- 2016年06月30日 11:00
IS後に表面化するシリアの火種 - 岡崎研究所
勇猛果敢なクルド人戦闘員
シリアで一番勇敢なのはクルド(YPG)の戦闘員である。米国はスンニ派、キリスト教徒などからなる「シリア民主軍」とYPGの新しい連合をつくっている。政治的には理想的でないが、軍事的には有益である。
ヴォーテル司令官は、現実を踏まえて戦わなければならないと述べた。
米国は当初、5億ドルを投じ、新しいスンニ派中心の軍を作るべく「訓練・装備」計画を実施したが、失敗した。そこで米司令官たちは、トルコの強い反対にもかかわらず、戦闘経験豊かなYPGに頼ることとし、昨年10月スンニ派、キリスト教徒の軍との連合をつくった。
シリアのクルド人は、男女を問わず猛烈な戦闘員である。女性の戦闘員は男性に劣らず勇猛果敢である。
ヴォーテルは、シリアでの当初の失敗の経験から、完全な兵力を作るのではなく、現存の勢力で戦うことを学んだ。
日和見的なスンニ派の族長達は、YPGと組むことがISと戦う最善の策だと、いやいや認めるようになった。ある有力な族長は、YPGが我々を解放してくれる唯一の軍であることが分かった、と言った。
YPG重視は現実政治そのもので、時には矛盾もある。クルドの女性の民兵の司令官は、いつかクルドの自治区をつくるために戦っていると言い、「シリア民主軍」のアラブの司令官は、シリアという国のために戦っていると言う。
この戦略の暗黙の主題は、今はISを打ち破り、シリアの将来については後で心配する、ということである。
出 典:David Ignatius ‘The new coalition to destroy the Islamic State’(Washington Post, May 22, 2016)
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https://www.washingtonpost.com/opinions/the-new-coalition-to-destroy-the-islamic-state/2016/05/22/54d9b466-2036-11e6-aa84-42391ba52c91_story.html
政治的考慮は後回し
米国は、シリアでのISとの戦いでYPGに頼っていますが、おそらく、それ以外に現実的選択肢はないのでしょう。
イグネイシャスは、YPGを重視するのは、現実政治そのものであると言っていますが、これは軍事作戦であり、シリアの将来をどうするかという政治的考慮は後回しであると言います。
シリアの将来については、米国とロシアが国際会議を招集していますが、シリアの将来に関する見通しは全く立っていません。米国とロシアの思惑が異なっているうえに、対IS軍事作戦がYPG主導で進められる場合の政治的影響がどうなるのかという問題もあります。米ロの他に、YPGに反対するトルコ、スンニ派部族を支援するサウジ、シリア政府を支援するイランの政治的意図は異なっていて、シリアの将来についての青写真は描けていない状況です。
しかし、当面の最優先課題は、ISを打ち負かすという軍事目標であり、米国のシリア戦略が、当面、政治よりは軍事を優先させるというのは現実的選択といえるでしょう。
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