- 2016年07月03日 10:26
中国覇権阻止のパートナー・ベトナム - 岡崎研究所
オバマは5月23日、ベトナム訪問の際、対越武器禁輸の解除を発表した。決定は、近隣国への嫌がらせが反発を招くという明白なメッセージを、中国指導者に送ることにもなる。
ベトナムには、中国の意図につき深い懸念を抱く理由がある。中国は南シナ海で争いのある岩礁を埋め立て、近隣国の主張を脅かす軍事基地を建設している。2014年には、中国はベトナムのEEZ内に石油掘削リグを持ち込み、両国海軍のにらみ合いとなった。
ベトナムの最高指導者グエン・フー・チョン書記長は昨年7月ホワイトハウスを訪問し、米国を「地域安定のための勢力」と呼んだ。南シナ海の軍事化と航行の自由についての彼の懸念は、「米国が地域で厄介を引き起こしている」との中国の主張への反論となる。
ベトナム軍は、中国軍には大きく凌駕されるが、東南アジアでは最強であり、スプラトリー諸島の23カ所の砂州に駐留し(中国は7カ所)、カムラン湾の海軍基地を米国などに提供し得る。米越両国は関係が安定的で、継続的であるようにすべきである。
米国はすでに、6隻のDefiant75哨戒艇のベトナム沿岸警備隊への供与を含む海洋安全保障に関する武器売却を認めている。ベトナムは、先進的な武器の対露依存を低下させ、米国との軍事関係を緊密化させることを望んでいる。ストックホルム国際平和研究所によれば、ベトナムは2011~2015年に、世界で43位から8位の武器輸入国になった。ベトナムは、日本、イスラエル、シンガポール、インドとの安全保障関係を強化してきた。2009年には、ロシアから6隻のキロ級攻撃型潜水艦とSu-30戦闘機を購入した。
今ベトナムは、空軍のさらなる強化を求め、ロシアのSu-35戦闘機の購入を検討している。しかし米国がF-16の改良版のような先進的な戦闘機を提供すれば、両国の将来の安保協力を強化することになろう。Black HawkヘリとP-8哨戒機も可能性がある。
人権擁護にも配慮
人権擁護派は、ベトナムが国内の反体制派への抑圧を続けていると非難している。ベトナム政府は5月20日、重要な政治犯であるカトリック司祭のNguyen Van Lyを釈放した。しかし、ベトナムは多くの平和的批判者を監禁し続けている。
武器禁輸解除は、人権についての米国の梃子を強化しなければならない。武器売却は人権も考慮しつつ、ケースバイケースで決定される、と米高官は指摘している。
中国の圧力はまた、ベトナムが民主国家からの投資に広く開放する刺激となってきた。韓国と日本が二大投資国である。ベトナムのTPPへの参加決定は、より多くの海外企業がベトナムに展開するよう促した。それによる急速な成長は、政治的変化の触媒となり得る。
我々は、オバマのアジアへのリバランスを中身がないとして非難してきたが、ベトナムとの外交、経済、安保上の関係強化は、前進である。
出典:‘America’s Vietnam Pivot’(Wall Street Journal, May 23, 2016)
http://www.wsj.com/articles/americas-vietnam-pivot-1464044978
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オバマ大統領はG7サミット出席のために訪日の前にベトナムを訪問しました。この社説はこの訪問に際して発表された対ベトナム武器禁輸解除を含む米越関係強化を歓迎しています。適切な内容です。
ベトナムは共産党一党独裁の国であり、基本的な価値を米国や日本と共有しているわけではありませんが、中国の脅威をひしひしと感じ、米国や日本などの民主主義国との関係強化を希望しています。TPP参加などその証左です。このベトナム側の態度に、日米などは積極的に応じていくべきでしょう。
人権擁護や民主化は、経済発展や民主主義国との緊密な関係の中で進んでいくように思われます。たとえばTPPの労働についての規定実施は、労働権の承認、独立労働組合の許容につながり、人権擁護につながります。
中国はアジア地域で覇権を求めています。中華民族の復興、偉大な夢の実現はそれを求めています。日本に対して、「中国脅威論や中国経済減退論をまき散らすな」との要求のほかに、対中対抗心を捨てるようになど、いささか驚くような要求をしています。ベトナムにも種々の圧力を加えているのでしょう。
「中国の覇権に反対せよ」鄧小平の言葉通りにする
昔、鄧小平は、覇権主義に反対、中国が覇権を求めれば、日本は反対したらいい、と述べたことがあります。日本もベトナムも、まさに鄧小平のその言葉通り、中国が国際法無視のごり押しをするのにはともに対抗、反対すべきです。
ASEANにおいては、実力のある国はベトナムとインドネシアでしょう。ベトナムは人口も9000万以上ある。ベトナムを観察している人は、労働の質も国民の活力も高く、今後大きく発展していくであろうと言います。そういう期待を持って、日越関係を強化していくことが、対中戦略の一部としても有用でしょう。
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