- 2016年07月21日 15:43
ローンウルフ型テロに頼るIS - 岡崎研究所
ISはジハードのために一匹狼を使うやり方に変化をもたらしている。アルカイダはシンパを自己の正統性を確立するものとしていたが、ISは軍事作戦の要員とみなしている。
ISのメディア担当部局アマックは、オマル・マティーンによるフロリダでの乱射・大量射殺事件へのISの責任を認めた。米当局は、マティーンはISの名前を使っているが、ISの工作員ではないと信じている。アマックはまたパリ近郊での警官とその妻の殺害の犯行の責任を認めた。メディアは犯人をIS「戦闘員」としている。
ラマダンを「災難の月」に
ISのスポークスマン、アドナニはシンパに対してラマダン期間中に居住国で攻撃を行うようにとの演説をした。2015年6月にも彼はラマダンを「災難の月」とするように呼びかけた。
マティーンは警察に電話でISへの忠誠を通告した。2015年12月のサンバーナーディーノの犯人もフェイスブックでIS支持を表明していた。アルカイダはシンパの存在それ自体を自分のプロジェクトの正統性の証左と評価していた。ISはアルカイダとは異なり、シンパをその軍隊への兵士候補と見ている。
シリアのアルカイダ支部、ヌスラ戦線はジハード・シンパによる小規模攻撃は逆効果で、西側でのムスリムを傷つけ、西側の当局の思うつぼになっているとしている。文民の被害についても、アルカイダはホテルや大使館など目立つ対象を攻撃し、その際の文民被害をそれに付随するやむを得ざるものとして宗教的に正当化していたが、ISは文民そのものを攻撃対象にしている。アドナニは5月に、西側諸国には「無辜の民」などおらず、「十字軍の敵国」には血の神聖はない、文民攻撃はより効果がある、と言っている。
将来、一匹狼攻撃はISの海外戦略の中心になるだろう。ISがシンパにジハード参加を奨励するに従い、一匹狼攻撃はもっと多くなるだろう。
出 典:Hassan Hassan ‘IS rallies lone wolves to the jihadi cause’ (Financial Times, June 14, 2016)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/f7c31bda-3216-11e6-bda0-04585c31b153.html#axzz4Bbhn9VcQ
フロリダの乱射事件は、51名が死亡するという大惨事になりました。犯人が警察にISへの忠誠心を通告し、IS側も犯行声明を出したので、ISの犯行ということになっていますが、警察は、犯人はISの訓練された工作員ではなかったとしています。犯人は死んでいますから、ISからの特定の命令の実施として、この大量殺害が行われたのか否か、捜査ではっきりさせるのは困難でしょうが、現段階では、ISのシンパが勝手に起こした犯行とみるのが適切でしょう。
ソフトターゲット狙いの犯行
この論説は、ISがシンパにこういう攻撃を奨励しているから、今後増えると警告しています。適切な警告ですが、テロ対策の観点からは問題がより難しくなること、文民攻撃のようなソフトターゲット狙いの犯行が多くなることを覚悟せざるを得ません。
アルカイダというのは、組織的にオサマ・ビン・ラディンに忠誠を誓った人を中心とし、テロの実行においても、組織だったところがありました。一匹狼のようなものをテロに使うのは、コントロールができず、情報も漏れやすいという考慮から、躊躇し、差し控えていたように思われます。ISは、一匹狼の犯行を奨励し、後付けで自分の犯行とするところがあります。これが本当の意味で、ISの犯行と考えられるのかどうか疑問でもあります。
「9・11」の事件の犯人はアルカイダが選別し、派遣した人でした。海外テロ実施能力は、かつてのアルカイダの方が高く、いまのISには、一匹狼に頼らざるをえない能力しかないとも考えられます。
この論説の著者、ハッサンは、アルカイダとISをはっきり対比するために違いを強調していますが、少し行き過ぎがあります。オサマ・ビン・ラディンも、米国人は税金を払って、イスラム諸国を侵略している米政府を支援している以上、攻撃対象になりうるとの見解であり、文民の死者を残念な付随損害と考えていたわけではありません。
なお、テロ事件が起きますと、イスラム教徒入国問題で、米大統領選挙に影響が出ます。11月の米大統領選挙に近接した時点でテロが起きますと、米国民が恐怖にかられ、冷静な判断ができなくなる恐れがあります。
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