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「参院選後」の野党、国会、有権者のあるべき姿とは?ー吉田徹・北海道大学教授に聞く

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■憲法改正論議の時代の有権者に求められることとは

—改憲勢力が2/3を確保したということで、憲法改正論議がリアリティを持ってきます。先生は、日本においても政治思想・体制をめぐる対立が終焉し、政党間の主義主張の違いが見えにくくなってきているものの、唯一残っている対立軸があるとすれば、それは「憲法」をめぐる態度だと指摘していらっしゃいます。

吉田:今回の選挙戦でも、一応は憲法改正問題も議論の俎上には上がりましたが、国民の反応はいまいちだったように思います。

冷戦構造が崩壊し、社会の多元化と金融経済のグローバル化が進んだ結果、日本のみならず、多くの先進国では一国単位で採り得る政策幅が縮小していっています。先の国民投票によるイギリスのEU離脱はその反動といえます。

日本が抱える課題、少子高齢社会や財政問題、経済のグローバル化などは、批判はあっても、いずれの政党が政権についても取り得る選択は限定的にならざるを得ない。民主党政権が初めにTPPを進めると言ったり、自民党が同一労働同一賃金を言い始めるといったりしたように、です。こうした課題については、手法の違いだけが残ります。有権者も、政治の差異はどこにあるのか、それはなぜ可能なのかといったことについて敏感でないと、イギリスと同じ轍を踏むことになりかねません。

確かに、日本では55年体制の残滓ともいえる、憲法改正が与野党間の争点となっています。ただ、これも絶対的なものではありません。日本共産党はかつて日本国憲法の制定に反対していましたし、旧民主党も改憲そのものには反対をしていない。一方で護憲的な姿勢は自民党の中にも残っています。憲法が政党政治において一躍争点として浮上したのは、第一次政権で安倍首相が「戦後レジームの脱却」を口にし、さらに昨年の衆院憲法審査会で、憲法学者が安保法制について「違憲」との判断を示してからのことです。

私個人は憲法改正については、多くの人と同じく、一概に賛成、反対とはいえないと思っています。そもそも憲法の何を、なぜ、どのように変えるのかという議論や思考実験なくしては、議論は無意味です。

ただ、護憲派、改憲派ともに日本国憲法が宗教化している感は否めません。憲法さえ守れば日本は戦争をしないでいられる、変えさえすれば社会もよくなる、というのは憲法に自分たちの理想を託し過ぎた議論です。信仰もそうですが、重要なのは教義そのものではなく、その実践、いうなれば憲法精神をいかに活かすかです。そうしたことは日本の戦後の問い直しにもつながるでしょう。

そのような議論は政治家に任しておくには勿体無い。評論家の東浩紀さんなどがかつて「ゲンロン憲法2.0」として草案作りに取り組まれましたが、まずは国民の側から議論の提起があってもいいかもしれません。

—無党派層が増加する中、有権者の側に求められる姿勢とはなんでしょうか。

吉田:無党派層の増加は、グラデーションはありますが、どの先進国でも顕著になっています。言い換えれば、それは国民国家という単位と議会制民主主義という時間軸で決められることがどんどん少なくなっているからでもあります。

格差問題も、エネルギー問題も、環境問題も、数世代に渡って、国際協調の枠組みで取り組まなければ解決できません。だから、国家と選挙だけを政治の範囲としてしまうと、逆に民主主義は空洞化していくことなります。

そうではなく、グローバルな視点から日本政治を捉え、選挙だけではない政治参加の厚みを増していくこと、それこそが未のある政治、つまりは政治を動かし、作り上げているんだという感覚を取り戻すことにつながるのだと思います。

■プロフィール

(よしだ・とおる)1975年生まれ。慶應義塾大学法学部卒業、東京大学総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。現在、北海道大学法学研究科・公共政策大学院教授、フランス国立社会科学高等研究院日仏財団リサーチアソシエイト。比較政治、ヨーロッパ政治を専攻。

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