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「枠内の個性」から「社会人の個性」へ

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 すなわち、学校という空間ではコミュニケーション能力を駆使しながら、学校空間・教室空間という枠組み、あるいは秩序に則ったかたちでサバイブしなければならない*1。枠組みや秩序を破ることも不可能ではないが、そのような個人はコミュニケーション困難な存在とみなされ、孤独な境遇に耐えなければならず、教師もあまり肩を持ってはくれない。
 
 本当の意味で「個性」や「自分らしさ」に尖れば尖るほど、枠組みや秩序に適応しにくくなり、少なからぬ割合が不適応や不登校の憂き目に遭うことになる。
 
 だから学校空間・教室空間を順当にサバイブして、順当に進学し就職していく人達は、良くも悪くも枠組みや秩序を内面化し、枠組みや秩序に紐付けられた精神を育んでいく。枠組みや秩序になじみやすい「個性」や「自分らしさ」だった、と言い換えてもいいかもしれない。いずれにせよ、そういう粒揃いの人間が中学高校大学にうまく適応し、うまく進学していく以上、就活状況に適応する人達の大半が「枠内の個性」を内面化していることに不思議はない。
 
 しかし、渡辺さんのようにそういう「枠内の個性」を意識し言語化できることは望ましく、それを無意識の領域にのさばらせておくよりは安全で融通が利くと思う――「枠内の個性」を内面化しまくっているのに自覚が無いのが一番厄介で、そういう人は、枠組みをはみ出す可能性も枠外の人間を許容する可能性も非常に乏しくなる。  

「枠内の個性」は出発点でしかない

 
 だから、「枠内の個性」の内側にいる人は、本当は「個性」や「自分らしさ」の振れ幅が小さいのだと思う。少なくとも思春期の時点ではそうだろう。思春期に「個性」や「自分らしさ」を体現しているのは、ドロップアウト組や退学組のほうではないだろうか。
 
 ところが、思春期の尖り具合は摩耗しやすく輝きを失いやすい。大芸術家級の例外をのぞいて、思春期の「個性」や「自分らしさ」は年を取るにつれて価値を失っていく。
 
 かわりに台頭してくるのは、思春期以来の「個性」や「自分らしさ」を小さな核として、雪だるま式に育っていく社会人以降の個性だ。核となる「個性」や「自分らしさ」は「枠内の個性」をはみ出していないかもしれないが、そこにキャリアや人間関係や家庭といった要素が堆積することで、社会人の「個性」や「自分らしさ」はかけがえのないものとなる。そして歳月を経て、雪だるまはどんどん成長していく*2
 
 かけがえのないものとは逃げようのないものでもある。が、とにかくも、その人だけの代替困難で修正困難な何かが出来上がってくる。「そのひとの歴史」も「そのひとの文脈」も、そこに現れてくる。人生は、一度きりだから。
 
 ただ、社会人になってからどのような「個性」や「自分らしさ」が立ち上がってくるのかは、やはり日々の積み重ねとコミュニケーションに左右されるので、よく品定めをしながら、できるかぎりクンフーを積んだほうが望ましいと思う。いや、品定めをし過ぎても良くないか? 塩梅が難しいですね。
 
 とにかく、なるようになるし、なるようにしかならないけれども、ただクンフーを積む意識――自分自身に最善を尽くす意識――だけは捨てちゃいけないと思う。クンフーを積む意識を捨てた社会人の「個性」や「自分らしさ」は、いじけたものになりやすい。かけがえのないものは意外とどこにでもあるけれど、クンフーを積むのをやめてしまう人のところには、良いものが堆積されにくいように思う。
 
 飽きてきたのでこのへんで。
 就活生のみなさん、頑張ってください。
 

*1:この枠組みや秩序には、もちろんスクールカーストも含まれる

*2:だんだん汚れた雪だるまになっていくかもしれないが、それは仕方のないことではある。もし完璧に身ぎれいな雪だるまができあがったら、それはそれは驚くべき雪だるまだが、無理にそうならなくても良いと私は思う。

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