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「インターンシップが若者を救う」論を駁す③ 欧米のエリート・インターンシップは年収600万円!? - 海老原嗣生

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究極の青田買いとしてのエリートインターンシップ

では、欧米企業はなぜこんなに長期間、実習生を受け入れるのか。

欧米の企業は日本の企業より社会的責任を重視するから、なんてキレイごとでは語れない厳しい現実がある。

実習生を受け入れるのには、2つの大きな実利目的が存在しているのだ。

その一つが、「希少人材(エリート)の早期獲得(青田買い)」だ。詳しく説明することにしよう。

たとえばフランスの場合、企業は総人件費の0.6%を「見習い訓練税」として納付しなければならない。この税金をもとに、政府は前述の公的見習い訓練など、若年雇用対策を行う。

ただし、この税にはいくつか抜け道があり、企業は自社に有利になるようにそれを利用する。たとえば、大手企業の多くが選ぶのが、地方毎の商工会が母体となる受け皿機関に見習い訓練税を支払う方法だ。こうした商工会が一方では名門グランゼコールを運営しており、企業が支払った訓練税が、それら名門グランゼコールに通う学生たちへの、自社研修付き奨学金(アプロンティサージュ型インターンシップ※)として活用される。

結果、企業は有名グランゼコール生を2年次から自社にて囲いこむことが可能になる。その際の学費はすべて企業持ち、そのうえ生活費相当の給与まで支払われる、という。

※アプロンティサージュとは本来見習い訓練のことを呼ぶ。公的機関が運営する1~3年の見習い訓練(CFA)などをさす場合が多いが、グランゼコールの給付つきインターンは、見習い訓練税を原資とするため、こちらもアプロンティサージュと呼ばれる。

恐ろしいほどのインターン格差

ちなみに、フランスのグランゼコールの学費は年間400万円程度が相場だ。これに生活費をプラスして支給すると、企業負担は年間500~600万円にもなるだろう。そこまでしても採る。それが希少人材(エリート)の青田買いなのであり、そしてこれは究極の「内定拘束」にもなる。なぜなら、アプロンティサージュは1~2年にも及ぶのだ。その間、他の会社で職業訓練を受けることなどできないのだから、自社への入社確率が高まる。

上位グランゼコールともなると、完全な売り手市場で、こうしたアプロンティサージュ経由の実習生が確保できなかった場合、企業は、通常のインターンシップ(フランスではスタージュという)にて、超高給で学生にアタックをかける。こちらもプログラムの多くは半年以上の長期にわたる。

その実情を、私が編集長を勤める雑誌HRmicsの21号より、抜粋してみる。

フランスの商科系グランゼコールで3位と位置付けられるエセック校の例で見てみよう。

「このスタージュは、アプロンティサージュのように学生の学費までを企業が負担したりはしないが、時給で20~30ユーロ(1€130円で「2600~3900円」程度)にはなる。(中略)それでもスタージュの申し込みは年間1万5000件もある。1学年400人(編注、3年次の編入前)からすれば、完全な売り手市場だ。」(大森順子氏/エセック経済商科大学院大学日本連絡事務所代表、私が編集長を務める雑誌HRmicsVol21,27P)。

詳しく説明すると、エセックはフランスで商科系3位と書いたが、1学年の人数は600名。ただ、途中編入が200名を超え(彼らは本物のエリート扱いされない)るので、1年から通しで在籍者はたった400名である。日本の上位私立大学のように学年定員が万に迫るような世界とは異なる、超精鋭なのだ。

企業はこの400名がほしいのだ。だから、エリート予備軍にはここまでの「青田買い」が行われている。その手段が、インターンシップなのだ。

「欧米ではインターンシップが普及している」という時に語られる一方の世界は、こんなものなのだ。とても日本に持ち込める話ではないだろう。

次回は続いて、一般的な学生のインターンシップについて書く。

海老原嗣生
株式会社ニッチモ代表取締役。立命館大学経営学部客員教授、経済産業研究所雇用市場改革プロジェクト、リクルートキャリアフェロー、奈良県行革推進ワークマネジメント部会長。

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