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仏ニースのトラック突入事件が示す「インスタント・テロリスト」の脅威:テロリストの五分類

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インスタント・テロリストの脅威

今回の事件を振り返ると、ISとの関連は指摘されているものの、「4月からモスクに行っていた」という証言にあるように、控えめに言ってもラフエジブフレル容疑者のそれは「にわか仕立て」の信仰心や信念だったといえます。先述のように、メンタル面での問題や対人関係のトラブルを背景に、ラフエジブフレル容疑者は過激なイスラーム思想に「引っかかった」とみてよいでしょうが、そうだとすると深い確信があったとはいえません。

また、犠牲者の数は多いですが、犯行そのものは2008年の秋葉原通り魔事件など、日本でしばしば発生する「通り魔」に近いもので、逃走を計画していた様子もうかがえません。少なくとも、プロフェッショナルのものからは程遠いと言わざるを得ず、いわば警察と打ち合って人生を清算することを目的に、大型トラックで人ごみに突っ込んだとしかみえません

こうしてみたとき、今回の事件のラフエジブフレル容疑者は「インスタント・テロリスト」の典型例といえるでしょう。そして、今回の事件によって、次の「インスタント・テロリスト」が出てくることが懸念されます

ここで「インスタント・テロリスト」と呼ぶ、精神疾患などを抱えるタイプは、確信犯的なプロフェッショナル型などと比べて、大きな脅威とみられてきませんでした。しかし、どこの国でもストレスフルな状況が広がるなか、メンタル面での問題を抱える人は、増えこそすれ、減ることは想定できません。一方で、こうした人々の精神状態を左右しかねない過激な説法や憤りを覚えるニュースがメディアを通じて拡散する状況も、大きく変化するとはみられません。つまり、イスラーム過激派からみて、アプローチする対象は数多くいることになります。

もちろん、「インスタント・テロリスト」の場合、突発的、衝動的にテロ事件を起こそうとしても、そのための訓練を受けたわけでもなく、手段も限られています。実際、先述のカナダやオーストラリアのケースでは、関係者の努力もあって、大きな被害を出さずに済んできました。しかし、19トントラックを用いた今回の事件は、武器でないものを武器にすることで、特別な訓練を積んだテロリストがチームを作らなくても、綿密な計画を立てなくても、爆弾をいくつも用いなくても、多くの犠牲者を出すことを実証してしまいました

各国で爆弾などの武器の取り締まりが強化されるなか、「武器」でないものによる大量殺傷の一種のモデルケースができた以上、ISやアルカイダなどのイスラーム過激派が、これを使いまわそうとすることは、容易に想像されます。ニースの事件は、テロ対策をまた一段、難しくするものだったといえるでしょう。

※Yahoo!ニュースからの転載

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