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- 2016年07月15日 00:00
知っておくべき好ましい経済発展の原則
2/2(3)景気浮上に必要な3本の推進エンジンと補助エンジン
①輸出日本は天然資源が乏しいことなどで自国内自給自足だけでは発展に限界があり、輸出入のバランスが良い貿易立国を考える必要がある。とりわけ輸出の好・不調が景気に大きく影響するので為替相場の安定も重要だ。
②民間企業設備投資
国内設備投資が活発だと、それに関連するさまざまな関連業界にも好影響を及ぼし、実体経済の発展、好景気を支える。
③個人消費
この①②が好調となれば、雇用の拡大や賃上げにも連なり、所得が増加すれば消費購買需要も増大する。 この3本の推進ロケットの点火順序と、順調な完全燃焼がないとロケットは浮上しないが、その上昇エネルギーが弱まり軌道に乱れが生じた場合、それを修正する④補助エンジンが財政出動であり、目下の日本はこの補助エンジンに頼って経済の発展や景気浮上を図ろうと懸命になっている脆弱な状態にあるが、これだけでは永続し難い異常事態の応急処置なので、出来るだけ早期に正常運転状態に戻す必要がある。
(4)景気にも好・不調の一定の循環周期が見受けられる
①短期循環(キチン波動)キチンが提唱した比較的にきちんとした周期で繰り返される波で、その周期は約4年、これが生じる要因は在庫の増減循環周期とされ調整もし易い。
②中期循環(ジュグラー波動)
ジュグラーが提唱した周期説で、周期は約10年、その発生要因は民間企業設備投資である。設備投資で建設された構造物や機械は、やがて損傷・補修・陳腐化が進み、その更新のための需要が再び周期的に生じる。
③中長期循環(クズネッツ波動)
比較的ゆっくりとぐずぐずしながら漸次陳腐化し、グラッときて補修の必要に迫られ起こる更新のための需要で、周期は約15年、発生要因は民間住宅投資、企業設備より民間住宅の方が損傷まで期間がやや長持ちする。
④長期循環(コンドラチェフの波動)
今度こそドラスチックな変革が必要とされる周期的な波動説で、長期であるが故に周期にも幅が生じるが、約40~60年周期とされ、その発生要因としては、異常気象による農作物の作況、技術革新、産業や企業寿命、大規模な戦争の勃発(大量破壊に伴う在庫調整と大量供給需要)、これらの複合説などさまざまである。
⑤超長期循環(?)
長期間の周期であるから体験例も少なく、学説としてまだ確立されていないが、周期は約100年、要因はエネルギー革命、世紀転換期の主役交代説などである。
(5)景気状態を把握・認識するための計34の指標数値
①先行指標学者により重視する項目数が異なるが、わが国の政府公表では現在、景気状況を先取りし今後を予見させる、原材料在庫、製品在庫、機械発注・輸入、機械受注などの12項目
②一致指標
実際の景況と一致して現況を認識する、鉱工業生産、エネルギーや電力消費などの12項目
③遅行指標
景況の実態を追認するような、最終需要財の在庫指数、常用雇用指数、所定外賃金指数、消費者物価指数などの10項目 以上の合計34項目である。
(6)経済・景気を左右するその他の作用
先に述べた経済に優先する政治や軍事の他に、それを左右する作用としては、人間の本能的欲望、画期的な新しい需要を生み出す新技術や製品の発明、税制、諸規制の制定や緩和、法律改定、地球の気象や自然環境の変化、天災などがある。(7)需要と供給関係と物価~インフレからデフレ経済へ
地球に棲息する全ての人間の欲求(需要)を満足させるだけの供給量が確保されて「需要=供給」であれば、その奪い合いの争いも起こらず安心・安定的に暮らせる理想的状態といえるが、需要(消費)が供給(生産)を上回り「需要>供給」の状態となれば、その奪い合いから物価が高騰して「インフレ」を招き、逆に「供給>需要」の供給過剰状態となれば、生産したものが売れ捌けず在庫の滞留負担となるので、それを換金するために値下げ販売し、消費者物価の下落となり、それが長期的に続くようなら物価破壊の「デフレーション」経済に陥り、多くの分野にマイナスの悪循環をもたらす。これまでの物質文明が進歩し続けた人類の歴史では、旺盛な需要が供給を常に上回り、如何に能率的に大量生産して需要に応え、インフレを招かないようにするかに苦慮し続け、経済学でもそれに重点が置かれたが、冷戦が終結した20世紀末になると、世界規模での需給関係が逆転し、経済・貿易競争が激化すると同時に、これまで体験した例が少ないデフレ不況の深刻化と、その解消策が問題になっている。
