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科学の進歩と人間シリーズ(5) 

 ここまで、近代社会になってからの科学技術の進歩と寿命や快適な人生、そして科学技術は進歩して良いのかということに対して具体的な問題を取り上げて考えてきました。
その結果、科学技術の進歩自体は良いが、時折、「倫理の黄金律」を深く考えて社会が合理的に科学技術の成果や医療を選択していかなければならないことがわかりました。

 つまり、科学技術に関しては学者、医療に関しては医師、食材の流通に関してはスーパーなどの当事者が独自に判断したり、政府や業界と手を結んで力を持つのではなく、それを受ける方(社会、患者、食べる人)の希望が主体にならないといけないということが理解されます。  

原爆を作っていいかは頭上に原爆を落とされる人の方に諾否を聞く、タバコを吸うかどうかはタバコを吸っている人と副流煙の被害をうける方から、そして放射性物質で汚れたものを売って良いかどうかはそれを食べる人から、希望を聞かないといけないということです。 そうすると、比較的簡単に、原爆やダメだ、タバコは煙が他人に行かないように吸う、放射性物質が入っていないものは売らない・・・ということになるでしょう。 

つまり、科学技術が進みすぎたといわれる問題は科学技術にあるのではなく、その作品を受け取る社会が、受け取る人の希望を聞かなかったというところにあると考えられます。 

たとえば、2011年の原発の問題は原子力関係者がその作品をショーウィンドウに飾ったあと、その説明に「原発は電気を起こすのに適切な発電装置の一つです。ただ、人類が作った原発の中で震度6で壊れなかった原発はまだありません。また日本では震度6の地震が1年に1回以上きます。また原発が運転中には広島原爆の1000倍程度の放射性物質を含み、仮に爆発すると100年以上、付近には住むことができません」と書かなかったことにあります。 

このように書いたときに日本社会が原発を選択するかどうか、それはその国に住んでいる人が決めることです。もちろん、被曝はある市町村だけの問題ではありませんから、どこかの市町村に「危険手当(20年で税も入れて800億円ぐらい)を出したり、やらせメールをして公聴会を開いたりする必要はありません。 

また原発事故の被曝では文科省大臣が「東電がヘマしたので、福島の子供に1年20ミリシーベルトの被曝をさせることにしました。これは1年400回の胸のレントゲンに相当します。それでも保護者の方は1年20ミリでよろしいでしょうか?」と言わなければなりませんでした。 

少し前のことになりますが、リサイクルでは「ゴミは分別すれば資源」と言われました。これも「ゴミを分別したら、それを資源として使う人はいますか。分別費用も運搬費用もからこれまで使っていたゴミ処理費を差し引いたものはお引き取りになるときにいただきます。一例としてプラスチックでは1キログラムあたり200円ぐらいになります」と言えば、一部のものを除いて誰も賛成しなかったでしょう。また食品リサイクルでは、「食品リサイクルという名前はついていますが、食品をリサイクルできる訳ではなく、食品の中の1000分の1ぐらいの無機物を中心としてリサイクルすることです。従って、ほとんどリサイクルはできません」とショーウィンドウに示しておく必要があったのです。 

またダイオキシンは「ダイオキシンは特定の動物実験で猛毒である可能性が示されました。まだ人間への影響は不明ですので、人間にとって毒物かどうかの結果がでるまで、とりあえず仮に「予防原則」で厳しく規制します。データの解析が終わったら報告します」とするべきで、ダイオキシンの場合には研究の結果、毒性が弱かったのですから、規制は解除しなければなりません。 

温暖化は「温暖化するかどうかは学問的に意見が分かれています。しかし、日本は海に囲まれていますから温暖化の影響はほとんどありません。またCO2はあまりにすくないので徐々に増やしていく必要があります」と書くべきでした。 

つまり、科学技術の作品をショーウィンドウに飾って、正直に説明をすれば科学技術は人間社会に悪いことはしないと言えます。しかし、ウソをつく人が多い場合には結果的に科学技術の作品が社会に悪影響を与えることが生じるということです。 

つまり、科学技術や医療の成果を活かすためには「相手の希望を聞くこと」、「正直に説明すること」がいかに大切かが判ります。

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