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スーチーと独裁者の類似性 未だ普通の国ではないミャンマー - 岡崎研究所

岡崎研究所

5月21-27日号の英エコノミスト誌は、ミャンマーの民主主義は、国民の多くが支持する未熟な政府と、独立以来、国を牛耳ってきた軍とのぎこちない関係で成り立っていて、それ故、米国の対ミャンマー制裁の行方が注目されると述べています。要旨は以下の通りです。

残るブラックリスト

 5月17日、オバマ政権は対ミャンマー制裁の変更を発表した。3つの国営銀行と7つの国営企業がブラックリストからはずされ、貿易規制も一部緩和され、米国企業がミャンマーで行えるビジネスは拡大し、資金移動も容易になった。しかし、制裁の多くは解除されず、新たにミャンマー最大のコングロマリットに属する6企業がブラックリストに加えられた。

 この微妙な調整は厄介なバランスの反映だ。現在、対米貿易を行えるのは、軍ではなく、スーチーの監督下にある国営企業である。

 一方、スーチー(唯一人の「国家顧問」に就任)の統治スタイルが明らかになってきたが、そこには、過去の悪しき時代の不透明で独裁的な将軍たちとの類似性が見られる。政府は100日計画があると言うが、まだ発表されていない。省庁の数を36から21に減らす努力はしているが、スーチーは、例えば、国民の何割を貧困から脱却させるのか、どの政策を変更するのか等、自らの目標を明らかにしておらず、国全体についての包括的ビジョンとなることは何も打ち出していない。

 議会では何百もの法律が審査中だが、正確にどの法律なのか誰も知らない。また、修正された法律は驚くほど厳格で、例えば、法改正でデモは許可制から届け出制に変ったが、法律に違反すればやはり投獄される可能性がある。

 さらに、スーチーは、新任の米国大使に、ロヒンギャ(ミャンマーで迫害されているイスラム教徒の少数民族)という名称を使わないよう要請し、西側の外交官たちを不安にさせた。スーチーは少数民族との内戦の終結を優先課題に挙げているが、こうした姿勢は暗い先行きを示唆する。ミャンマーは今もまだ普通の国ではなく、制裁も残されたままだ。

出 典:Economist ‘Not clear yet’ (May 21-27, 2016)
http://www.economist.com/news/asia/21699166-america-tweaks-sanctions-not-wholly-democratic-country-not-clear-yet

*   *   *

権力は俗人的なもの

 先進民主主義国の陥りやすい錯覚は、スーチーが政権を取ればミャンマーが西洋式の民主主義に大きく近づくと期待している点です。しかし、スーチーは現実のミャンマー社会と政治の中で活動しているのであり、その制約を受けます。ミャンマー社会における伝統的な考えは、権力は属人的なものであり、地位やポストに属するものではありません。建国の父アウンサンの娘ということを過剰なまでに意識しているスーチーが、その権力志向を強めたとしても何の不思議もありません。

 問題は、ミャンマー国軍との折り合いの付け方にあります。お互いの不信感は根強いので、実際の行動を通じ徐々に必要な信頼を醸成するしかありません。西側の基準に立てば、スーチーが妥協し過ぎと見えることもあるかもしれません。そこで米国は、軍をたたいてスーチーを側面支援する手段として制裁を残したのでしょうが、あまり意味はありません。米国一国だけではほとんど制裁の効果はありませんし、西側が一体となるには、そうなる状況が必要です。しかし、たとえそのような状況になっても、中国や他のアジア諸国の協力は続くでしょう。

 ここは、必要に応じ大胆に妥協をしながら、ミャンマー経済を発展させ、徐々に民主化の目標に近づくしかありません。今こそ、スーチーの「政治家」としての資質が問われています。

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