(8)経済活動はオールスターキャストで運営され、庶民も無縁ではない
経済社会では、企業も個人も、その影響力や貢献度の大小はあっても、全ての者がオールスターキャストで、生産・分配・消費・貯蓄や投資などのいずれかの分野に参画し、働き、稼ぎ、支出するといった活動を展開している。だから経済は、庶民には無縁で関係がない、専門家だけが関心を持てばよいというものではなく、その常識的な理解は、社会生活必須のものとえる。(9)経済・景気動向を先読みする智恵
従って事実、誰でも成長するにつれ無意識的でも、それぞれなりの体験から得た経済・景気の実態を把握し、今後の動向を予見する智恵を身につけている。例えば、友人・知人だけでなく初対面の他人であっても、面接した瞬間に、服装や持ち物、住んでいる家などからお金回りが良いかどうかを察知したり、客待ちタクシーの列、恨み節の演歌が流行るのは不況、ミニスカートは好況、黒・白・鼠色は不況、明るい暖色は好況の証などと景況判断をされたであろう。このように経済知識や景気予測などは、だれにでもできる連想ゲームのようなものだから興味深く、決して難解、無縁のものではないのだ。
(10)経済に関する一般的常識
①経済活動でもたらされる成果を評価する場合、限られた経済要素を無駄なく有効に必要な分野で使いきれたかを見る「効率性」と、その結果の富の分配が経済主体の一部だけに偏重せず公平に分配されているかを見る貧富格差など「公平性」の両面で分析する必要がある。②諸指標には、ミクロ経済で見た月々の給料や家計消費額、マクロ経済でのGDPなどお金の動きを識る「フロー」と、ある一時点の金融資産や不動産などの保有資産額、国債残高などを識る「ストック」があるが、これは企業財務の損益計算書と貸借対照表に該当し、わが国の場合、税制でもフローの追及は厳しくするが、ストックへの追及は甘く、優遇しているきらいがある。
③経済成長とは、一定期間に生み出された財貨やサービスの付加価値(企業財務の粗利益に該当)の前年同期対比の伸び率で、これがプラスだと順調な経済成長だがマイナスになる場合もある。また物価変動を加味しない名目と、加味した実質とがある。
④景気循環のメカニズムとしては、絶頂期の景気の山、頂上から下りに向かう後退期、どん底に落ち込んだ景気の谷、再び上昇に転じる景気回復期という循環がある。
⑤市場経済には、公開された取引の場に自主的意思で参加でき、その価格の相場変動をうまく利用することで差益稼ぎ(差損の場合もある)の機会を得るので、経済活動の活性化が図れるが、それには自由と同時に公明・公平さが保障され、自己責任である。この対語の経済政策計画経済では、政府主導で安定感があっても、自由さと活性化阻害となる。
以上のような観点から安倍政権と治世とその経済政策の売り物であるアベノミクスのこれまでの成果を評価すると、近年の歴代総理よりは外交にも積極的で工夫や努力をしている点は評価し得るが、アメリカ志向と追従、財界・富裕層優遇、その皺寄せ負担は社会的弱者、富の分配は上から漸次下層に浸透するであろうと言う姿勢であり、消費税の扱いなど、目先の成果焦りと、選挙での勝利のための人気取り、自己政権維持策には長けて狡猾で如才ないが、将来展望と布石を打つ対応に欠ける点は難点だ。
- 著者プロフィール
- 経済評論家・ビジネスドクター 芦屋 暁(あしや さとる)
幼少期の貧苦体験から「十分な教養があれば民族も国家も企業も個人も安泰」との信念を抱き、一生涯を人間能力の開発と日本経済・産業の発展に捧げる1本の杭になろうと決意し、都市銀行勤務を中退してフリーの経済評論家・経営コンサルタントの道に転身、大学の教鞭やマスコミ出演を経つつ、過去通算で全国約3千市町村を講演歴訪した実績を持ち現在に至る。庶民派で皮膚感覚の簡明率直な解説がモットー。
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