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クルド問題で米・トルコに軋轢 - 岡崎研究所

岡崎研究所

5月26日の米ワシントン・ポスト紙で、同紙コラムニストのイグネイシャスが、シリアのクルド民兵組織(YPG)をテロの脅威とみなすトルコと、YPGをシリアにおけるIS攻撃の主要戦力とみなす米国とは、このままいけば衝突する、と述べています。論説の要旨は以下の通りです。

 トルコのエルドアン大統領は、シリアのクルド民兵組織(YPG)をテロリストの脅威とみなしているが、シリアにおけるISとの戦いで、米国にとって頼りになるのはYPGである。

 トルコは、米軍がインジルリク空軍基地から、ISと戦うYPGを支援する空爆を行うことを認めているが、これはエルドアンが軍に米国との協力を認めていることを意味する。この協力にもかかわらず、米・トルコの戦略はこのままいけば衝突する。それを避けるための提案が2つある。

米国の「極端な現実政治」

 1つ目は、トルコが、YPGとトルコ政府がYPGの親分と言っているクルド労働者党(PKK)の双方の政治指導部との静かな対話を模索することである。エルドアンはPKKとの話し合いを進めていたが、昨年方針を変えた。しかし、エルドアンがクルドとの和解を達成できれば、それは彼の功績になり、トルコの安全保障と地域の安定に資するであろう。

 2つ目の提案は、米国がシリアのもう一つのクルド民兵組織、Rojava Peshmerga(Roj Pesh)を陣営に加えることである。Roj Peshはトルコとジュネーブでの反政府グループの双方により受け入れられやすい。Roj Peshはイラクのクルド自治政府とその指導者のバルザニ大統領が支援し、訓練している。Roj Peshは、米国の戦略の大きなギャップの橋渡し役を務め得る。Roj PeshのDehdo司令官は、イラクに訓練された3000人の戦闘員を有し、米国の司令のもとにYPGと協力する用意がある、と述べた。

 いまはISを打ち負かし、地域の混乱については後で心配するというのが、シリアにおける米国の作戦の「極端な現実政治」と言われる。しかし、米国とトルコは地域の戦略についてより賢くなる必要がある。さもなければ、両国は衝突に向かって進むだろう。

出 典:David Ignatius‘On Syria, the United States and Turkey need each other’(Washington Post, May 26, 2016)
https://www.washingtonpost.com/opinions/on-syria-the-united-states-and-turkey-need-each-other/2016/05/26/3a9b5ea6-237e-11e6-8690-f14ca9de2972_story.html

*   *   *

トルコにとってPKKはISと同等の脅威

 上記では、シリアのクルド民兵組織(YPG)をテロリストの脅威とみなすトルコと、YPGをシリアにおけるIS攻撃の主要戦力とみなす米国とは衝突しかねないが、衝突を避けるためには、米国がシリアのもう一つのクルド民兵組織(Roj Pesh)をIS攻撃の陣営に加えることと、エルドアンがYPGとPKKとの静かな対話を模索すること、が考慮されるべきであると、イグネイシャスは述べています。

 Roj PeshをIS攻撃の陣営に加えることは、さして困難なこととは思われません。問題は、エルドアンがYPGとPKKと対話することです。

 トルコ政府とPKKは、過去、休戦と休戦の破棄を繰り返してきました。この間、和平会談も行われましたが、現在は2015年7月に休戦が破棄されて以来、対立が続いています。

 米国にとってISとの戦いが地域での最大の戦略的関心ですが、トルコにとってはPKKが最大の関心事で、トルコ政府はPKKをISと並ぶ脅威であると述べ、地域における一番の脅威であるとすら言っています。トルコ政府がそのPKKとの対話を模索することは容易ではありません。

 もっとも、2013年から2015年に対話をした経緯があり、また最近は、トルコ政府がPKKのテロ活動に手を焼いており、対話のインセンティブがないわけではありません。

 米国とトルコは、PKK以外にもなかなか政策の一致を見ない場合が多いです。しかし、米国とトルコはNATOの同盟国です。両国が衝突することは、なんとしてでも避けられなければならず、エルドアンの政治力に期待せざるを得ません。

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