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米無人機作戦の”縄張り争い”が決着 軍とCIAの対立にオバマ裁定 - 佐々木伸

佐々木伸 (星槎大学客員教授)

オバマ米政権のテロとの戦いの柱である無人機作戦について、国防総省と中央情報局(CIA)による“縄張り争い”がこのほど決着した。オバマ大統領の裁定によるもので、国防総省が主導権を掌握する一方で、CIAもパキスタンとアフガニスタンで作戦を続けることが可能になった。 

双方のメンツ立てる

 オバマ大統領は就任以来、米地上戦闘部隊を2度と紛争地へ派遣しないことを「オバマ・ドクトリン」として最大公約に掲げてきた。ドクトリンはテロとの戦いについても、武装無人機(ドローン)でテロリストを暗殺する「標的殺害」を秘密裏に推進してきた。

無人機の活動範囲はパキスタン、アフガニスタンからイラクやシリア、ソマリア、リビアなど西南アジアからアフリカにまで拡大した。これまでにイスラム過激派3000人以上を殺害し、パキスタン、アフガン国境の山岳部族地帯を拠点としていた国際テロ組織アルカイダの本部組織をほとんど壊滅に追い込む成果を挙げた。

しかしイエメンで、結婚式の車列が無人機に誤爆され、民間人多数が死傷するなど民間人の巻き添え被害も相当の数に上っている。こうした民間人の被害が高まるにつれ、秘密のベールに包まれた無人機作戦について批判が強まった。このためオバマ大統領は2013年5月、米国防大学で初めて無人機作戦に関する演説を行い、作戦の透明性を確保していくと言明した。

オバマ大統領はこの演説で、透明性を確保するために国防総省の特殊作戦軍に無人機作戦の主導権を与えることを公約。それ以来、水面下で国防総省とCIAが無人機の所管をめぐって熾烈な縄張り争いを展開してきた。米議会の上下両院の情報委員会も、国防総省派とCIA派に分かれて対立した。

国防総省 vs CIA

 CIAは2001年の9・11(米中枢同時テロ)以降、情報収集・分析機関というよりも、無人機を中心に準軍事的な色彩を強め、これに国防総省が危機感を深めてきた。地域的に見ると、パキスタン、アフガニスタンの山岳地帯はCIAが、イエメンはCIAと国防総省の特殊作戦軍の両者が担当するという仕分けになっていた。

 CIAの改革を検討してきたオバマ大統領は側近であるブレナンCIA長官と無人機の所管について緊密に協議してきた。その結果、米メディアなどによると、CIAにはこれまで通り、パキスタンとアフガニスタンでの無人機作戦の権限を認める代わりに、イエメンでは、CIAに無人機を飛行させてテロリストの探索はさせるものの、標的を殺害するためのミサイル発射は国防総省の特殊作戦軍の決定に委ねる、という決定を下した。

作戦の透明性は困難なままに

 問題はこの裁定によって、大統領が公約した無人機作戦の透明性が確保できるのかどうか、ということだが、CIAがパキスタンとアフガニスタンの作戦権限を保持している限り、透明性の確保は難しいだろう。

なぜなら特殊作戦軍の作戦であれば、作戦実行後にたとえあいまいであっても、事実関係をある程度公表することになる。しかしCIAによる作戦は秘密作戦であり、作戦を遂行したかどうかも含めて詳細を明らかにする必要がなく、パキスタンとイエメンの作戦は民間人の死傷者が出ても闇の中に置かれることになる見通しだ。

これは実は米国にとっても都合の良い面も多い。特殊作戦軍の純軍事作戦ということであれば、作戦に先だってパキスタンやアフガニスタンなどの相手国に事前に通告して了承を得なければならない。そうしないと、主権の侵害ということになるからだ。

 しかし、CIAの秘密作戦ということであれば、正式ルートでパキスタンなどから作戦の事前了承を取る必要性がない、というのが米国のテロとの戦いの解釈だ。米国は5月、アフガニスタンのイスラム過激派タリバンの指導者マンスール師がパキスタン南西部にいるところを無人機攻撃で暗殺した。

ドローンの役目は終わらない

 また、2011年5月には、パキスタン領内に潜んでいたアルカイダの指導者オサマ・ビンラディンを米海軍特殊部隊シールズが急襲し、暗殺した。両作戦ともパキスタンは表面的には米国に主権を侵害したとして抗議の意を表明したが、その後はうやむやになっている。パキスタンも暗黙の了解事項なのだ。

タリバンは新指導者を選出して米国に報復を誓い、6月もカブールで自爆テロを起こすなど米軍への攻撃の機会をうかがっている。シリアやイラク、リビアでは軍事的に追い詰められた過激派組織「イスラム国」(IS)が欧州や中東でテロを激化させようと画策している。テロリスト暗殺を実行する無人機の役割はまだまだ終わりそうにない。

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