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九州・近畿の男は、東京の男より“ハーレム”なのか?

武蔵野大学、杏林大学兼任講師 舞田敏彦=文

上京せず、地元に残留する男が女にモテる?

私は18歳のとき、鹿児島から東京に出てきました。高校3年の級友の半分以上が県外流出したと記憶しています。鹿児島は高度経済成長期の頃から、若者の流出が全国で最も激しい県だそうです。

各地域の人口流出(流入)の規模を測る指標として、転入超過率というものがあります。ある年の転入者数から転出者数を引いた値(転入超過人口)を、当該年初頭の人口で除して算出します。

首都の東京には毎年、就職などの目的で20代前半の若者がどっと押し寄せてきます。2015年の『住民基本台帳人口移動報告』によると、同年中に東京に転入してきた20代前半人口は10万6925人。逆に東京から他県に流出した同年齢人口は5万6511人。よって転入超過数は、前者から後者を引いて5万414人となります。これを同年1月1日時点の20代前半人口(71万4792人)で除して、東京の20代前半の転入超過率は7.1%となる次第です。

2015年の東京では、人口の移動(mobility)によって20代前半人口が7.1%増えたことになります。一方、鹿児島のような地方県では「転入<転出」ですので、転入超過率はマイナスとなります。同年の20代前半の転入超過率は-2.6%です。10代後半では-3.9%と、流出の振れ幅がもっと大きくなっています。就職時よりも大学進学時の流出が顕著ということでしょうね。

各年齢層の転入超過率をつないだ折れ線グラフにすると、図1のようになります。

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見事なコントラストですねえ。東京には若者が入ってくるが、鹿児島からは出ていくと。誰もが肌感覚で知っていることですが、グラフで見せられると唖然とするものがあります。50代後半以降では傾向が反転していますが、定年退職者のU(I)ターンなどによると思われます。

25~34歳男女比 東京100:95 鹿児島100:107

さて、鹿児島では若者の流出が多いのですが、その度合いは男女で違っています。想像がつくと思いますが、女子よりも男子で顕著です。図1によると転入超過率のマイナスのピークは10代後半ですが、女子は-2.7%であるのに対し、男子は-5.2%となっています。

「男子は外に出してもいいが、女子は……」と考える親御さんはいるでしょう。私の高校のクラスにも、九州大学に受かる力があるのに、女子だから地元の鹿児島大学にしろと、親に言われていた女子生徒がいました。就職時(20代前半)の流出量にも、ジェンダーの差がみられます。

10代後半から20代前半にかけて男性は出ていき、女性は残る。

となると、それ以降の年齢層では女性のほうが多くなるのが道理です。結婚期の25~34歳人口をみると、2015年の鹿児島では男性が8万3198人、女性が8万9403人となっています(1月1日時点)。男性100人に対し、女性107人です。

東京の同年齢人口は男性が98万3632人(100)、女性が93万7869人(95)で、男性のほうが多くなっています。私のように、地方から流入してきたオトコがひしめいているためでしょう。

こうみると東京よりも鹿児島のほうが、男性にとって結婚しやすそうですね。私は独身ですが、「結婚したいなら帰ってこい。居残っている女性はたくさんいるぞ」と高校時代の恩師から言われたことがあります。なるほど、さもありなんです。

他県はどうなのでしょう。図2は、結婚期の人口の男女比をマップにしたものです。

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男性よりも女性が多い県(濃い色)は、近畿や九州に多くなっています。トップは、わが郷里・鹿児島ではありませんか。

関東は女性比率が低いですね。東京や神奈川などは、地方から流入してくる男性が多いためですが、最低の茨城は男性よりも女性の流出が多いためです。この県では女性が学べる高等教育機関が少ないのか、あるいは女性にとって魅力的な就業機会が少ないのか。若年女性が置かれた状況を点検してみる必要がありそうです。

25~34歳の男性既婚率 鹿児島46% 東京29%

上記の地図の模様から、男性の結婚チャンスは西南にありと思われますが、確かにそういう傾向はあります。25~34歳の男性の既婚率をみると、鹿児島は45.9%で、東京の29.1%よりもかなり高くなっています(2012年、『就業構造基本調査』)。図3は、先ほど出した25~34歳の「女性/男性」比率と、同年齢の男性の既婚率の相関図です。

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男性あたりの女性数が多い県ほど、男性の既婚率が高い傾向がみられます。相関係数は+0.4576で、1%水準で有意です(既婚率が低い東京を外れ値として除くと、相関係数は+0.5000となります)。データでみると、やっぱりこうなのですね。郷里の「隠れた」魅力に気付かされた思いです。

ちなみに市区町村レベルでみると、結婚期の「女性/男性」比率がもっと高いケースが出てきます。奈良県の川上村では、25~34歳の男性100人に対し、同年齢の女性は158人です(2015年1月1日時点)。同県の曽爾村は142人。スゴイですねえ。

これらは過疎が進んだ地域ですが、都市部でも似たようなケースはあります。たとえば福岡市中央区は127人、京都市下京区は120人、郷里の県庁所在地の鹿児島市は114人です。地方への人口移動を促すに際しては、こういう情報も公開するといいのではないでしょうか。

丹念に統計を分析してみると、地方の魅力を知ることができる材料が数多く出てきます。非正規から正規への移動チャンス、アラフォー以降の結婚チャンスが最も開けた県はどこか、若者の起業率が最も高い県はどこか……。こういうことをご存知の方は少ないと思いますが、ランキング表をみると、「えっ そうなの?」と驚かされますよ。

政府が目指している「地方創生」を実現するには、白々しいPRだけでなく、この手のデータを世に知らしめることが重要と考えます。回を改めて、それをすることにいたしましょう。今回の記事は、その第一弾です。

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