には回りに気をつけて。発電設備、変電設備から離れて」とツイートしている。エンタージも同様のツイートを行っている。カスカウンティー・エレクトリックのツイートは写真-2の通り、「変電所には絶対に立ち入るな。信用しろ。サンダー(Zapdos)はそこにはいない。チェック済みだ」と明確だ。
画像を見る写真-2
オハイオ州エリー湖畔に建つファーストエナジーのペリー原子力発電所に10代の3人がポケモンを探し、不法侵入したと報道されたが、7月19日に米国原子力規制委員会は、「ペリー発電所の従業員用駐車場に不法侵入した3名が警備員に捕まった。原発は米国で最も警備が厳しい場所であり、警備員は拳銃を持ち、原発を守るために使用することが認められている。原発はピカチュウを探す場ではない」と「ポケモンGO原発には行くな」とのタイトルのブログで厳しく警告している。
やがて日本でもリリースされることになるが、日本でも事故、犯罪などが発生しないことを祈るのみだ。
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