- 2016年07月09日 15:47
選挙に行こう!(3) 憲法について調べてみた
前回記事「選挙に行こう!(2) 憲法について調べてみた」の続きです。
3.もちろん国民の権利も奪うよ!
改正草案は、国民に義務を課すだけでなく、国民の権利の制約もしています。
人権保障に「公益」に反しない限りと断りを入れているのは、前述の通りです。更に、現行憲法18条
「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」
を、
「何人も、その意に反すると否とにかかわらず、社会的又は経済的関係において身体を拘束されない」
に書き換えようとしています。
この奴隷的拘束に関しては、「徴兵が奴隷的拘束に当たるのでは」という議論があったそうです。まずは条文から「奴隷的拘束」を削除することで、徴兵制への道を一つ開こうとしているのではないかと感じました。わたしは絶対に戦争に行きたくない。人を殺す覚悟も、自分が殺される覚悟もいらないです。
もう一つわたしが思うのは、奴隷的拘束には、身体の自由だけでなく、精神的な奴隷的拘束も含むのではないかということです。精神的に逆らえず、奴隷のように従ってしまうことはあります。戦前・戦中も、「お国の言うこと」と、体は拘束されずとも、精神は奴隷のように拘束された人たちがたくさんいました。例えば、「竹槍で戦闘機を落とせ」と命じられ、竹槍の訓練を行う。普通に考えたら「届くわけないじゃん」「やるだけ無駄」とやりもしませんが、えいえいと、竹槍を空に向けて突き上げる。まるで思考を奪われた奴隷状態だと思いますが、このときはそうするしかなかったのもわかります。なぜなら、思考すると、「赤だ」「非国民だ」とレッテルを貼られて、悲惨な目に遭うからです。
オウム真理教をやめた人たちの中にも、国から精神的に奴隷的拘束をされている人が何人もいました。それまで警察や公安調査庁と会い監視されていた人が、「もう公安とは会いたくない」と会うのをやめると、仕事場に「あいつはオウムだぞ」とばらされたり、微罪で逮捕されたり、強制捜査に入れられて生活を破壊されてしまいます。教団をやめ社会で働き生きていかなければいけない人たちにとって、国家権力の妨害は死活問題です。仕事がなくなれば、食事も食べられなくなってしまいます。体は拘束されなくとも、会いたくないのに警察や公安調査庁と会うしかなくなる。今でも、オウムを辞めた人で仕方なく、警察や公安調査庁との関係を続けざるを得ないでいる人が結構います。
国家権力の飴と鞭の力が強大であり過ぎるがゆえに、人を精神的な奴隷的拘束状態に置くことは、一般人が行う以上にずっと簡単なようです。だからこそ、警戒し続けなければならないし、「いかなる奴隷的拘束も受けない」という条文が大切だと思います。
自民党が人権守ろうと本当に思っているなら、「奴隷的拘束」に草案に残せばよかったのに、なぜわざわざ「奴隷的拘束」を削除したのでしょうか。
自民党が手を加えた人権保障の条文で、わたしが最も危険だと思ったのは、現行憲法13条に、
「すべて国民は、個人として尊重する」
とされているのを、
「全て国民は、人として尊重される」
に変えたところです。
現行憲法は103条ありますが、13条はもっとも大切な条文だとも言われています。「国民」ではなく、一人、一人の個性を大切にし、最大限に尊重をしようと、謳っているからです。
個人が個人として尊重されるということは、とても大切なことです。どんな年齢であっても、女性であっても男性であっても、健康な人もハンディキャップを持った人も、学歴も生まれも関係なく個人として尊重される。
どんな主義主張を持っていてもいい。髪を染めたっていい。結婚しても、しなくてもいい。子どもを産みたければ産めばいいし、子どもが欲しくない人は作らなければいい。LGBTの人だって、二次元の人が好きな人だって、みんな個人として尊重される。素敵な社会だと思います。
個人の尊重の重要性は、ナチスドイツによる、ハンディキャップを負った人を安楽死させたT4作戦や、社会的弱者が差別され迫害されてきた歴史に鑑みても明らかです。
社会的に少数者でも、生きていていいんだよ。社会的弱者でも、あなたは大切だし、尊重されるんだよと言ってくれるのが、憲法13条です
更に、個人として1人1人が尊重されるという思想は、投票価値の平等など、国民主権とも強く結びつくものです。
日本で選挙がはじめて導入されたのは、1878年(明治11年)のことですが、最初は男性、しかも高額納税者しか投票が許されませんでした。お金持ちの、お金持ちによる、お金持ちのためだけの選挙ですね。1924年には納税額による制限は撤廃されましたが、やはり男性だけ。女性にも選挙権が与えられたのは、なんと1945年、第二次世界大戦終戦後のことです。
女性が一人の個人であり、女性であるということを尊重されていたなら、決して起こらなかった差別といえるでしょう。
憲法13条は、憲法の根幹とも言える、大切な条文です。
――ところが、自民党の草案では、「個人として」をカット「人」としてしか尊重しないと主張しています。「個人」は許されないのです。
4.平和がそこまでいやなの?
