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民進党は(東日本)農村政党に変貌を遂げた ―日本社会を壊すTPPと荒唐無稽な農協改革を阻止する― 16.07.14

[参院選 長野地方区 杉尾秀哉編]

 1人区になって初めての参議院選挙。民進党公認の杉尾秀哉候補(元TBSニュースキャスター)でいち早く野党共闘が成立し、全国注目の中、杉尾候補(557,912票)が若林健太候補(485,642票)に72,270票の差をつけ当選した。中盤でのかなりの追い上げをかわし、1人区の民進党公認の中では第1位の得票率(52.5%)となった。野党側で1位は、山形の舟山康江(59.0%)だったことも嬉しいかぎりだ。
 投票率は前回比5.14ポイント増の62.66%と全国平均の54.70%を大幅に上回り、全国1位となった。有権者は激戦に引き込まれ、否が応でも関心が高まり、高投票率につながった。2009年の衆議院選挙は政権交代になると予想され、2位だった。これをみると長野県民は進取の精神に富んでいるのだろう。なお、前回よりの上昇幅は、同じく激戦で、田名部匡代が僅差(8052票)で勝利を収めた青森が9.06ポイントアップで、長野は第6位のアップ率だった。

<3度の安倍総理応援を撥ね除ける>
 今回は異例尽くめの選挙となった。
 まず、安倍総理が3度も長野入りした。安倍総理は政策をほとんど語らず、民共共闘をなじり続けた。そして、「落下傘より健太さん」なる珍妙なフレーズを作り、選挙戦を次元の低い戦いにしてしまった。杉尾候補はそれに動じることなく、ジャーナリストとして培った明快な語り口調で、自らの理想の日本・社会像を述べ、実現のために今後の取り組むべき政策を語った。それが有権者の胸を打ったのだろう。淡々とまじめに進めた選挙戦の勝利である。
 安倍総理がしつこく長野県にこだわった理由の一つは野党共闘の粉砕である。16選挙区で無所属の野党共闘が成立したが、自公政権が恐れるのは、いわゆる長野モデルの民進党中心の野党結集である。これが衆院選にまで拡げられると、次の衆院選で一気に政権交代に進む可能性を秘めているからである。

<人気者小泉農林部会長の応援も打ち返す>
 安倍総理だけではない。今や政界の一番の人気者、小泉進次郎農林部会長も3回長野入りしている。二つ目の理由は若林健太参議院農林水産委員長を落とすわけにはいかないからである。農林水産委員長の落選は、長野県がTPPを拒否し、その延長線上で安倍政権にもNOを突き付けたことになるからである。これを避けたいがために長野入りしていた。

<信じ難い中傷ビラにもめげず>
 私は5回の国政選挙を経験したが、一度も中傷ビラなど見たことがない。それを今回、ニュースキャスター時代のことをあげつらう見苦しい中傷ビラが長野市内でも3回も配布された。このような汚い選挙は恥ずかしい限りである。特にこの手法が露骨に使われた2区(松本市など)で杉尾候補が差を広げたことからすると、中傷ビラはむしろマイナスに働いたようだ。

<賢明な長野県民の審判>
 賢明な長野県民は、総理の権力を振りかざした応援にも媚びず、人気者小泉農林部会長にも惑わされず、冷静な判断を下したことになる。安倍総理が応援に入った10激戦1人区のうち、自民が勝利したのは愛媛1県のみであり、政府与党の二枚看板の効果はほとんどなかったとみてよい。
 しかし、民進党は相変わらず低速を続けており、野党共闘の岩手、山形、新潟、沖縄の無所属の4人をいれても35議席にすぎず、改選議席43には遠く及ばない。岡田代表が命運を共にすると宣言した三重県では辛うじて野党統一候補が勝利したが、全国的には明らかに敗北である。野党第1党の民進党の責任は重大である。

<自民党農政への不満が東北・甲信越の1人区の勝利と北海道の2議席獲得につながる>
 15年2月 16年夏の参院選における農政の争点化に備え、農協改革やTPPの不安のある農村向けに、全国の農協中央会への幹部の訪問を提案したが受け入れられなかった。またTPP反対の明確化を画策したが、なまくらなままに終わった。東北6県では、秋田を除き非自民が5勝している。山梨、長野、新潟でも3勝である。北海道では3議席中2議席を獲得した。西日本の1人区は大分(と三重)以外自民党が制している。
 農政問題が鍵を握っていた証拠である。何回も指摘しているが、2007年に小沢一郎代表の下農業者戸別所得補償を掲げて1人区23勝6敗の大勝利となり、09年の政権交代につながった。民進党がTPP・安倍農政への怒りに気付いて対応したら、32の1人区の半数以上を制し、07年に近い大勝利を挙げていたかもしれない。残念でならない。

