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破産管財人の横領と裁判所の監督責任

毎日jp:管財人横領:「裁判所の責任」判事が削除要請 調査報告書

甲府地裁の管財人をやっていた弁護士Aが、総額1億4千万円もの横領を行い、業務上横領で実刑になった。その後に管財人業務を引き受けた弁護士Bは、甲府地裁の担当裁判官から「債権者集会で配布する報告書とは別に、事件の経過をまとめた調査報告書を作成してほしい」と依頼され、22ページにも及ぶ報告書を作成提出した。それには横領の手口を記載したほか、裁判所についても「監督機能がまったく果たされていない。被害の拡大を招いた裁判所の監督責任も厳しく問わなければならず客観的な共同不法行為。裁判所の態勢を再考する必要がある」と指摘していた。

さて、この報告書を見た裁判所が何をしたか?

 記事によれば、以下のようなことになった。
裁判官は後日、後任の弁護士を甲府地裁に呼び出し「監督責任に触れないでほしい」「責任あるとの部分を削ってください」「責任は別の用紙にして、事実関係は事実関係で分けてやって(記載して)ほしい」などと求めた。書記官も立ち会い面談は30分以上に及んだが、後任弁護士は拒否したという。

 この記事で伝えられているのはB弁護士の話であろうから、裁判所に不当な圧力をかけられたと感じている人のサイドからの見方となっており、また破産事件の債権者たちが怒るのも当然である。が、裁判所がどういうつもりで報告書の提出を求めたのかは明らかでなく、この記事が半ば決めつけているように自己保身・責任回避のためにやったのか、それとも破産事件の債権者集会に提出するのに必要な部分に限って欲しいという趣旨だったのか、解釈は色々と可能であろう。

 その点はともかくとして、記事の最後の方に債権者の次のような言葉が紹介されている。
「裁判所の責任を追及するために、国家賠償訴訟を起こしても時間はかかるし勝ち目もない。バイクでダンプカーにぶつかるようなものだからあきらめた。マスコミに追及してもらうしかない」

 裁判所の責任を追及する訴訟を裁判所に提起するのだから、バイクでダンプカーにぶつかるよりももっと絶望的な戦いかもしれない。しかし全く例がないかというと、裁判所が手続的なミスをして破産債権者に損害を与えた場合に国家賠償責任を認めた裁判例はある。例えば大阪高判平成18年7月5日判時1956号84頁。

 上記のような自己保身・責任回避的態度をとらえて国家賠償を求めるというのは無理だと思うが、横領した管財人に対する監督責任を尽くさなかったことによる国家賠償責任追及は、必ずしも無理ではないと思う。これは破産財団の債権として管財人が責任追及すべきようにも思われるのだが、上記記事で骨のあるところを見せた管財人弁護士は提訴しないのだろうか?

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