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辻元清美さん(衆議院議員)×保坂展人さん(世田谷区長)

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沈黙しないで議論のできる
社会をつくっていく

辻元 私たちが初当選したころは、自民党はもっと懐が深かったじゃないですか。自民党と社民党は対立もしたけれど、おたがいに尊重して議論をしていましたよね。

保坂 だって、ぼくたちは連立政権に入ったわけだからね。自民党側からすれば、この若い2人に連立政権の意義を理解させて、しっかり働いてもらおうと思っていたわけでしょう。

辻元 野中広務さんなんか、よく懐柔しに来ていたよね。内閣官房副長官だった与謝野馨さんは、盗聴法(通信傍受法)をめぐって保坂さんと何回も会合を開いて、何時間も議論をしていた。

保坂 26回、会合をやりましたね。

辻元 26回も、1年生議員の保坂展人と官房副長官が話し合う場をつくるという現実があったんです、20年前は。
 今は違う、問答無用ですよ。1年生議員が自民党内で反対意見なんて言えないし、野党の言葉にはまったく耳を貸さない。なぜなら安倍さんに反対する人はみんな敵だから。意見を聞く必要なんかないと思っている。だけど、そうやって政治の世界で、敵とみなした相手を攻撃していくと、日本の社会を分断することにつながるんじゃないかと思うんです。社会には、考え方が違う人がいて当たり前。その考え方の違う人たちと、どう折り合いをつけて共に生きていくかという技術が政治ですよね。相手を打ち負かして、勝つことが政治じゃない。

保坂 それは日本だけの話ではなくて、アメリカの共和党大統領候補になったトランプも同じですね。敵を叩く単純な言葉でどんどん煽る。そして、むちゃくちゃだけれど元気がいい言葉に励まされる人たちもいる。排外主義が台頭しているヨーロッパの国々にもいえることですが、いまや世界中にトランプ的言動は溢れている。そういう時代の空気がデマをつくり、そのデマがリアルと混ざって、人々の憎悪を掻き立てているような気もしますね。

辻元 その憎悪の感情を育てているものは何なのかといったら、日本の場合、人々の沈黙だと私は思うんです。例えば、安保法制とか待機児童のニュースを見て「おかしいな」と思っても、近所や職場で「政治的なことを言っても…」とためらって、ものを言わなくなる。すると、国会前で抗議したSEALDsの学生やママたちや、ものを言っている人たちにネットで攻撃が集中する。攻撃されている人たちを見ると、多数の人たちはますます言えなくなる。そうした沈黙の土壌が広がって、個人攻撃やデマがのさばっているように思うんですね。

保坂 ぼくはハフィントンポストというニュースサイトで毎週連載をしていて、最近、辻元さんが言うことと同じことを書きました。日本社会の多数派は「沈黙の現状追認」であり、意見を言う、発言をすること自体がすでに少数派である、と。
 それを変えるには、小さいころから討論と自己決定の機会をつくらなければいけないんです。今の子どもたちは、自分の意見を言って何かが改善された経験がない。自分の意見を言うと逆に、いじめられたり仲間はずれになる。敵と認定されるんですね。だから小学生のうちに学級会などで、みんなで話し合って発言したり譲歩したりしながら、いろいろなことを決めていく、デモクラシーを体現していく必要がある。

辻元 子どものうちから自分の意見を言えるようにすることと、大人も変わらないといけないですよね。昨日も、ある人から「ちょっと、辻元さん、陰ながら応援しているからね」って声をひそめて言われたんですよ。「いや、私もいろいろあるから」って(笑)。その人の気持ちもわからないではないけれど、大人たちのそういう態度が、結局は今の政権を支えてしまっていると思うんですね。
 私も国会で発言すると、あちこちから攻撃されたりバッシングされたりしてしんどい。だけど、自分の生き方として、おかしいことには「おかしい」と言い続けたい。私が声を上げ続けることで、同じように「おかしい」と思っている人が、1人ずつでも「おかしい」と言うようになる。そうすれば社会はちょっとずつでも動く、変えられると思うんですよ。

市民と野党が力を合わせて
参院選を勝ちとりたい

辻元 舛添騒ぎでかすんだ感がありましたが、参院選がだんだん近づいてきて、32の1人区では野党の統一候補ががんばっています。私は応援で全国を回っていて、東北、それから北信越あたりの1人区はいけそうな感触です。どちらかというと西のほうがちょっと弱い。

保坂 自公とおおさか維新などの改憲勢力に3分の2をとらせないためには、野党がとれそうなところは確実に勝たないといけないですね。

辻元 そう、きついですよ。でも、市民連合ほか市民の組織がものすごく動いてくれている。大阪府の場合は4人区で、自公、おおさか維新、野党が熾烈な闘いをしているんですね。複数区だから野党はそれぞれ候補者を立てているんですけど、民進党と共産党で2議席とろうよということで、関西市民連合が2党合同演説会をやってくれた。野党同士ではできないことを、市民連合が企画してくれたわけですよ。情勢は行きつ戻りつで、どっちに転んでいくのか見えにくいけれど、こういう市民のうねりがあるから、いいほうに転がる可能性はある。

保坂 たしかに区長の立場からみても、社会を変え得る市民の力は伸びていると思いますね。昨年の区長選は、自公推薦の新人と、現職のぼくの対決でした。自民党は「国政と都政と直結できる新区長を」とさかんに宣伝していたけれど、蓋を開けたらぼくが19万6千票で、相手は9万6千票のダブルスコア。ただ、世田谷区民がリベラルなのかというと、そうではなく区議会の議席は自民党がかなりとったし、公明党もとった。ほかの区とそんなに変わらないんです。
 では、区長選はどうして勝てたのか。それはやはり2011年に区長に就任してからやってきた4年間の政策を区民が見てくれたと思うんです。区長選の結果から推計すると、自民党や公明党支持層の相当の数の人たちがぼくに入れてくれたようです。ということは、内閣支持率は大きく落ちないけれど、コアな自民党支持者は決して多くはない。自民党ではなくても、ちゃんと政策を示せば市民は見てくれるし、区で進めている無作為抽出型のワークショップでも、区政に対するすばらしいアイデアがたくさん出ています。そういう市民の力が大きくなっていることは、ひとつの希望じゃないですか。

辻元 私の大阪10区も、おおさか維新がむちゃくちゃ強いところなんです。でも、私は選挙の演説では「みなさん、そんなに維新や自民が好きなら、私を落として、全部の議席を維新と自民だけにすればいいじゃないですか。その勇気がありますか?」と問うんです。そうすると小選挙区で私が勝って、維新と自民は落ちるんです。
 しかも、その大阪10区の島本町の町議会は、男女同数の議会なんですね。町民ががんばって、女性議員を増やしていった。国政だけに頼るのではなく、地域で多様な意見を取り入れて、市民が活動しやすい政策や制度をつくれば、生きやすい社会にしていける。そんな地域の力を結集して、参院選もできるだけ勝ちたいと思いますね。

保坂 東京都民にかぎっていえば、あれだけの舛添劇場があったので、参院選よりも都知事選のほうが盛り上がるかもしれません。どういう候補者が浮上してくるのか、まだわかりませんが、都知事選の様相が参院選にも影響をおよぼすのは間違いない。都知事選も野党の統一候補も含めて、いい人が出てくればと思っています。参院選とともに安倍政権から民主主義をとりもどす結果になってほしいですね。

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