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住民投票条例直接請求・意外な結末

●注目の的

今日は注目の的、鉾田市の住民投票条例の直請求を審議採決する臨時議会が開催されるとあって、遠路、鉾田市議会を傍聴しました。

本日の臨時議会は、住民団体「鉾田市の未来を考える市民の会」が、実に有権者の3分の1以上(34%)の署名を集めて請求した「(仮称)鉾田市民交流館計画並びにこれに係る市費の支出の賛否を問う住民投票条例」制定の直接請求が、可決されるかどうか関心をもって傍聴してきました。

鉾田市長は、市民団体が直接請求した条例案について11の意見を付し提案しました。また、そうした意見を反映した独自の「(仮称)鉾田市民交流館計画建設の賛否を問う住民投票条例」案を提案して、並行して議決に付しました。

市民団体の案では、「市民交流館計画並びにその予算の2つを住民投票に付するもの」であるのに対して、市長案では「市民交流館建設計画そのもの」を住民投票に付するものという違いがあります。

市民団体は場所や不透明な設計の経緯も含めて「現在の市民交流館建設計画」に反対し、住民投票により市民の賛否を問いたいとしています。

市長案は、「文化交流館建設の取りやめ」を住民投票により賛否を問う、という違いがあるようです。

●成立要件に過半数の投票率


また、市民団体は「投票率にかかわらず住民投票の結果を尊重するべきである」としているのに対して、市長案は、「過半数の投票をもって住民投票が成立する」としています。議会では、議員の質問に明確に「過半数の投票率がなければ投票が成立しない」「結果についても尊重しない」としていました。

しかし、新聞報道や議会の審議の中では、過半数の投票率がなくても結果については公表するとしています。市民の3分の1を超える署名は、実質的には現行の市民交流館計画に再考を求めるものであったと思われますので、私は、この「結果については公表する」という市長の公約は、大変に重いものがあると思います。

市長は、東京都小平市の場合と同様に成立要件に投票率(50%)を設けるとしていますが、小平市の場合は、住民投票の対象が「都道建設計画の見直しを問うもの」で投票率は35%だったために開票されずに、市民の意向はどうだったのかが分からずじまいでした。今回の鉾田市の場合は、まさに鉾田市固有の政策課題についての住民投票ですので投票率も高くなるのではないかと期待されていました。

例えば、投票率が48%で「現計画の取りやめが80%だった」と公表したときに、その投票結果を見て「過半数の投票率がなければ投票が成立しないばかりか、結果についても尊重しない」と政策を推進することはかなりの勇気が必要でしょう。

成立要件に投票率を設けたことに関連して、議員から「民意とは何か」と問われた市長は、「議会やその他多くの団体で会議の成立には過半数の出席が必要だから」と理由を述べていました。また、加えて鉾田市議会で、「過去、市民交流館関連の予算が議決されており尊重されなければならない、その方針を変更するために再度民意を問う形になるので、やはり過半数の投票率が必要だ」と理由を述べました。

この件に関しては、私も様々な意見を聞きました。なかなか難しい論点です。住民投票条例は、「首長、議会は住民投票の結果を最大限尊重する」などの文言しか記されていない場合が多く、拘束力をともなわない条例が多いようです。これは、国や他の地方公共団体の意思に関わらず実施されるため、首長や議会が投票結果を必ずしも反映できない場合があるほか、法律に明記された首長と議会が持つ権限の優位性を確保するため、住民投票を諮問型(平たく言えばアンケート)に留める必要性があるからだと説明されています。

ただ、首長、議会が投票結果と異なる政策決定を下すことが、住民との対立関係を悪化させるケースも考えられ、その場合は、リコール(解職請求、解散請求)に進むケースもあります。

●意外な結末


今日審議されたのは3議案で、まず、はじめに市民団体の条例案、次に市長提案の条例案が採決されました。結果は、以下の通りでした。

1.市民の会の議案 賛成9 反対10 で否決

2.市長からの議案 賛成3 反対16 で否決

両案ともに否決という結果になりましたので、住民投票に係る補正予算も必要がないということになりました。

上記で述べましたように、住民投票の結果は「首長、議会は最大限尊重する」ことに止まるわけですから、市民の会案に賛成した議員は、市長案に賛成しても良かったのではないかと、個人的には思います。市民の会案賛成議員が、市長案に賛成すれば少なくとも、住民投票は実施されることになったと思います。

画像を見る

住民の3分の1以上の署名を集めた直接請求が議会で否決され、結果的に住民投票が行われない結果となったのは、本当に意外な結果でした。ただ、議会での質疑の様子を拝見していると、市民の会案への質疑は執行部とのやり取りに終始するなど、傍聴している市民の方々にも分かりにくく、特別委員会等での充分な議論が必要であったという意見が強かったようです。意見を述べられた3人は、こみ上げる涙を抑えて陳述されました。手弁当で公益のために行われたそのご労苦を思うと、意外な結末であり残念だったと思います。

写真は、許可をとって傍聴室からのモニターから撮影したものです。本日は、傍聴席が満員で、他に傍聴室が用意されていました。そこにも約30名の市民の方々が見守っていました。

●住民投票に関するシンポジウム


日時 7月31日(日)13時30分開始
場所 常磐大学(水戸市見和1-430-1)

パンフレットは以下にあります。

http://amishinbun.jimdo.com/

つくばから始まり、龍ヶ崎、水戸、鉾田など住民投票を求めるうねりが起きています。背景には、現行の代表制民主主義が民意と離れているのではないかと指摘する向きもあります。そうしたことを一度議論してみようということで計画されたものですが、常磐大学の講義の一環で学生がシンポジウム準備から運営にかかわり行われるということもあって、地方自治を深め豊かにするというスタンスで行われます。

私もスタッフの一員として協力しており、是非とも、いまから日程を開けていただいてご参加くださいますようお願いします。

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