<農村政党・民進党の誕生>
 民主党はかつて1区現象と呼ばれ、都市政党だった。今回も東京・愛知では2議席確保している。しかし、大阪と兵庫で議席を失い、千葉、埼玉、福岡の3人区と4人区の神奈川でも1議席のみで、07年にいずれも2議席を獲得したかつての面影はない。その意味では、少なくとも東日本では農村政党への衣替えが起こったのかもしれない。一方、自民党は2人区以上の地方区ですべて1議席は確保し、東京、千葉、神奈川の3人区以上では2議席を獲得しており、むしろ自民党こそ都市政党に変貌したのかもしれない。
 いずれにしても、民進党の再建のためには、農政に限らず、憲法改正、安保法制、格差、消費税、原発、社会保障等について、自・公に対抗する明確な方針が必要である。


[参院選 鎌谷一也比例区候補編]

<比例区票は伸びず>
 比例区は1175万票で11議席を獲得した。13年に比べ約400万票増え議席も4議席増えた。7月12日の毎日新聞の選挙分析結果によると、4党の比例代表の合計得票と32の野党共闘統一候補の得票を比較すると、28選挙区で候補者の得票が上回り、選挙協力は単純な足し算以上の効果を生んでいる。平均で21%に上回った。ということは、逆に21%比例区票が減っていたということであり、せっかくの1人区共闘が比例区に結びつかなかったことになる。
 私は、1人区の野党共闘を比例区でも、と野党統一比例名簿を求めてかなりのエネルギーを費やしたがこれも実現せずじまい。もし野党統一名簿が実現していれば、上記の相乗効果と与野党対決の構図が明らかとなり2000万票の大台も可能だったのではないか、と悔やまれる。
 私が選対本部長を務めた反TPPの鎌谷一也候補は民進党 候補の最下位(26,171票)の惨敗だった。それ故私にはそもそも今回の選挙戦をあれこれ話す資格がないかもしれない。

<圧倒的な出遅れ>
 既存のブログで何度も触れたとおり、07年の小沢代表の指摘もあり、私は野党の比例区からも農民代表が出てもらわなければならないとずっと気になっていた。前述のとおり、農政の争点化の予感もあった。そして作秋には、鎌谷さんへのアプローチを始めていた。しかし、実現は4月下旬。遅すぎてしまった。比例区の候補は、大半は1年前から全国を回る選挙活動を始める。それを僅か2カ月ちょっとで戦い抜く突貫選挙になってしまった。

<名前を覚えてもらうには手間がかかる>
 比例区は政党名でも候補者名でも投票できるが、今回も74.8%が政党名を書き、個人名投票は4分の1にすぎなかった。このあおりを受けたのが、民進党公認の今候補者の中で最も遅い出馬表明(4月20日)となった鎌谷候補である。
 支持していても名前までいかず、大半の反TPP農民は民進党としか書かなかったに違いない。比例区での名前の浸透には時間が必要なことを痛感した。
 私が懇請して出馬していただいた経緯もあり、すぐ全面的に支援する予定が、TPP特別委員会が4月いっぱい続き、5月は野党統一比例名簿の実現にかなりの時間を取られ、私は事前にほとんど支援活動ができなかった。

<得難い人材の働き場所>
 鎌谷候補ほど現場を知り尽くし、農政の知識も豊富な方は他の分野にもそうざらにいまい。TPPの危険性に当初から気付いて大反対している。そして何よりも全くズレた農協改革とやらが進められようとしている中、信連で金融担当20年、専門農協(鳥取県畜産農業協同組合)で20年の経験に基づいた見識を農政分野で活かしてほしいという、私の切なる願いがあった。TPPと荒唐無稽な農協改革が日本の安定的地域社会の基礎だった農村を壊すことが目に見えているからだ。
 しかし、民主党候補者の中で最下位に終わってしまった。鎌谷候補本人に対し、そして関係者の皆様方に本当にすまない気持ちでいっぱいである。参議院の比例区は本当に難しい選挙だというのが実感であり、いろいろ話すことはあるが、やはり、敗軍の参謀はあまり語ってはなるまい。ただただ反省するばかりである。

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