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バロンズ:過去最低の利回り、株高を正当化できる成長を生むのか

Barron’s : Can Low Yield Help Economic Growth?

バロンズ誌、今週のカバーはロイヤル・ダッチ・シェルを掲げる。ブレント原油価格が2年前から半値の水準で推移するなか、キャッシュフローは配当支払いや採掘費用に必要な水準を大きく下回る。しかも、英BGグループの買収で債務が膨らむ状況。減配を懸念する投資家をよそに、設備投資の削減や資産売却を進める計画を明らかにした。一連の決断を受け、年初から原油先物が28%上昇するに合わせ株価も24%上昇中。配当利回りはエクソン・モービルの2倍に相当する6.6%を示しており、エネルギー関連の期待の星になりうる。詳細は、本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォールストリート、今週はフランスで発生したテロ事件にめげず最高値を更新した米株動向を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

米株、フランスでの事件にうろたえず—Stocks Unfazed by Attacks in France.

世界で最も美しい街で発生したテロ事件発生にも関わらず、ダウとS&P500は過去最高値を更新した。この世の春とは言えないなかでの最高値達成は、中銀の政策による過剰流動性がなせる技だ。同時に、経済減速の前兆のごとく過去最低の利回りを記録するというパラドックスを生んでいる。また所得や雇用の鈍化は、減税と歳出拡大というポピュリズム的な政策の待望論を招く。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのイーサン・ハリス氏とマイケル・ハンソン氏は、「世論の間で財政赤字への懸念が低下する一方、ポピュリズム的な圧力が高まりつつある」と指摘。日本ではアベノミクスが「やれることは何でもやる」方向へ舵を切りつつあり、欧州はBREXITの影響で景気刺激策を講じざるを得ない。

米国ではどうか。カナダのリベラル政権が公的支出拡大を公約に掲げ勝利したように、民主党のクリントン候補や共和党のトランプ候補がそれぞれ歳出拡大案を盛り込む。日本では、安倍首相が債務のマネタイゼーション(中銀が政府の資金調達を支援するため国債を取得する仕組み)の道筋をたどりつつある。BCAリサーチのピーター・ベレジン氏いわく政府債務が国内総生産(GDP)比133%のイタリアが債務の罠に陥ることを回避すべく、欧州中央銀行(ECB)も同じ轍を踏む見通しだ。ドイツも賃金と成長を押し上げるため刺激策を講じるよう説得させられるのだろうが、そのためには危機的状況が必要となるだろう。

こうした景気刺激策の最終的なゴールは、インフレの上昇だ。4%のインフレは名目成長を生み出し、実質での債務を減少させる。そのためには、ベレジン氏に言わせればヘリコプター・マネーが必要だと言う。世界の中銀がヘリコプター・マネーを実践すれば、1981年に15%だった米10年債利回りが1.36%まで低下したような35年に及ぶ利回り低下の時代が終焉するというものだ。投資家は、国債ではなく利付国債を取得すべきだろう。インフレに連動する商品先物をはじめ銀行融資、ハイイールド債、不動産投資信託、エマージング株式も注目だ。

来日した際に安倍首相と会談したバーナンキ前FRB議長、4月時点で日本に永久債の発行に言及。

米株が最高値を更新し米10年債利回りが過去最低を更新するなか、7月26〜27日に米連邦公開市場委員会(FOMC)が幕を開く。FF先物市場で利上げが織り込まれず2017年まで据え置き観測が広がる一方、経済指標は強含み始めた。アトランタ地区連銀とニューヨーク地区連銀が描く米4〜6月期GDPはそれぞれ2.4%増と2.2%増となり、1〜3月期から回復する見通しだ。9月利上げにつながるよう、文言へ変更してもおかしくはない。ただしトルコでのクーデタ—失敗が影が世界経済や金融市場の動向に影響を与えるのか、確認する必要もあるだろう。

もうひとつの名物コラム、ストリートワイズは、2009年3月から続く長期ブル相場がいつまで続くのか考察する。抄訳は、以下の通り。

長期ブル相場、再び大暴れ—The Aging Bull Market Is Raging Anew.

エンパイア・ステート・ビルディングの建設期間は410日だが、S&P500はそれを上回る14ヵ月後に漸く2015年5月の値を超え最高値を更新していった。ウォール街は7年半という史上2番目の長期ブル相場を歓迎しているが、熱狂している場合ではない。

英国民投票後の下落から8%の上昇を演じたものの、短期的に下落のサインが点灯中だ。S&P500の10セクターのうち9セクターが50日移動平均を上回って推移する。投資信託では前週、株式ファンドに110億ドルと9ヵ月ぶりの規模に及ぶ資金が流入した。指数を下押ししてきたアップルの株価すら上昇する有様だ。それもこれも、米10年債利回りが過去最低をつけ、独10年債利回りに至ってはマイナスに落ち込んだ影響が現れているのだろう。世界の債券のうち30%、1.3兆ドル相当がマイナス金利に陥っており、投資家はリターンを稼ぐため株式をはじめ不動産、エマージング株などに資金をアロケートせざるを得ない。

歴史的な低金利の状況は、果たして成長にプラスなのだろうか?ドイツ銀行によると、家計の債務は14兆ドルだが資産はその7倍ありそのうち26兆ドルがキャッシュと債券という状況だ。現在の極めて低い国債利回りであることを踏まえれば、「ネットで税金と同じで補助金ではない」と考えられる。

Fedがどういうかたちであれ、利上げ局面にあるという点にも注意したい。MKMパートナーズのマイケル・ダーダ主席エコノミストいわく、景気後退に陥った19回のうち18回が金利引き締め過程で確認されている。利上げ段階で株価上昇が見込まれるものの中央値で7%高に過ぎず、逆に下落する場合の中央値は27.8%という有様だ。利回り低下局面では企業の資金調達が容易である半面、家計は貯蓄に回す公算が大きく、長期ブル相場継続に手を叩いてはいられない。

——米株の最高値更新は、アルコアを皮切りとした決算シーズンの到来にJPモルガンなど米銀の好決算も重なった模様です。業績リセッションの終了を先取りしているのでしょう。しかし、7月FOMC声明文で9月利上げヘ向け文言が変更されれば、反応しないとも限りません。7月FOMC声明文の後に米雇用統計が上振れすれば、警戒売りに拍車がかかるケースも考えられます。利回りが徐々に上昇に転じるなかで、ドル高反転への動きも懸念材料。ECB、イングランド銀行、日本と追加緩和の期待が掛かる半面、20ヵ国財務相・中央銀行総裁会議で競争的な通貨切り下げを牽制していたほか、財政政策による成長支援を訴えていた点を留意しておくべきでしょう。

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