自民党憲法改正法案では、国民の権利・自由を国のコントロール下に置き、義務を増設する一方、戒厳令としか思えない条文を追加するなど、国家の権力の増強が図られています。
憲法改正法案第9条の二には「内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」と、国防軍の創設が明記されています。憲法9条に限定しても、わたしはいまだ国民的な議論が深められているとは思っていません。
また、自民党は、天皇を「元首」であると改正憲法に明記しようともしています。改正内容には、戒厳令や国防軍に関するものが多くあります。しかも、自民党はシビリアンコントロールさえ、外そうとしているように感じます。日本国憲法66条2項では、「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない」と定めています。この「文民」は軍人ではない人を意味しますが、①軍人だった経歴を有さないものを指すのか、②過去に軍人だった経歴を有するが現在軍人でないものも含むのか、という争いがありました。それを、改正案では、「現役の軍人であってはならない」との意味に規定してしまったのです。つまり、自民党のいう「国防軍」で力を持った人が、ある日政治家に転身し、総理大臣になっても憲法上OKということになります。
自民党は、平和憲法を破棄し、軍国主義へ戻りたいのでしょうか。
5.三権分立さえ……
自民党は三権分立のかなめである、裁判所・裁判官の独立まで脅かそうとしているようです。
三権分立を維持するためには、裁判官は国家権力のコントロールから自由でなければいけません。例えば「こんな判決を出したら、給料を減らすぞ」と言われたら、生活のために国の指示に従った判決を出してしまう危険性が高くなります。よって、現行憲法79条6項は、
「最高裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない」
と定めています。
ところが自民党草案では、
「第79条5項 分限又は懲戒による場合及び一般の公務員の例による場合を除き、減額できない」
と、制限を取り払い、条件によっては裁判官の給料にまで口出しをするぞと、明言したのです。
つまり、自民党は憲法上おおっぴらに、三権分立さえ破壊することをもくろんでいることになります。
5.改正手続を簡略化してその後は……?
今回の憲法「改正」は、ほんの手始めに過ぎないとわたしは思っています。戦前・戦中に思想の取り締まりに猛威を振るった治安維持法は、最初は最高刑が懲役10年だったのに、わずか3年後には最高刑が死刑まで引き上げられました。
法律も憲法も、一度安易に成立を認めてしまったら、その後どう変えられていくかわかりません。消費税の増税を考えてみればよく分かります。自民党は、今回の「改正」で、憲法改正手続を容易にしようとしています。
現行憲法第96条は、改正手続に関して以下のように規定しています。
「この憲法の改正は、各議院(衆議院と参議院のこと)の総議員の三分の二以上の賛成で、国会がこれを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」
つまり、今の憲法だと憲法改正の発議をするためにも、両議院の総議員の三分の二以上の賛成が必要なのです。ところが、改正案だと、
第100条
「この憲法の改正は、衆議院又は参議院の議員の発議により、両議員のそれぞれの総議員の過半数の賛成で国会が議決し、国民に提案してその承認を得なければならない。この承認には、法律の定めるところにより行われる国民の投票において有効投票の過半数の賛成を必要とする」
と、発議をするための人数制限を取り払っています。憲法という国家の要であるものに対し、議席の過半数さえ確保できれば、議院で議論する必要もなくなり、発議の乱発も可能になります。しかも、両議院の過半数の賛成で先に国会で議決(発議ではありません)してしまいます。
国会の議決は重いです。「国会って国民の代表機関でしょ。国会で議決されたらいいんじゃないの」と、内容を吟味せずに賛成票を投じてしまう人もいるでしょう。
なお、国民投票の「過半数の賛成」には、有権者総数の過半数とする説や、有効投票数の過半数とする説などありましたが、今回の草案では有効投票に一義的に定められています。
憲法改正が容易になったら、自民党はこれからどうしていくのでしょうか? ただでさえ今回の改正案で脅かされている、立憲民主主義は守られるのでしょうか。戦前・戦中のように、全体主義を強制されるのでしょうか。
6.自民党の本音
自民党の「力ある人たち」が本音を語っている動画があります。百聞は一見にしかずです。ご覧下さい。
自民党 元法務大臣 長勢甚遠氏
「憲法草案というものが発表されました。正直言って不満である。一番最初にどういっているかというと、国民主権、基本的人権、平和主義、これを堅持するといっているんです。これをなくさなければ、本当の自主憲法にならない。たとえば人権がどうだと言われたりすると、平和がどうだと言われたとすると、怖じ気づくじゃないですか」
自民党 外務副大臣 城内実氏
「日本にとって一番大事なのは、皇室であり国体だと常々思っている」
(動画には安倍さんの姿も見えますね)
自民党 政務調査会長 稲田朋美氏
「国民が大事なんて政治はですね、わたしは間違っていると思います」
国民主権や基本的人権、平和主義があるといけない。国民が大事だという政治は間違っている。国体(戦前も国体の意味については色々な争いがありました)や皇室こそが大事だ。そのような考えを背景に、自民党の改正草案は作られているということです。 しかし、何だか、まるで悪い宗教のようです。現代日本を導いている政治家が、臆面もなくこんなことを言えてしまうとは――。
自民党が憲法を「改正」したら、わたしたちの未来は大変なことになります。戦争になっても、政治家は戦場へは行きません。国民が人権を制約されても、政治家はお金もあり、特権もあるので生きていけます。
自民党の人たちの発言は、自分たちが「国民」の一人であるという自覚さえないように思えます。選民思想を持った人たちが、自由に権力を行使できるようになったら――ぞっとします。
憲法改正に賛成の方は、どの憲法の改正に賛成ですか?
9条に限ってでしょうか。それとも、自民党の憲法改革草案に沿ってでしょうか。
自民党の、憲法改正法案を一度読んでみてください。
https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/news/policy/130250_1.pdf
その上で、どこに投票するのかを考えてみてください。
今回、とても勉強になりました。自民党が予想していた以上に危険なことを考えているということを、初めて知りました。自分の未来を守るため、この手にある一票を大切に使いたいと思います。
さあ、投票に行こう!



