記事

史上最年少! 30歳の副町長が鹿児島で体現する「地方創生」

2/3

人材を受け止める町になるには「階段」が大切

【田原】さっき回遊魚という話が出たけど、井上さんは「回遊人材を受け止める町にしよう」とおっしゃっています。これはどういう意味ですか。

【井上】これまで地方の移住促進政策は、ゼロか100か、つまり定住するかしないかを迫るところがありました。たとえば移住するなら消防団に入りなさい、自治会に入って草刈りしなさい、それができないなら住めないよ、という感じでハードルが高かったのです。これではなかなか人が寄ってきません。本当はゼロか100かではなく、途中に階段を設け、一時的に長島町を舞台に活躍してもらい、また別のところにステップアップするような関わり方があってもいい。ブリがいくつもの海を回遊するのと同じです。

【田原】階段ですか。その発想は、どこから来たのですか。

【井上】階段の重要性は、学生のころ路上生活の方の炊き出しをしていたときに感じました。路上生活をしている人はもともと真面目な人が多いのですが、住所や携帯がないのでなかなか仕事を見つけられません。でも、職業訓練をしたり、面接のときに服や携帯を貸してあげるという小さな階段をつくれば、あとは自分で登っていけます。地方への移住も同じで、ハードルが高いなら、小さな階段を設けたらいいんじゃないかと。

【田原】具体的にはどのような階段をつくっているのですか。

【井上】いろいろありますよ。いま大学生による地域活性化プランのコンテストがよく開かれていますが、長島町は、できるまで帰れませんという形にしました。プランを出すのは簡単ですが、本当に大変なのはまわりの人を巻き込んで実現すること。それを大学生に経験してもらいたくて、行きの飛行機代は出すけど途中でギブアップしたら歩いて帰ってください、実現したらみんなで拍手して送ってあげますという条件にしました。そうすると、おそらく1~2カ月は長島町で暮らすことになるし、うまくいけば住み続けるかもしれない。まさに階段です。

東大生が長島町へ。長島町のブリが東大の学園祭へ

【田原】「獅子島の子落とし塾」という取り組みがありますね。これも階段のひとつですか。

【井上】獅子島は人口約700人の離島です。ここも高校はないので、子どもたちには身近な先輩がいません。その結果、勉強のやり方が分からなかったり、将来のロールモデルが少ないという問題が起きています。そこで東大や九大の学生を連れてきて、中学生向けに2日間の塾をやってもらいます。年齢が少し上の学生と触れ合うことで、勉強を教えてもらうだけでなく、同級生や大人に話しにくいことを相談してもらういい機会になればと思っています。

【田原】大学生はどうやって集めたのですか。

【井上】僕がもともと知っている学生たちに、「おいしい魚食べない?」と声をかけました。最初は魚目当てかもしれませんが、漁師さんの家に泊めてもらっているうちに仲良くなって、また新しい動きがいろいろと生まれてきました。狙い通りです。

【田原】具体的には、どんな動きが生まれてきたのですか。

【井上】今年のゴールデンウィークには大学生が1週間、長島の公民館を借りて地元の小中学生に勉強を教えていました。また、こんどは長島の良さを東京にで伝えようと、学生たちがブリを仕入れて東大の学園祭でブリ丼を販売しました。このように最初は小さな階段から人や食材を好きになってもらい、そこからつながりが広がっていければいいんじゃないかと。

【田原】学生にとって、長島にはどういう魅力があるんでしょうね。

【井上】いま長島には、「東京でやるより長島でやったほうが面白いだろう」と言って、さまざまな企業やNPOの方が企画を持ち込んでくれます。そこに学生も出入りするので、東京にいるより深い出会いがあったりします。また、純粋に長島の人に本当に家族のようにかわいがってもらって、第2の故郷のようになった学生もいます。長島に関わる動機は人それぞれですが、なんとなく、人は人に集まるのだなと感じています。

楽天出身の起業家や、DeNAを辞めた人材が長島町にやってきた

【田原】長島町にはボランティアの学生だけでなく、社会人経験のある人も移住してきています。たとえばどういう方がいるのですか。

【井上】いま全国の自治体が「地域おこし協力隊」を募集していますが、長島町で採用した1人が土井隆くんです。もともと楽天で担当する商品の販売実績日本一になって、ネット事業で独立した起業家です。いまは漁協で一緒に株式会社をつくってECサイトを立ち上げたり、カドカワとインターネット高校の地域拠点であるNセンターを形にしてもらっています。物理的な距離を埋めることができるという意味でネットと田舎は相性がいいのですが、これまで長島町にはネットのプロがいなかった。土井君が来て、とても助かっています。

【田原】土井さんのような人が何人くらいいらっしゃるのですか。

【井上】ビズリーチと提携して「スタンバイ」という人材サービスで募集したところ、30件以上の応募がありました。実際に地域おこし協力隊としてきてもらうのは、今年7月の時点で8人になる予定です。なかには日立関連の元部長さんや、DeNAをやめてきた27歳の若手もいます。

【田原】へえ。日立の元部長さんは、どうして長島に?

【井上】もともと隣の市の出身で、お兄さんに最近長島町が面白いよと話を聞いていたそうです。それと、いま長島ではバイオマスの施設をつくろうとしています。自分の持っている技術や知識をそこに活かそうと思って応募してくれたと聞いています。

【田原】バイオマス?

【井上】長島には大きな養豚場があり、そこの豚糞からメタンガスをつくろうとしています。メタンガスを燃やせば熱や電気になります。ガスを燃やした熱はヒラメの養殖に利用できるし、発酵させた後の豚糞は匂いもなくて、畑に肥料として撒けます。いま実現に向けていろいろとシミュレーションを行っている段階です。

【田原】DeNAの人は?

【井上】僕の高校、大学の後輩なのですが、僕がブログで書いているのを見て、長島町にふらっとやってきました。会うのは5年ぶりくらいだったかな。自分のやりたいことが会社の中でできないと悩んでいたのですが、長島町ならできるかもしれないということで、この5月からこっちに来ています。

あわせて読みたい

「地方創生」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。