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「1日50円」で炎上したプロブロガーに見る、ネットの「叩かれるほうに原因がある」論 - 網尾歩

「いじめはいじめられるほうにも原因がある」という言説は、ここ最近聞かれなくなっている。こういう言い方をすること自体がいじめ加害者の肩を持つことであり、いじめを助長するという認識が徐々に広まりつつあるからだ。しかし、ネットの炎上においては、「炎上は炎上するほうに原因がある」と考える人が多いだろう。叩かれる要素のある人は、いくらでも叩いていいという風潮がある。「いじめをなくそう」と大人は言うが、ネット上でのいじめは是認されているのである。

プロブロガーが「1日を50円で買いませんか?」

 インターネット上、特にツイッター上での「正義の暴走」が怖いことは、これまで何度かこの連載で述べてきた。とはいえ偉そうなことを言っている筆者であっても、義憤にかられてツイッター上での炎上に加勢した経験はある。失態を犯した人に対して、偉そうにツイッター上で苦言を呈したのである。そのときは、「無自覚に差別的な言動を取っている輩に一言言ってやった!」くらいの気持ちであった。

 しかしそれを見た人からフォローを外され、後日「そんなに怒らなくてもいいのにと思った」と笑われた。そう、炎上のほとんどは、少し離れた立ち位置から見ると「そんなに怒らなくてもいいのに」と思えるものだ。

 7月初旬に、とある「プロブロガー」が炎上した。きっかけは、このブロガー・Mさんがブログ上で「プロブロガーの1日を50円で買いませんか?」と呼びかけたこと。これに対してツイッターユーザーの一人が「50円払うので日雇い労働してください。そのバイト代を指定口座に振り込んでください」と依頼したのだ。

 Mさんはこれを拒否したが、もうお金を振り込んだと主張するユーザーとの間で諍いになり、このやり取りを見ていた人たちを巻き込んで炎上した。炎上後の7月10日にMさんが更新したブログ記事には700以上のはてなブックマークがついており、Mさんへの批判コメントが多い。記事によれば、彼が数分ツイッターを離れただけで通知欄が100以上溜まるほど批判があったという。

さて、この記事でこの炎上の顛末を知った人のほとんどは今、思ったのではないだろうか。「くっだらねえ」と。筆者もそう思う。参院選の後で、こんなくだらない炎上についての原稿を書いているライターとは一体なんなのか。

 だが、この炎上がネット上で多くの人の目を集めていたこともまた事実なのだ。脳科学者の茂木健一郎氏やプロブロガーの先駆けである「はあちゅう」氏もこの騒動について言及した。中には参院選よりも熱い気持ちで行方を見守っていた人も何人かいただろう。自分の一票が国政を変えると言われるよりも、自分の1ツイートで「プロブロガー」を痛めつけられることのほうに「リアル」を感じた人たちもいるのだ。

理屈をつけていじめを正当化する人たち

 Mさんは「1日50円」のブログ内でも「ぼくはよくブログで炎上します。かなり嫌われてます」と書いている。ネット上にはいろんな人がいる。有名でも大して嫌われていなくても「クソリプ」で絡まれることはある。嫌われている自覚があるのであればなおさら、「法的、倫理的にアウトなものは受け付けません」などの注釈を一言でも加えることが必要だったのだろう。これは、ほかのユーザーたちも指摘していることだ。

 こういったリスクヘッジを行わずに、言ってみれば真っ裸の状態でネット上で踊るMさん。格好の「叩き」の的になるのは、人間の残酷さを考えれば必然だ。みんな、Mさんに本気で腹を立てているわけではない。彼の危機管理意識の薄さ、知識の浅さ、行動の軽薄さ、「プロブロガー」というよくわからない肩書きを名乗ることなどが鼻につき、「うざい」と思っている。反論するような強さもないことを見抜いている。すなわちMさんは「弱い」から叩かれるのだ。

 筆者は、弱いから叩いていいと言いたいのではない。相手が「弱い」から叩いているくせに、その事実は無視し、理屈をつけていじめを正当化する人たちのことを、嫌だなあと思うのだ。「50円払うので日雇い労働してください」と言ったユーザーにも愉快犯的な悪質さがあるのに、そこに目を向ける人が少ないのは、Mさんを叩く人が最初から多数派だったせいだ。

 叩いている人たちに、「弱いものいじめをしている」という意識はないのかもしれない。それどころか、「ネットでそこそこ有名な人」を「強者」だと認識し、貶めることが弱者の権利だと思っている人もいるのかもしれない。しかし、大多数で叩き始めた瞬間に、数の論理で強弱は決まる。自戒を込めて言うが、正義を主張しているつもりで、誰でもあっという間にいじめの加害者になる。

 最初の話に戻るが、炎上のほとんどは、少し離れた立ち位置から見ると取るに足らないものだ。「絶対に許せない」という気持ちに駆られてネット上で誰かを叩きたくなるとき。エンターキーを押す前に、ネットやSNSをあまり使わないリアルの知人にその炎上について話してみたらどうか。話しているうちに、自分でもバカバカしくなるかもしれない。ならなかったとしても、リアルの知人が言ってくれるかもしれない。「わかったけど、それってそんなに怒るようなこと?」と。

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