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- 2016年07月11日 05:00
高橋みなみさんが社長になったら三菱自動車が立ち直るかもしれないと思った理由 - 榊裕葵 社会保険労務士
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三菱自動車で不祥事が相次ぐのは、「企業体質」の問題であると報じられている。
人間の性格がそう簡単に変わるものではないよう、企業体質という企業の「性格」も、簡単に変えられるものではない。
だからこそ、過去の例を見ても、日産自動車がカルロス・ゴーン氏を、日本航空が稲森和夫氏を、米国で言えばIBMがマッキンゼー出身のルイス・ガースナー氏を受け入れたように、社外から全く異なる価値観を持ったトップを迎え入れ、既存の企業体質を破壊し、再生を託すという経営再建が取られることがある。
この点、私は前AKB48グループ総監督の高橋みなみさんが三菱自動車の総監督、もとい、社長に就任したら、案外、企業再建を成功させてしまうのではないかと考えている。
その理由は、高橋さんがAKB48卒業を機に著した「リーダー論」を読み、また、長年AKB48を見てきたファンの1人としても、高橋さんの経験や才能が、三菱自動車の抱える企業体質を改革するのに大いに役立つのではないかと思ったからだ。
メディアで指摘されている三菱自動車の企業体質の問題点は、整理すると、おおむね以下の3点に集約される。
1.上に対してものが言えない体質
2.セクショナリズムの体質
3.丸投げの体質
三菱自動車の企業体質の3つの問題点を、高橋みなみ社長がどのように改善していくか、私なりに考察をしてみたい。
まず、「1.上に対してものが言えない体質」に対してである。
産経新聞社が運営するWebサイト「産経ニュース」では、以下のように報じている。
このように、三菱自動車では、「上に対してものが言えない」ことに加え、目標達成の強いプレッシャーをかけられていたことが、データの改ざんや隠ぺいにつながった可能性が高い。
もし、現場の責任者が問題点や困りごとを実直に上層部へに伝えることができ、経営陣や上級幹部も聞く耳を持つ社風があったならば、話し合って技術的に可能な目標を再設定し、不正に走るようなこともなかったのではないだろうか。
この点、「リーダー論」によると、高橋さんは、総監督時代「ヘラヘラしてコミュニケーションの壁を低くする」ということを常に心がけていたそうで、ふざけたことを言って年下のメンバーにちょっかいを出したり、エセ関西弁を使ったりして、わざと「いじられキャラ」を演出して、話しかけられやすい雰囲気を作ったということである。(ただし、叱るべきときには口調を変えるなど「モードチェンジ」によりリーダーとしての威厳も両立させていた)
また、高橋さんは、メンバー1人1人のことを覚えて名前で呼びかけたり、年下のメンバーに対しても何かをしてもらったら「ありがとう」という言葉を忘れないようにしたりして、「部下は上司の言うことを聞いて当たり前」ではなく、メンバー1人1人を人間として尊重し、血の通ったコミュニケーションを心がけてきたリーダーであった。
そのようなコミュニケーションの積み重ねで、メンバーと信頼関係を築き、メンバーが本音を語ってくれたり、困りごとを相談してくれたりしたので、高橋さんは、グループ内で問題が発生しそうになったときは、早期にそれを察知し、問題が大きくなる前に解決策を考えることができたという訳だ。
三菱自動車にも高橋さんのようなリーダーがいたならば、リコールや燃費の問題を隠すことなく、本音で話し合って、最善の対応を検討できたのではないだろうか。
また、昨年11月、三菱自動車では、新型RVRの開発に失敗した部長級社員2名が諭旨解雇されたというニュースが流れたことは記憶に新しい。
諭旨解雇の理由は、「会議で正しい報告をしなかったため」であったが、この点、正しい報告がなされなかった理由を突き詰めると、正しい報告をしても「どうして目標を達成できないのか」という反論を許さないプレッシャーがかかったという可能性が考えられる。諭旨解雇された2名の部長は、「風通しの悪い社風の犠牲になった」というこという見方もできるのではないだろうか。正しく報告をしようものなら厳しく詰問され、正しくない報告をすれば解雇され、というならば、社員は進退窮まって委縮してしまう。
