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- 2016年07月06日 21:22
障害×AI/IoT=イノベーション 「障害者」の視点が、日本のスマート技術を飛躍させる!
1/2【連載第6回】IoT/AIによる「障害者のソーシャル・インクルージョンの実現」を目的に設立された「スマート・インクルージョン研究会」代表の竹村和浩氏による連載第6回。今回は、障害とテクノロジーの関係性について語っていただきました。
記事のポイント
IoT/AIによる「障害者のソーシャル・インクルージョンの実現」を目的に設立された「スマート・インクルージョン研究会」代表の竹村和浩氏による連載第6回。今回は、障害とテクノロジーの関係性について語っていただきました。
●GoogleとGM提携の意味するところとは?
●障害者は高齢者の「先輩」!?
●IKEAはなぜあんなに人気があるのか?
●「障害を持つ人たちの視点から」開発を!
前回までの記事はコチラ
【第1回】障害があってもなくても誰もが同じ地平で生きていく―インクルーシヴ社会を理解するhttp://biblion.jp/articles/DQ7lr
【第2回】分離からインクルージョンへ! 障害のある子もない子も同じ場で学ぶ教育とは?
http://biblion.jp/articles/tJ5k2
【第3回】障害を持って生まれた娘が教えてくれた、インクルージョンの大切さ
http://biblion.jp/articles/PFWEl
【第4回】“子供より先に死ねない親たち”の思い
http://biblion.jp/articles/H9trE
【第5回】2020年東京オリパラが「AI/IoT×障害=?」の答えとなる理由
http://biblion.jp/articles/26RZn
GoogleとGM提携の意味するところとは?
今年初め、米国の自動車メーカーGM(ジェネラル・モータース)が日本市場撤退を発表しました。そしてその直後、Googleとの提携を発表しました。なぜ、Googleと?その答えは明確です。日本市場で、強みを生かせなかったGMは、Googleと組むことで、将来の自動運転での主導権を取り、それをもって、再度日本市場のみならず、世界市場を席捲する戦略にでた、ということです。実は、これにはさらに深い意味があります。私が代表を務める「スマート・インクルージョン研究会」の名誉会長・村上憲郎も指摘しているように、これは、Googleにとっても、非常にありがたい提携であったということです。
既にIoTインフラの分野では、主としてGoogle、Amazon、Appleが全世界的にネットワークを構築しています。しかしながら、ネットワークがあるからと言って、それだけで、IoTの世界を制覇できたことにはならないです。つまり、そのネットワークをどう使うのか?そのノウハウが重要なのです。その点、GMは、市場の顧客と直接つながりがあり、その顧客ニーズに応じた自動車といういわば「デバイス」を創っている会社です。何のために、ネットワークを使うのか?その用途が、IoT別名「Industry 4.0」の世界では重要になってくるのです。
しかしながら、誤解を恐れずに言えば、これも十分ではないと私は考えます。なぜなら、GMは日本での市場顧客ニーズをつかみきれなかったために、日本市場を撤退したはずだからです。ということは、商品開発のための市場ニーズの把握は、どの企業も苦労していることであり、必ずしも、IoTネットワーク網と製造業との連携が、その解決とはならないということを示しています。
では、どうすればいいのか?
私は、このIoT・Industry 4.0の時代においては、むしろ、「障害者の視点」こそが、社会の自動化という局面では、非常に重要な要素となると考えます。
なぜなら、それぞれに障害をもって生活をしている障害者の視点こそが、社会の自動化というトータルの社会システムでは、市場ニーズそのものであるからです。IoT・Industry4.0の時代の商品開発ニーズは、まさに「障害者に聞け!」ということなのです。
障害者は高齢者の「先輩」!?
同じようなことが、高齢者介護の世界においてもいえます。IoT・AI・ロボットの応用分野といえば、すぐに、介護現場が思い浮かび、実際、多くの投資も既に行われています。先日、ある介護ビジネスの会社社長の講演を聞いていた際、その社長が、「介護ビジネスの面白さ、難しさというのは、私たち自身がそのサービスの顧客になれないところにあります」といった趣旨のお話をされていました。それは、介護ビジネスの顧客になるためには、既に介護が必要な状態、つまり歩けなくなったり、寝たきりになったり、あるいは認知症を発症している状態でなければ、そのサービスを受けられないということです。
つまり、そのサービスの顧客になるときには、既に、そのニーズをきちんとフィードバックできる状態ではないことが多いということです。ですから、真の顧客ニーズを探る点に、介護ビジネスの面白さと難しさがある、と言われたのです。
このお話を伺ったとき、私の頭には、「ならば、個々にではあるけれども、それぞれに障害を抱えて、既に社会で生活をし、不自由を抱えている、身体・知的・精神・視覚・聴覚障害の人たちがいるではないか?」という考えがよぎりました。その人たちからは、まさに必要とされるニーズを直接聞くことができるのではないかと思ったのです。
また、知的障害者を持つ人たちの場合、認知症と同様に本人からのニーズは聞きにくい場合もありますが、(無論そうでないかたも大勢いらっしゃいます)私たち知的障害を持つ子の親が(私にはダウン症を持つ娘がいます)、そのニーズを十分に把握し、伝えることが可能です。
私たちも高齢化すれば、徐々に目が不自由になり、耳も遠くなり、また、認知症などで、判断力や記憶力が衰えてきます。それらを障害と言い換えれば、それぞれの障害を既に抱え、不自由を抱えながら社会を生きている人たちが、既にたくさんいる、ということなのです。
であれば、私の娘のように障害を抱えて生きる人たちの視点は、まさに、「高齢者のいわば先輩」だということができるのです。
そうはいっても、一見、障害とテクノロジーは、つながりを連想することが難しいだろうと思います。しかし商品開発においては、この障害者の視点こそが、極めて重要な役割を果たすことは、日本以外では既に知られ、実践されています。



