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EUの分裂と中国の中央集権

 たまたま目にした中国政法大学の杨帆教授が書かれた「欧洲或全方位回归“小国寡民”」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。

1 記事の紹介

 内容を翻訳したものを簡単に紹介させてもらうと以下のとおりです。
 ヨーロッパの統合は5つ矛盾を抱えている。

 1つめは、ローマ帝国崩壊後の文化の統一がないこと。中国は二千年前に既に言語の統一を果たしているが、ヨーロッパは未だになされていない。

 確かに、ヨーロッパ内部で、民主的で自由な人権が発展しているが、範囲は狭い。

 2つ目は、制度に理想主義の色彩が濃いことだ。ユーロの発行権はあるが、各国の財政政策と矛盾している。

 3つ目は、貧しい国と豊かな国の利益対立を調節する力がないこと。中国は中央政府の強大な力で東西の格差問題を解決する。

 4つ目は、エリートと民衆の対立。政治家のヨーロッパ連邦(主権を統一)という夢は、既に民衆に否定されている。

 5つ目は、人権と資本の問題。「自由貿易」には労働力を含んでいなかった。投資が自由なら給料の低い国に投資が増え、移住を制限する方に働くからだ。

 その理念に基づき、関税・投資を自由にし、通貨まで統合したが、「人的自由」の段階で問題が起きた。本来の労働力の自由移動は給料を抑えることになるが、高い給料を享受する「労働貴族」特権を独占した。

 更に、アルバイトに従事する移民の問題もある。彼らが家を構えて定住し、子供を産み育むが、この出生率が自国民より多く、更に移民が福祉を享受するとそれに対する反発も強まる。

 結論として、ヨーロッパは恐らく※「小国寡民」(小さくて人口の少ない国)に向かう。しかし、これはEUの停滞を意味するだけで、ヨーロッパ国家の集団が落ちぶれるのを意味しているわけではない。

2 中央集権

 論理してはなかなか面白いものがあります。

 ただ、にじみ出てくるのが中国は中央集権で中央の意向できちんとした方向を定めることができるのに対して、EUはそうした統一意見すら決めることができないという発想です。

 まさに「開発独裁」の良い面だけを強調したものいいです。確かに中央集権は意思決定は早いし、政策が決まった後もどんどん推し進めていくことができます。

 ただ、結果その政策が間違っていても誰も批判できませんし、無理矢理土地を収用される農民など、不利益を被る人が多いという問題があります。

3 「夢」

 確かにヨーロッパの統一というのは「夢」というか、理想主義的な強かったことは否定しません。

 ただ、第二次世界大戦という悲劇を受けて、「国」を超えた枠組みで統一を図っていこうという試みは評価すべきで、それをただ「夢」の一言で片づけることは賛成しかねます。

 私が思うにEUの問題は、東欧の加入を進めたことによるEU内の貧富の差の拡大で、人は豊かな方に流れるという当たり前のことが起こったに過ぎないと考えます。

 結果移民問題などが起きたわけですが、シリアの問題で更にそれが強調されてしまったというところでしょうか。

4 最後に

 中国の論説のうまいところは、斯様に他国の問題に搦めて自国の優位性を強調してくるところにあるような気がします。

 そしてそれを如何にさりげなくおこなえるか、如何に学術的な感じにまとめあげて説得力をもたせるかが腕の見せ所の様なきがしなくもありません。

※ 「小国寡民」は老子が理想した国家。足るを知り、他国を羨ましがらずあるのが良いという感じの意味ですが、ここでは移民排斥の話もあるので、単純に国(人口)が小さくなるという意味で使用していると思います。

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