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参議院選挙総括―誰が負けたのか?

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選挙制度の不備

変化を望む層が負けたことには構造的な原因も存在します。参議院の選挙制度には既得権層を過大に代表させるという不備が存在するからです。

分かりやすいのは、投票価値の不平等、いわゆる一票の格差です。今次選挙においては、2013年の選挙が5倍近い違憲状態と判断されたため、合区を導入するなどの制度改変は行われましたが、それでも、3倍以上の格差が温存されました。

加えて、一部の専門家が繰り返し指摘しながら(菅原琢「メディアが報じない参院選挙制度の「隠れた欠陥」」現代ビジネス)、ほとんどメディアに取り上げられないのが、地方では小選挙区制を採り、都会では大選挙区制を採る現行制度の効果です。結論から言うと、現行制度は農村に地盤を持つ政党に圧倒的に有利です。というのも、田舎の1人区は勝者総取りで議席を独占できる一方で、都会のでは複数区では少数の支持でも議席は確保はできるからです。結果として、選挙区における勝敗に対する影響力は、農村票に影響力が圧倒的なのです。

比例区の方も深刻な課題を抱えています。現行の比例区は、政党名を書いても、個人名を書いてもいいことになっており、政党名と個人名を合算した票数を下に各党に議席が配分されます。ところが、実際の議席は個人名の投票数が多い候補から獲得していくのです。比例では政党名を書くという有権者も多いでしょうが、彼らの票は、相対的に個人の獲得票が多かった議員に配分されるのです。

結果は大変に示唆的です。自民党で比例の議席を得ているのは旧来型の組織候補です。ほとんどの候補者が、郵政関連、農協関連、医師会関連、宗教関連、そして保守的なイデオロギー団体の支持を受ける候補です。野党の側も状況は似たり寄ったりで、民進党の比例当選者は労組関係者がズラリ。まあ、団体の支持を得ないとすれば、知名度一本勝負ということで元アイドルということになったりするわけですけれど。

現状維持の暴力

参議院選挙の結果は、与党の勝利であり、改革勢力の敗北でした。事実として、そうであったということを噛みしめるところから始めるべきでしょう。と同時に、「現状維持の暴力」とも言える状況について考えずにはいられません。日本は、国民全体の高齢化と、様々な制度上の結果として、強い現状維持のバイアスが存在します。

何かを変えようと声をあげ、行動を起こす者に対して、激しい批判と有形無形の圧力がかかります。現状を打開することで不利益を被る層がはっきりしており、彼らが生存本能の一環として死に物狂いで抵抗するからです。

対して、現状維持の結果として温存される不正義に対して社会はあまりにも冷淡です。現状維持のマイナス点は見えにくいということはあるでしょうが、それ以上に、日本社会にはあらゆる変化に対する拒否感が存在します。あらゆる改革は当初から完璧でなければならず、変化に対して不利益を被る層が存在してはならない、との前提を置くことで、改革は始まる前から頓挫してしまします。そして、現状の下で苦しむ層が残るのです。

今回の参議院選挙を一つのきっかけとして、経済が成長性は高まっていくでしょうか。2年半後には、消費増税を行っても経済が腰折れしないところまで景気は回復するのでしょうか。2020年にプライマリーバランスが黒字化し、財政の底が抜ける状況は回避できるのでしょうか。雇用が回復する中で、非正規労働者の待遇も改善し、適切な改革によって正規労働者との格差は解消されていくのでしょうか。若者が家族を持つことができ、人口減少に歯止めがかかってくるのでしょうか。待機児童が解消され、女性が活躍し、男女平等がより達成されていくでしょうか。農業の生産性が高まり、農家の収入が上昇して、地方は活性化するのでしょうか。そんな未来を信じている者は、おそらくほとんどいないでしょう。

それでも、日本人は現状維持を選びました。現状維持の結果として温存される暴力が顧みられることはありませんでした。そこには、特定の政党の勝敗という次元を超えた日本というシステムの失敗があります。ただし、絶望もまた、現状維持に加担することがある。絶望することなく、いやむしろ、正しく絶望したのちに再び歩み始めるのです。

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