この点に関しても、高橋さんはメンバーへの「叱り方」にとても気を遣っていて、キャプテンや総監督としての経験の中で、次のような叱り方を身に付けたそうだ。
「1人に注意したいことがあった場合、その1人をさらし者にするような叱り方はせず、全体に注意を促すように話しながら、その1人には「あなたのことを叱っているのだよ」と気が付かせる。」
「叱るときは本人を追い詰めるような叱り方はせず、逃げ道を用意してあげたり、メンバーを叱る前に、副キャプテンに「私はあの子を叱るから後でフォローを宜しくね」と声をかけたりする。」
「自分のマイナスの感情を爆発させるのは「キレる」であり、「叱る」とは違う。「叱る」とは、「どうして叱っているのか」を冷静に相手に伝えることである。」
このような叱り方ができる高橋さんが、社長として模範を示せば、三菱自動車でも「叱り方」に対する社風が変わり、報告する側の立場の人は、悪い報告であっても恐れることなく上司へ正確な事実を伝えられるようになるのではないだろうか。
次に、「2.セクショナリズムの体質」についてである。
三菱自動車は2004年にリコール隠しの対応として、「事業再生委員会」を設置し、国内外の社員や取引先等にインタビュー調査を実施した。(2004年6月19日「事業再生委員会の活動状況について」)
この調査の中では「縦割りで、部門が断絶」「人事異動が少なく、適材適所が実現できない」「ITインフラも部分最適で構築」「たこつぼ文化のため、上を見て、発言を控える傾向」といったような、縦割りの弊害や、分断された部門内でも風通しの悪さがあったことが指摘されている。
2004年の時点で課題を認識していながら、今回の燃費データ偽装も、開発部門の中で隠蔽されていたことが長きにわたり発見されなかったということであるから、企業体質は変わっていなかったということであろう。
問題があることが認識さていても、その解決に向けて「実行」が伴わなければ意味がない。セクショナリズムの打破においても、高橋さんの総監督としての経験が役に立つ。
高橋さんは、強いチームであるためには「ひとりひとり」であることが重要、と「リーダー論」の中で述べている。
「小さな4人のグループが4つあるより16人チームより、ひとりひとりがそれぞれ独立してパワーを持っている16人チームのほうが、チームとしての総合力は絶対に強いんです」というのが高橋さんの持論であり、高橋さんがキャプテンや総監督として常に気を付けていたのは、メンバーが「仲良しの小さなグループ」を作ってしまわないか、ということであったそうだ。高橋さんは、この小さなグループのことを「ダマ」と呼んでいて、「ダマ」を解きほぐすことがリーダーたる者の最初の仕事だと語っている。
チーム内に「ダマ」がある状態だと、メンバーが「ダマ」の中で小さくまとまってしまい、「ダマ」の利益を優先させ、それが「みんなで力を合わせて1つのことを成し遂げる」のを阻害してしまうからである。
高橋さんは、「ダマ」を発見したら、自分が「ダマ」の中に入っていたり、「ダマ」のメンバーを別の「ダマ」に放り込んだりして、最終的には、メンバーがミックスされて1人1人に「個」が確立し、風通しがよく、強いチームを作り上げたということだ。
会社の場合は、「営業部」「技術部」「製造部」など、会社が機能するために部門に分かれること自体は必要だが、その部門が部分最適を求める「ダマ」になってしまってはいけない。
従来の三菱自動車では、まさに部門が「ダマ」になっていたため、「自分の部門のことしか分からない」「他の部門のことは興味がない」というようなセクショナリズムが蔓延し、社内で自浄作用が働かず、長年にわたり不正が見過ごされてしまったのではないだろうか。
三菱自動車が社内の「ダマ」を取り除くには、部門を超えた企業理念や行動規範の共有、積極的な部門間交流、人事異動などが今後の三菱自動車には必要であろう。その旗振り役として、高橋さんは適任ではないだろうか。
■三菱自動車の企業体質の問題点
