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世界で進む“大分裂” メディアやリーダーに立ちはだかる難問

 参議院選挙が終わった。

 与党、特に自民党の底堅さが顕著に出た結果となり、事後の入党者も含めると、非改選の議席と合わせて、自民党は約27年ぶりに参院で単独過半数を得た。おおさか維新なども含む改憲勢力として、参院の3分の2超の議席を確保し、衆院での圧倒的議席数も踏まえると、憲法改正の発議が可能な議席数に達した。

 ただ、私もそうだが、多くの人が野党の意外な健闘に驚いてもいる。東北6県では野党が5勝1敗となり、安倍総理が直接に遊説に回った10の重点選挙区では、与党が1勝9敗という惨状だった。自公vs民共などといわれ、自衛隊などを否定している共産党と組んだ民進党は、直前に党名を変更したというビハインドもあって、もっと惨敗すると思われたが、案外、底堅い支持が得られたともいえる。

 乱暴に大別すれば、金融(+財政)政策中心に、マクロ目線で、特に大企業の業績を上げることに熱心な与党を支持する人たちと、むしろそうした態度に反感を持ち、より、個別の弱者への目線や、彼らへの「分配」に関心を有する人たち(結果として民進党や共産党を支持)との間で分裂が起こり始めているのかもしれない。イコールではないが、前者に改憲勢力、後者に護憲勢力を重ねて見ることもおおむね可能であろう。

 このように、今回の選挙結果を総括して、わが国における民意の大きな分裂の兆しを見るのは、大げさだろうか。

参院選の投開票日の約2週間前に、世界に衝撃を与えたイギリスの欧州連合(EU)離脱をめぐる国民投票では、大分裂の末、僅差で離脱派が勝利をおさめた。世代間の分裂(若い世代ほど残留を支持)、地域間の分裂(スコットランドなどは残留を支持)、所得階層間の分裂(高所得者ほど残留を支持)という、主に3つの分裂がクローズアップされているが、わが国以上に、分極化が明らかになっていることは間違いない。

 11月の投開票を控え、佳境を迎えつつある米国の大統領選挙でも、当初は泡沫(ほうまつ)候補とされていた極右ともいうべきドナルド・トランプ氏が共和党候補としての指名を勝ち取った。一方、民主党の候補選定では、圧勝するとみられたヒラリー・クリントン氏が、彼女より年上で左翼思想に近いバーニー・サンダース氏に予想外の大健闘を許してしまうという現象が起こった。大きな図式として、極右と極左が共に健闘するという一見不思議な分裂状況が発生している。

 こうして、わが国や世界を概観すると、いわゆる「分極化」(polarization)は、避けがたい傾向であるのかもしれない。定式化すると、(1)主に経済力という意味での国力の衰退と将来への悲観が蔓延(まんえん)→(2)困難な状況をなかなか解決できない政治への不信と絶望→(3)不安定な世論と極端な解決策(極右的/極左的)への過度な期待-という流れになるのではないか。

 さらにまずいことには、ネットメディアの興隆と人工知能(AI)によるコンテンツの仕分けにより、多くの人が、見たいニュースや論考しか見ないという状況が事態を悪化させつつある。

一覧性の高い旧来的な紙媒体の新聞や雑誌であれば、それら媒体自体にイデオロギー的色彩が多少あるにせよ、「中立たらん」というギリギリの良心に基づいて記載された色々なニュースやさまざまなオピニオンが目に飛び込む。一方で、スマホの小さな画面には、閲覧者の好みに合わせてAIが配信する「見たいニュースや論考」しか映らなくなりつつある。こうなると自説の先鋭化、ひいては上記のような分極化に拍車がかかり、両極がますます互いにいがみ合うことは間違いない。

 古くて新しい形の民主主義の危機に際して、われわれはどういうリーダーを育成すべきなのか、かなりの難問が既に立ちはだかり始めている。

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