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- 2016年07月05日 05:00
1票の価値は百万円? - 中泉拓也
2/2■選挙での選択
上述のように、投票しても何も変わらないという不満も納得できます。特に選択したい候補者がいないという悩みを持つ人も多いのではないでしょうか。そういう人も、候補者の順序はつけられるはずです。消去法になりますが、それでも順序の上位の候補者に投票する意味は非常に大きいはずです。また、上述のように棄権は多数派への信任という意味を持ちますから、何が何でも問題とするのは無理があります。ただし、その場合でも、十分な考慮の結果棄権するのか、そうでないのかは雲泥の違いがあるでしょう。また、票が拮抗している時の棄権は、多数派が特定できず、危険です。
例えば英国のEU離脱の是非を問う国民投票の場合、世論調査だけでなく、市場の評価も残留をわずかな差で支持していました。しかし、結果は離脱が過半数となりました。こういった場合、仮に残留を支持して棄権した人は、結果的に離脱を最終的に支持したことになってしまいます。国民投票のような大きな選挙の選挙結果は変えるのが非常に難しいのが実情です。残留を支持して棄権した人が、どれだけ後悔しても後の祭りです。
ところで、候補者がどのような政策を行い、どのように予算を使おうとしているのかは、各党のホームページで選挙公約(マニフェスト)をチェックすることで確認できます。また、各党の選挙公約を比較しているサイトも参考になるでしょう。当然、マニフェストが実行されるかも保証されませんから、実行可能性も重要な判断材料です。特に重要なポイントは、100万円という金額とはいえ、予算は限られていることです。
あれもこれもと使い放題な公約は、見映えはいいかもしれませんが、実現できません。どこに予算を使い、どこを犠牲にするか、メリハリをいかに効かせているかが重要です。更に、100万円のうち、40万円弱(36兆,8630億円(27年度予算、公債依存度は38.3%))は借金で賄われていることも認識すべきです。一人当たり年間40万円もの借金をそもそもしていてもいいものかどうか。将来どのように返していくか、将来に負担を残すことにならないだろうか。といったことも考えなければならないでしょう。
こういった点について、公約に明記されているかどうかは、その政党が将来にわたって信頼に足りうる政策を行っているかどうかの判断材料になります。
更に、予算に直接の影響がなくても、イギリスのEU離脱のように、100万円以上の大きな影響がある政策も国会で決定されます。安保法案や憲法の改正といった大きな課題だけでなく、法律の制定は予算以上に重要な面があります。
■よりよい政策を目指して
ところで、仮に投票しても、一票の効果が非常に限定的であることも事実です。以下では、一票の効果を高めたり、選挙以外で政策を好ましい方向に変えていく手段について、考えてみたいと思います。先ず、投票自体が納得出来るかどうかという観点では、1票の格差を是正することも一つの対策だと思います。升永弁護士が従来から提案されていますが、一票の格差を容認するような最高裁の判事に国民審査で不信任を投じることは、僅かながらでもその是正に近づく方法でしょう。また、選挙も含め、政策や政府と国民の距離が遠いと、国の財政も他人事になってしまう傾向が高まると思います。実際に日本では、政治活動だけでなく、政策決定や住民活動に関わること自体、非常に敷居が高く感じられるのではないでしょうか。日本には社会人という言葉がありますが、実は英語にはありません。せいぜいadult(大人)という言葉だけです。つまり、学生も含め、どんな人間も社会の一部です。
米国では、学生の社会活動や市民参画ももっと自然に行われます。例えば、We day という若者が地域や世界のコミュニティに変化をもたらすことを祝福する日まで設けて、学生の市民参画や社会活動を積極的に社会が後押しをしています。今回の参議院議員選挙から、選挙権が18歳に引き下げられました。この機会に住民活動への積極的な参加も含め、わが国でも政治や政策への関与により親しみを持てるようにしてはどうでしょうか。
また、英国では財政再建のために地方の予算が削減され、公共サービスの質の低下が問題となりました。それを住民自身が補い、道路を修繕するということが行われました。こういった活動をパブリックインボルブメント(住民参画)と言います。
パブリックインボルブメントは、そういった公共サービスの自発的な提供のみならず、政策立案に直接関わり、重要な情報を行政に提供すると同時に、望ましい政策を有権者全体で構築していくことにも使われます。財政のみならず、広く政策全般を改善し、効果の高い100万円の使途を実現しようとするものです。
■おわりに
最後は壮大な話ですが、そもそも現在の市町村や県の区分自体、インターネットのみならず、固定電話もなかった明治時代に作られてものです。実は、国際化にも情報化にも決して適合しているとは言えないのです。市町村に要求するサービスはインターネットの活用で集約できるものも多い反面、高齢化等でよりきめ細かいサービスのニーズも高まっています。財政的に厳しい状況では、パブリックインボルブメントの効果を高めるため、最小単位である市町村を更に小さくするメリットが考えられます。また、地方分権を推し進めるためには、県の単位をより広くすることが考えられます。タックスヘブンの問題を考えると、国はより国際的な連携を強めることが必要となるでしょう。こういった観点をふまえ、そもそも自治体の規模自体を変革していくことも、100万円の有効活用につながると思うわけです。
以上、最後は選挙から非常に壮大な話になりましたが、元に戻って、100万円を有効活用してもらえるような候補者を選ぶということには、長期的に望ましい方向を実現してもらえそうな候補を選択するという意味もあります。
長期的な視野を持つことも含め、一人一人がしっかり考えて候補者を選択することが、候補者の緊張感にもつながるでしょう。更に、選挙だけでなく、より政策立案に関わりやすくし、地域活動にも積極的に関わっていくことで、そもそも一人百万円という非常に大きな額がより適切に使われていくことになるのではないでしょうか。
【参考記事】
■世界で最も若者に冷たい国を変えるために(Blogs of Takuya Nakaizumi)
http://blog.livedoor.jp/nakaizu3/archives/47938993.html
■肥満対策のトランス脂肪酸規制、日本は米国から規制作成のプロセスを学ぶべき。(中泉拓也 関東学院大学 経済学部教授)
http://sharescafe.net/45438234-20150705.html
■高齢化社会へのヒント「どうせなら、楽しく生きよう」(中泉拓也 関東学院大学 経済学部教授)
http://sharescafe.net/47759756-20160208.html
■三角関数もATPの知識も役に立つ。(中泉拓也 関東学院大学 経済学部教授)
http://sharescafe.net/46125440-20150901.html
■マクドナルド業績悪化に見られるフランチャイズ化の功罪 中泉拓也(関東学院大学 経済学部 教授) :
http://sharescafe.net/37379568-20140228.html
(中泉拓也 関東学院大学 経済学部教授)
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