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【八方ふさがりのイタリア】

イギリスの次はイタリア。イタリアが次の危機の台風の目というのを1枚の絵で示したのがThe Economistの最新号の表紙です。

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イタリアの国旗の3色のバスの側面にはBANCA(銀行)の5文字。ユニオンジャックのイギリスバスを追いかけるように、今にも崖から落ちそう(≧∇≦)

タイトルはThe Italian job(イタリアの任務/責任)。

続いてEurope’s next crisis(欧州の次の危機)というドキッとする言葉が並びます。

日本の銀行の不良債権処理を取材してきた者からすると、公的資本を注入すればいいじゃん、と思いますが、ことし1月に導入されたEUの新しい規定により簡単にはできません。

血税による銀行救済に対する批判「銀行危機」と「財政危機」の負の連鎖を断ち切ることが目的の新たな規定ですが、銀行の株主や債券の保有者が損失負担(ベイルイン)を求められることから、EUとイタリア政府とのせめぎ合いが続いています。

7月29日にはEU がイタリアの銀行に対するすストレステストを発表する予定で、イタリアから目が離せません。

Bail inとbail outという言葉が登場します。Bail outは公的資金による救済bail inは債権者などによる負担。Bail outは、「バケツを使って船にたまった水をかき出す」が語源。Bailは「保釈金」の意味も。第三者に払ってもらうか(out)か、自分で払うか(in) という説明あります。

記事はざっくりこんな感じです(全文の翻訳です)。

世界中の投資家が極めて神経質になっている。アメリカの10年もの国債の利回りが先週、過去最低まで低下した。スイスの50年債の利回りにいたってはマイナスである。このところの市場の動揺は、イギリスのEU離脱の選択による先行き不透明感が背景だ。イギリスの通貨ポンドがドルに対して31年ぶりの安値をつけたのは、7月6日だが、今なお底が見えない。イギリスの複数の不動産投資会社が取引を一時的に停止した。

とは言え、イギリスのBrexit選択だけでは最近の市場の動揺を説明しきれない。大西洋の向こう岸をどんよりと覆っているのは、潜在的に打撃が大きい問題だ。

イタリアの銀行が"危機という崖"から落ちる瀬戸際にある。イタリアは欧州の第4の経済大国である。そして、もっとも脆弱な国のひとつでもある。▼公的債務は対GDP比で135%。▼失業率はEUの中でギリシャの次に高い。▼経済は、過剰な規制と生産性の低さゆえに、もう何年も死んだも同然だ。

イタリアの銀行は、景気低迷とデフレに直面し、3600億ユーロ(約40兆円)の不良債権を抱えている。これはイタリアのGDPの20%に相当する規模だ。その金額に対して銀行が引当金を積んでいるのはあわせてもわずか45に過ぎない。

最良のシナリオは、脆弱な銀行がイタリア経済の重石になること。最悪のシナリオは、銀行のいくつかは破綻すること(At best, Italy’s weak banks will throttle the country’s growth; at worst, some will go bust)。当然のことながら、投資家はイタリアから逃避している。

イタリアの主要行の株価は4月以降、半分にまで急落。とりわけ6月のBrexit投票以降、イタリア銀行株の売りが加速している。

足下でもっとも心配なのがイタリア第3の銀行で、1472年に創設された世界最古のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(Monte dei Paschi di Siena)の支払い能力(solvency)である。これまで経営再建が何度も試みられたが、失敗。時価は簿価の10%に過ぎず、7月29日に公表される欧州中央銀行によるストレステストを合格できない可能性がある。

イタリアの銀行の規模を考えただけでも、危険である。ただし、より深刻なのはユーロ圏の病巣だ。つまり、EU本部の作るルールとそれぞれの国内政治の要求の対立のことだ(the tension between rules made in Brussels and the exigencies of national politics)。

さらに、債権者と債務者の対立である。どちらも中途半端な金融改革の結果である(both are consequences of half-baked financial reforms)。

対応を誤れば、イタリアがユーロ崩壊の引き金を引くことになる。イタリアがいま緊急にやらなければならないのは、銀行の経営立て直しに向けた大胆な施策である。資本がイタリアから逃避し、既存の救済基金が底をつく中、政府による公的資本の注入が必要となるだろう。

しかし問題は、これが政治的に事実上不可能という点だ。1月に導入されたユーロ圏の新たな規制によると、銀行の債券保有者がまず損失を負担しない限り、政府による資本注入はできないのだ(banks cannot be bailed out by the state unless their bondholders take losses first)。

