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日本が若者にとって良い国であり続けるために

選挙権年齢が18歳に引き下げられて初めての国政選挙である参院選が今週末に迫っている。新たに240万人が有権者となるが、自らの将来のためにその権利を放棄せずに、信じる選択をしてほしい。先日の英国の国民投票においても、若者の多くはEU離脱に反対だったにも関わらず、投票しなかったことが伝えられている。棄権しておいて後から文句を言っても誰も聞いてはくれない。

日本は若者にとって良い国なのだろうか。健やかに成長することができ、将来に必要な学問を学ぶことができ、良い職を就くことができ、良いパートナーと子供を育むことができる国だろうか。仮に今はそうだったとしてもその先は?



Youthpolicy.orgは世界各国の青少年政策(youth policy)を取りまとめている。上記は最新版のファクトシートを一覧し、地域ごとに他国と比較できるようにしたものだ。日本の置かれている状況を知ることができるだろう。

指標は次の12であり上部のプルダウンメニューで切り替えられる。箱ひげ図では各地域ごとに中央値、上位四分位数、下位四分位数、各国の個別の値を確認できる。括弧で示した値は世界もしくはその地域における順位である。デフォルトでは日本をオレンジで強調表示しているが、強調する国を右上部のプルダウンメニューで変更することもできる。Go Detailのリンクからは選択した国の明細ページに遷移する。

  • GDP/Capita(USD): 一人あたりGDP (USD) 2014年時点の一人あたりGDP。
  • HDI: 人間開発指数 平均余命、教育、所得に基づき算出される指数。
  • JINI: ジニ係数 社会における所得分配の不平等さを測る指標。値が高いほど格差が大きい。
  • YDI: 青少年開発指数 Commonwealth Youth Programmeがまとめている、15-29歳の青少年の開発度合いを教育、健康、幸福、雇用、社会・政治参加に基づき指数化したもの。
  • Literacy Rate: 識字率(15-24歳) 母語による日常生活の読み書きができる割合。日本の値は無かったため日本のみ全年齢の識字率を用いている。
  • Secondary School Enrollment Rate: 中等学校進学率 中等学校への進学率。
  • Tabacco Use: 喫煙率(13-15歳) 13-15歳における喫煙率。日本の値は未成年者の喫煙・飲酒状況に関する実態調査研究に依った。
  • Voting Age: 選挙権年齢
  • MACR: 刑事責任年齢 刑事責任が問われる最小の年齢。
  • Candidacy Age Lower House: 下院被選挙権年齢
  • Candidacy Age Upper House: 上院被選挙権年齢
  • Age of Majority: 成人年齢


日本の一人あたりのGDPは38,634ドルで全体の27位、アジア・オセアニアで7位となっている。HDIは全体で10位、YDIは全体で9位となっており、開発指数はともに高い。世界的に見れば、日本は大変恵まれた環境であると言える。一方でジニ係数は109位となっており、格差はまだ比較的小さい。もっとも、日本は既に経済大国の地位から脱落しており、この優位性も長くは保たないかもしれない。

識字率を見ると、ナイジェリアの26.6%、中央アフリカ共和国の36.4%と文字の読み書きさえできない人が多い事がわかる。中等学校進学率も、ギニアビサウの8%、チャドの10%と極めて低い国がまだ存在し、中央値でも78%程度、4人に1人は中等学校に進学できないのが現状である。特にアフリカの教育の遅れが目立つ。

日本では双方の値とも100%近い。これはつまり日本に生まれるだけで、最低限の教育が保証されるということだ。我々はたやすく文字を読み書きし、数字を扱う事ができるが、それがどれだけ希少なことか。21世紀の半ばにはすべての国でこれらの値がともに100%近くなることを願いたい。

日本の選挙権年齢は今まで20歳と世界的に見ても高い値にあったが、今回より18歳となり標準的なレベルとなった。日本の刑事責任年齢は2000年より2歳引き下げられ14歳となっているが、依然世界的には比較的高い部類に入る。米国では7歳、ミクロネシアではなんと0歳から刑事責任が問われる。20歳という成人年齢も高めであり、世界の中央値は18歳程度だ。イランの成人年齢が9歳と群を抜いているが、これは女性の値であり(男性は15歳)、恋も知らず無理やり結婚させられ子供を生まされる状況を反映している(13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない)。

これらの年齢は一概に高いほうが良いとも低いほうが良いとも言えないし、平均が良いわけでもない。それでも、日本の青少年は諸外国に比べて比較的長い間保護者の庇護下にあり、責任を免除されていると言えるだろう。日本の青少年には成人まで比較的長い猶予と必要な教育機会が与えられている。子供・若者育成支援推進大綱を見れば課題も多く挙げられているが、それでも極めて恵まれた環境にあることは確かだ。

日本人は日本に生まれたというだけで、世界の大半の人よりも幸せだ。──少なくとも今のところは。

今回の選挙権年齢の引き下げは、新たな権利の付与だが、裏返せば政治参加の責任を課すものだ。経済的に疲弊し、国力を失いつつある日本は、徐々に青少年や現役世代に負担を強いる方向へと進んでいる。若い時は上の世代を支えるためにひたすら働き、いざ歳を取った時には支えてくれる次の世代はいない、そんな可能性もゼロではない。

日本の現状が恵まれている状況にあるのは上の世代の頑張りのおかげだ。彼らのおかげで日本の青少年は健やかに育つことができる。しかしだからといって自らの将来をなげうってまで死ぬまで彼らのために誠心誠意尽くせというのも違うだろう。

要はバランスだ。18歳への選挙権の付与は、ともすれば上の世代優遇になりそうな政治を、次の世代に目を向けさせるための方策の一つだ。ぜひ日本が持続可能なバランスを保ち、将来にわたり子どもたちが健やかに生育できる国であるために、少しでも良いと信じられる選択をして欲しいと願う。

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