人間の性格がそう簡単に変わるものではないよう、企業体質という企業の「性格」も、簡単に変えられるものではない。
だからこそ、過去の例を見ても、日産自動車がカルロス・ゴーン氏を、日本航空が稲森和夫氏を、米国で言えばIBMがマッキンゼー出身のルイス・ガースナー氏を受け入れたように、社外から全く異なる価値観を持ったトップを迎え入れ、既存の企業体質を破壊し、再生を託すという経営再建が取られることがある。
この点、私は前AKB48グループ総監督の高橋みなみさんが三菱自動車の総監督、もとい、社長に就任したら、案外、企業再建を成功させてしまうのではないかと考えている。
その理由は、高橋さんがAKB48卒業を機に著した「リーダー論」を読み、また、長年AKB48を見てきたファンの1人としても、高橋さんの経験や才能が、三菱自動車の抱える企業体質を改革するのに大いに役立つのではないかと思ったからだ。
メディアで指摘されている三菱自動車の企業体質の問題点は、整理すると、おおむね以下の3点に集約される。
1.上に対してものが言えない体質
2.セクショナリズムの体質
3.丸投げの体質
三菱自動車の企業体質の3つの問題点を、高橋みなみ社長がどのように改善していくか、私なりに考察をしてみたい。
■コミュニケーションのハードルを下げる
まず、「1.上に対してものが言えない体質」に対してである。
産経新聞社が運営するWebサイト「産経ニュース」では、以下のように報じている。
三菱自動車の燃費データ不正問題で、燃費目標の達成に向け、開発部門に強いプレッシャーがかかり、データの不正操作につながった可能性があることが23日、分かった。
「開発部門の社員は物を言えない環境で厳しい状況に置かれていないか」
不正発覚後初となった21日の三菱自の企業倫理委員会はこう指摘している。
(平成28年4月24日 産経ニュース)
このように、三菱自動車では、「上に対してものが言えない」ことに加え、目標達成の強いプレッシャーをかけられていたことが、データの改ざんや隠ぺいにつながった可能性が高い。
もし、現場の責任者が問題点や困りごとを実直に上層部へに伝えることができ、経営陣や上級幹部も聞く耳を持つ社風があったならば、話し合って技術的に可能な目標を再設定し、不正に走るようなこともなかったのではないだろうか。
この点、「リーダー論」によると、高橋さんは、総監督時代「ヘラヘラしてコミュニケーションの壁を低くする」ということを常に心がけていたそうで、ふざけたことを言って年下のメンバーにちょっかいを出したり、エセ関西弁を使ったりして、わざと「いじられキャラ」を演出して、話しかけられやすい雰囲気を作ったということである。(ただし、叱るべきときには口調を変えるなど「モードチェンジ」によりリーダーとしての威厳も両立させていた)
また、高橋さんは、メンバー1人1人のことを覚えて名前で呼びかけたり、年下のメンバーに対しても何かをしてもらったら「ありがとう」という言葉を忘れないようにしたりして、「部下は上司の言うことを聞いて当たり前」ではなく、メンバー1人1人を人間として尊重し、血の通ったコミュニケーションを心がけてきたリーダーであった。
そのようなコミュニケーションの積み重ねで、メンバーと信頼関係を築き、メンバーが本音を語ってくれたり、困りごとを相談してくれたりしたので、高橋さんは、グループ内で問題が発生しそうになったときは、早期にそれを察知し、問題が大きくなる前に解決策を考えることができたという訳だ。
三菱自動車にも高橋さんのようなリーダーがいたならば、リコールや燃費の問題を隠すことなく、本音で話し合って、最善の対応を検討できたのではないだろうか。
また、昨年11月、三菱自動車では、新型RVRの開発に失敗した部長級社員2名が諭旨解雇されたというニュースが流れたことは記憶に新しい。
諭旨解雇の理由は、「会議で正しい報告をしなかったため」であったが、この点、正しい報告がなされなかった理由を突き詰めると、正しい報告をしても「どうして目標を達成できないのか」という反論を許さないプレッシャーがかかったという可能性が考えられる。諭旨解雇された2名の部長は、「風通しの悪い社風の犠牲になった」というこという見方もできるのではないだろうか。正しく報告をしようものなら厳しく詰問され、正しくない報告をすれば解雇され、というならば、社員は進退窮まって委縮してしまう。