債権者に損失を負わせるという原則は、納税者にツケをまわすよりは望ましいものである(The principle of "bailing in" creditors rather than sticking the bill to taxpayers is a good one)。

多くの国では銀行債を保有しているのは、リスクを理解し損失を負担するだけの体力のある機関投資家だ。しかし、ことイタリアでは、税法上のねじれがもとで2000億ユーロ(約22兆円)あまりが個人投資家によって保有されている。

去年11月、正式導入に先駆けて新たなベイルイン・ルールを適用してイタリアの地銀の破綻処理をしたところ、巨額の損失を負った年金生活者が自殺した。これが政治的に火を噴いた(It caused a political storm)。

仮にイタリアの一般国民に再び損失を強いるようなことがあれば、マテオ・レンツィ首相への打撃は大きく、 11月に予定されている憲法改正の国民投票で必要な支持が得られないのは必至だろう。レンツィ首相は、 EUに対して資本不足の銀行に対するルールは柔軟に適用するよう主張している。

しかし、ユーロ圏の債権国でも政治的な困難がつきまとう。ドイツがイタリアの問題はおおかた自業自得だと主張するのはもっともである(Germany rightly says that Italy’s troubles are largely of its own making)。

イタリアは、問題銀行になかなか対応しなかった。地方の銀行が地方の政治家と一体となっているからかもしれない。ルールに従うか従わないかを好きに決められるシステムは、ドイツの有権者が許さない。

ベイルイン・ルールを弱めたり延期したりすれば、イタリアのレンツィ首相にメリットがある一方で、来年総選挙を控えたドイツでは政治的に大きな代償を払うことになるだろう。

レンツィ首相の要求に対してメルケル首相は「金融システムを守るためにルールを決めた。 2年ごとにルールを変更するわけにはいかない」と語った。

さはさりながら、イタリアのレンツィ首相の方に分がある。イタリアの銀行に対する金融市場の圧力は、信頼が戻らない限り続くだろう。公的資金の注入が欠かせない

仮にベイルイン・ルールがイタリアで厳格に適用されれば、預金者からの悲鳴は、信頼を失墜させるだけでなく、イタリアの景気低迷をEUのせいだと主張する五つ星運動(最近のローマ市長誕生など)を後押しすることになる。

イタリアの中で、ユーロ圏全体のリスクを背負わされている一方で、本来であればできるはずのことができないという思いが広がるだろう。

▼自らの通貨を切り下げることによる競争力の回復ができず、▼財政同盟によって財政出動の手足を縛られ、そして今回▼ほかの国が公的資金注入で危機を乗り切った後に適用された新たなベイルイン・ルールの適用。通貨ユーロがイタリア国民の信頼を失うものなら、単一通貨は存在し得ない

もしユーロの崩壊につながるのであれば、ルールを厳格に守る意味はない(There is no point in following rules to the letter, if doing so leads to the demise of the single currency)。

このため、いま必要なのは、金融のシステミック危機に対する不安を沈静化するため、自己資本が不足している銀行に対してイタリア政府が公的資金の注入を認めることである(the correct response is to allow the Italian government to plump up the capital cushions of its vulnerable banks with enough public money to quell fears of a systemic risk)。

こうした救済策には条件が必要だ。イタリアの銀行システムの徹底的なリストラである。強制的に合併させ、国内の支店を閉鎖するなどのコスト削減を進めさせることだ。

また、ベイルイン・ルールが将来はきっちり適用されるよう、すでに銀行債を保有する人が保護されるようルールを変更するべきだ。

しかし、実際にはルールのちょろまかしが現実的だろう。ベイルイン・ルールの条項を使ってモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナに対する暫定的な資本注入の話もすでに出ている。その程度では、UniCreditなどほかのイタリアの銀行が増資に踏み切るだけの株価の環境を整えるには不十分だ。

それでも、ヨーロッパはこうした結末をルールに基づく連帯だとして歓迎するだろう。しかし歴史から学ぶとすれば、それではイタリアの銀行が健全性を取り戻せるはずはなく、ユーロ圏の根本的な問題の解決にもならない。

Brexitの教訓は、有権者の懸念をうまく取り繕うような行動は、決して持続可能な戦略ではないことだ(One lesson of Brexit is that glossing over the concerns of voters is not a sustainable strategy)。

ユーロ圏のずさんな金融システムについて言えば、債権国と債務国の有権者の不安を回避しようとしている意味で、持続可能ではない。これはいつまでも続けられない。このため、投資家が不安を募らせるのはもっともである。

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