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ポケモンGOの成功、拡張現実の普及に弾み

By JACK NICAS and CAT ZAKRZEWSKI

 スマートフォン(スマホ)向けゲームの「ポケモンGO」が爆発的な人気を博しており、消費者を拡張現実(AR)の世界に導いている。ARはデジタルな世界と現実世界とを融合する技術。シリコンバレーの多くの企業がこの技術に賭けている。

 ARは、現実世界の視界の上にデジタルなイメージを表示する。例えば、歩道が映る画面上にポケモンのキャラクターを表示するというやり方だ。「ポケモンGO」は周囲の様子を映したスマホの画面上にデジタルなキャラクターを重ねて表示する。

 ポケモンGOの配信以前も、多くの消費者がスナップチャットの「フィルター」機能を通じてARの一種を試していた。この機能は、自撮りするときのスマホの画面上にマスクや犬の鼻などを重ねて表示する。

 他の企業もこの技術を試している。マイクロソフトは「ホロレンズ」と呼ばれるARのヘッドセットを開発している。グーグルの親会社アルファベットの「プロジェクト・タンゴ」は、スマホにセンサーとソフトウエアを追加してAR端末に変えるものだ。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、「没入感のあるARは、何十億人もの人々の生活の一部になるだろう」と話している。

 ポケモンGOの成功は、他のAR支援者たちを興奮させている。ポケモンGOは先週のリリース以降、最も多くダウンロードされているモバイル・アプリケーション(アプリ)となっている。

NYタイムズスクエアでポケモンGOで遊ぶ
NYタイムズスクエアでポケモンGOで遊ぶ
Photo: Caitlin Ochs for The Wall Street Journal


 ARを扱う新興企業、マジック・リープのロニー・アボビッツ最高経営責任者(CEO)は、経済誌「フォーチュン」の会合で、「彼らのやっていることが大好きだ。それはわれわれが構築しようとしている全く新しい未来への玄関口になると思う」と述べた。グーグルなどの企業はマジック・リープに14億ドル(約1500億円)近くを投資している。マジック・リープは600人以上の従業員を抱える企業で、ユーザーの目にイメージを投影して、デジタルな世界が現実世界と相互反応しているように見せるヘッドセットを開発している。

 同CEOによると、マジック・リープのヘッドセットを使えば、「実在の人間を見るようにポケモンを見ることができる。その際、画面を見る必要はない。小さなポケモンが周囲を走り回ったり、椅子の後ろに隠れたりといったことが可能になる。かなり印象的な体験になるだろう」という。

 ヘッドセットの「グーグル・グラス」などといったARの初期のモデルは、ユーザーの視界の中に半透明画面を据えるものだ。ARのスマホ版は、現実世界を映したスマホの画面にデジタルな物体を表示する。いくつかのハイテク企業は、頭部に取り付けるタイプのデバイスを開発している。それは、実在する物体のそばにアニメーション、(スケジュールの)リマインダーや電子メールを表示する。つまりARの進化版で、「複合現実(MR)」と呼ばれている技術だ。

 このような技術の利用には、デバイスが周辺にある現実世界を理解し、デジタルな物体を継ぎ目なく取り込んで、周囲にあるものに関する有用な情報をユーザーに提供する必要がある。例えば、ユーザーがレストランを見たら、レビューを表示するといった手法だ。

 このARの進化版は、大きな技術上の障害に直面している。この技術は周りの状況を常に把握しておくために、複数のセンサーとかなりの処理能力を必要とする。このため、初期の頭部に取り付けるタイプのデバイスは、熱くなったり、重かったりしたほか、非効率的だったり、高価だったりもした。加えて、顔にコンピューターを載せることを嫌がる人は少なくない。

 ARの幅広い応用は、ビジネスの分野で始まるかもしれない。マイクロソフトは自動車大手のボルボとともにバーチャル・ショールームの開発に取り組んでいる。それは、購入を検討している人が検討する車の機能や色を選べるようにするものだ。マイクロソフトはトリンブル・ナビゲーション社とも協力し、建築家やエンジニアがホロレンズで見られる世界に3次元(3D)の建物のモデルを取り込む技術を開発している。同社はこのほか、ビデオ通話アプリ「スカイプ」の派生バージョンの開発にも取り組んでいる。これはホログラフィックなイメージを共有しながらの協働作業を可能にするものだ。また同社は、ホロレンズを装着した人が配管や配線に関する単純な問題の解決にあたるのを、修理の専門家が遠隔で支援するといった未来を思い描いている。

 Atheer Inc.やOsterhout Design Groupといった新興企業も、医療やエンジニアリングの向けのARヘッドセットを販売している。これは作業者の視界の中に修理マニュアルを重ねて表示するといったことができる。

 マイクロソフトは今年春に、ホロレンズの開発者向けバージョンを3000ドルで販売し始めたが、消費者向けの販売予定は明らかにしていない。Osterhoutのヘッドセットは2750ドル、Atheerのヘッドセットは4000ドルで販売されている。

 「ポケモンGO」をめぐる熱狂について、ベンチャー投資家のマイク・ローゼンバーグ氏は、それがARへのさらなる投資のきっかけになる可能性もあると述べる。同氏のローゼンバーグ・ベンチャーは既にそのような投資を何件か手掛けている。

 同氏は「それはみんなをいくらか前進させるだろう」と述べた。そして、今回の「ポケモンGO」人気について、フェイスブックが2014年にオキュラスVRを20億ドルで買収した出来事に匹敵するだろうとの見方を示した。このオキュラスVR買収は、バーチャル・リアリティー(仮想現実)を手掛ける新興企業に対する一連の投資のきっかけになった。

 投資家の中には、この「ポケモンGO」ゲームの余波はもっと限定的な可能性があるとの見方を示す向きもある。このゲームが、ポケモンのキャラクターとともに育った子どもたちや若者たちにアピールしている有名ブランドに結び付いているからだという。

 例えばファースト・ラウンド・キャピタルのパートナーを務めるクリス・フラリック氏は、このゲームが「世界クラス」の知的財産に基づいている点を指摘し、ゲームの成功は「かなりユニークだと思う」と述べている。

 ARヘッドセットを開発する新興企業のMeta(メタ)は、950ドルの開発者向けキットを販売しているが、消費者向けバージョンを発売できる時期は不明だとしている。同社のライアン・パンプリン副社長(パートナーシップ担当)は、ポケモンGOが「これまで米国のニッチ(隙間)市場以外に存在しなかった(ARへの)需要を生み出している」と語った。

 同社はこの結果、自社製品の発売を前倒しするだろうか? パンプリン氏は「分からない」と述べ、こう語った。「みんなポケモンGOをやるために外に出てしまっているからね」

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