この点に関しても、高橋さんはメンバーへの「叱り方」にとても気を遣っていて、キャプテンや総監督としての経験の中で、次のような叱り方を身に付けたそうだ。
「1人に注意したいことがあった場合、その1人をさらし者にするような叱り方はせず、全体に注意を促すように話しながら、その1人には「あなたのことを叱っているのだよ」と気が付かせる。」
「叱るときは本人を追い詰めるような叱り方はせず、逃げ道を用意してあげたり、メンバーを叱る前に、副キャプテンに「私はあの子を叱るから後でフォローを宜しくね」と声をかけたりする。」
「自分のマイナスの感情を爆発させるのは「キレる」であり、「叱る」とは違う。「叱る」とは、「どうして叱っているのか」を冷静に相手に伝えることである。」
このような叱り方ができる高橋さんが、社長として模範を示せば、三菱自動車でも「叱り方」に対する社風が変わり、報告する側の立場の人は、悪い報告であっても恐れることなく上司へ正確な事実を伝えられるようになるのではないだろうか。
■「ダマ」を取り除いてセクショナリズムを打破する
次に、「2.セクショナリズムの体質」についてである。
三菱自動車は2004年にリコール隠しの対応として、「事業再生委員会」を設置し、国内外の社員や取引先等にインタビュー調査を実施した。(2004年6月19日「事業再生委員会の活動状況について」)
この調査の中では「縦割りで、部門が断絶」「人事異動が少なく、適材適所が実現できない」「ITインフラも部分最適で構築」「たこつぼ文化のため、上を見て、発言を控える傾向」といったような、縦割りの弊害や、分断された部門内でも風通しの悪さがあったことが指摘されている。
2004年の時点で課題を認識していながら、今回の燃費データ偽装も、開発部門の中で隠蔽されていたことが長きにわたり発見されなかったということであるから、企業体質は変わっていなかったということであろう。
問題があることが認識さていても、その解決に向けて「実行」が伴わなければ意味がない。セクショナリズムの打破においても、高橋さんの総監督としての経験が役に立つ。
高橋さんは、強いチームであるためには「ひとりひとり」であることが重要、と「リーダー論」の中で述べている。
「小さな4人のグループが4つあるより16人チームより、ひとりひとりがそれぞれ独立してパワーを持っている16人チームのほうが、チームとしての総合力は絶対に強いんです」というのが高橋さんの持論であり、高橋さんがキャプテンや総監督として常に気を付けていたのは、メンバーが「仲良しの小さなグループ」を作ってしまわないか、ということであったそうだ。高橋さんは、この小さなグループのことを「ダマ」と呼んでいて、「ダマ」を解きほぐすことがリーダーたる者の最初の仕事だと語っている。
チーム内に「ダマ」がある状態だと、メンバーが「ダマ」の中で小さくまとまってしまい、「ダマ」の利益を優先させ、それが「みんなで力を合わせて1つのことを成し遂げる」のを阻害してしまうからである。
高橋さんは、「ダマ」を発見したら、自分が「ダマ」の中に入っていたり、「ダマ」のメンバーを別の「ダマ」に放り込んだりして、最終的には、メンバーがミックスされて1人1人に「個」が確立し、風通しがよく、強いチームを作り上げたということだ。
会社の場合は、「営業部」「技術部」「製造部」など、会社が機能するために部門に分かれること自体は必要だが、その部門が部分最適を求める「ダマ」になってしまってはいけない。
従来の三菱自動車では、まさに部門が「ダマ」になっていたため、「自分の部門のことしか分からない」「他の部門のことは興味がない」というようなセクショナリズムが蔓延し、社内で自浄作用が働かず、長年にわたり不正が見過ごされてしまったのではないだろうか。
三菱自動車が社内の「ダマ」を取り除くには、部門を超えた企業理念や行動規範の共有、積極的な部門間交流、人事異動などが今後の三菱自動車には必要であろう。その旗振り役として、高橋さんは適任ではないだろうか。
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